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EP 10
俺、何かやっちゃいました?(※世界を救いました)
フラッシュの嵐を抜け、SATの護送車(なぜか乗せられた)を丁重に断り、俺はようやくボロアパートに帰り着いた。
築40年、木造2階建て。
世界の「特級国家戦力」が住むには、あまりにも慎ましい我が家だ。
「ただいまー」
ガチャリ、とドアを開ける。
いつもなら「おかえり、ご飯まだー?」とだらしない声が返ってくるはずだ。
だが、今日は違った。
「…………」
玄関には、仁王立ちした未緒がいた。
手にはスマホ。画面には、俺の銀行口座の残高ページが表示されている。
『残高:¥128,454,300』
「……お兄ちゃん」
「あ、うん。ただいま、未緒」
「あんた、バカなの? 死ぬ気なの? てか、なんで生きてるの?」
未緒の声が震えている。
怒っているのか、泣いているのかわからない。
俺は靴を脱ぎながら、苦笑した。
「悪かったよ。心配かけたな」
「心配なんてしてないわよ! ただ……もしあんたが死んだら、私の推し活資金が……」
未緒は言い訳のように早口でまくし立てたが、その目には涙が溜まっていた。
そして、俺の胸に飛び込んできた。
「……バカ兄貴。無事でよかった」
「おっと。……ありがとな、ATMさん」
「その名前で呼ぶな!」
ドカッ、と脛を蹴られた。痛い。
でも、これが我が家の日常だ。
「さてと。今日は豪勢にいくぞ」
俺はポケットから、ドサドサと戦利品を取り出した。
六畳一間のちゃぶ台の上に、異様な物体が鎮座する。
10キログラムの『龍王の霜降り肉』。
そして、部屋の照明よりも明るく輝く『龍王の心臓』。
「……眩しっ! ちょっと、カーテン閉めてよ!」
「あ、ごめん。これ照明代わりになるかなと思って」
「なるわけないでしょ! 放射線とか大丈夫なのこれ!?」
未緒が悲鳴を上げながら、慌てて肉の方を確認する。
その表情が、一瞬で「オタク」から「主婦」に変わった。
「……すごい。これ、本物のドラゴン? サシの入り方が和牛の比じゃないわ」
「だろ? 解体スキルで筋繊維の一本一本まで処理済みだ。焼くだけで溶けるぞ」
「よし、ホットプレート出す! あとタレ! ご飯5合炊く!」
現金なやつだ。
俺たちは狭いキッチンで準備を始めた。
テレビをつける。
どのチャンネルも、同じニュースを流していた。
『――速報です。本日未明、アビス深層にて確認された「正体不明の解体師」について、政府は重要参考人として――』
『元Cランクパーティ「銀の牙」のメンバー3名が、全裸で保護されました。容疑は「殺人未遂」および「虚偽報告」。ギルドの聴取に対し、「壁が消えた」「装備が砂になった」などと意味不明な供述をしており――』
『ネット上では「解体師(ディスマントラー)」のファンクラブが設立され、会員数はすでに100万人を――』
「……うわぁ」
俺は箸を止めた。
画面には、モザイクがかかっているものの、明らかに俺の配信の切り抜き映像が流れている。
「ねえお兄ちゃん。あんた、明日から外歩けないよ?」
「マスクとサングラス買うか……」
「無駄よ。もう『九条湊』の名前、全世界に割れてるし」
未緒がスマホを見せてくる。
SNSのトレンド1位は『#解体師』。2位は『#九条湊』。3位は『#ATM妹』だった。
「……俺、そんなに凄いことしたっけ?」
「したわよ! ダンジョンの壁壊して、ドラゴン解体して、1億稼いだの! 自覚しなさいよ!」
未緒に怒鳴られ、俺はポリポリと頬をかいた。
借金を返すために必死だっただけなんだが。
結果として、世界を騒がせ、あいつらを懲らしめ、妹に美味い肉を食わせることができた。
まあ、悪くない結果か。
「……ま、なんとかなるだろ」
俺はホットプレートでジュウジュウと音を立てる龍肉をひっくり返した。
香ばしい脂の匂いが部屋に充満する。
「それより今は、これだ。……いただきます!」
「いただきます!」
俺たちは手を合わせ、最高級の肉を口に運んだ。
口の中でとろける脂の甘み。濃厚な魔力の旨味。
それは、Fランクとして底辺を這いつくばってきた俺への、最高のご褒美だった。
窓の外では、まだサイレンの音が鳴り響いている。
俺の平穏な日常は、今日で終わったのかもしれない。
でも、ここには美味い肉と、うるさい妹がいる。
「解体」スキル一つで、人生が変わった。
明日からは、もっと忙しくなりそうだ。
――まずは、Amazonで新しい装備(とサングラス)をポチるところから始めようか。
フラッシュの嵐を抜け、SATの護送車(なぜか乗せられた)を丁重に断り、俺はようやくボロアパートに帰り着いた。
築40年、木造2階建て。
世界の「特級国家戦力」が住むには、あまりにも慎ましい我が家だ。
「ただいまー」
ガチャリ、とドアを開ける。
いつもなら「おかえり、ご飯まだー?」とだらしない声が返ってくるはずだ。
だが、今日は違った。
「…………」
玄関には、仁王立ちした未緒がいた。
手にはスマホ。画面には、俺の銀行口座の残高ページが表示されている。
『残高:¥128,454,300』
「……お兄ちゃん」
「あ、うん。ただいま、未緒」
「あんた、バカなの? 死ぬ気なの? てか、なんで生きてるの?」
未緒の声が震えている。
怒っているのか、泣いているのかわからない。
俺は靴を脱ぎながら、苦笑した。
「悪かったよ。心配かけたな」
「心配なんてしてないわよ! ただ……もしあんたが死んだら、私の推し活資金が……」
未緒は言い訳のように早口でまくし立てたが、その目には涙が溜まっていた。
そして、俺の胸に飛び込んできた。
「……バカ兄貴。無事でよかった」
「おっと。……ありがとな、ATMさん」
「その名前で呼ぶな!」
ドカッ、と脛を蹴られた。痛い。
でも、これが我が家の日常だ。
「さてと。今日は豪勢にいくぞ」
俺はポケットから、ドサドサと戦利品を取り出した。
六畳一間のちゃぶ台の上に、異様な物体が鎮座する。
10キログラムの『龍王の霜降り肉』。
そして、部屋の照明よりも明るく輝く『龍王の心臓』。
「……眩しっ! ちょっと、カーテン閉めてよ!」
「あ、ごめん。これ照明代わりになるかなと思って」
「なるわけないでしょ! 放射線とか大丈夫なのこれ!?」
未緒が悲鳴を上げながら、慌てて肉の方を確認する。
その表情が、一瞬で「オタク」から「主婦」に変わった。
「……すごい。これ、本物のドラゴン? サシの入り方が和牛の比じゃないわ」
「だろ? 解体スキルで筋繊維の一本一本まで処理済みだ。焼くだけで溶けるぞ」
「よし、ホットプレート出す! あとタレ! ご飯5合炊く!」
現金なやつだ。
俺たちは狭いキッチンで準備を始めた。
テレビをつける。
どのチャンネルも、同じニュースを流していた。
『――速報です。本日未明、アビス深層にて確認された「正体不明の解体師」について、政府は重要参考人として――』
『元Cランクパーティ「銀の牙」のメンバー3名が、全裸で保護されました。容疑は「殺人未遂」および「虚偽報告」。ギルドの聴取に対し、「壁が消えた」「装備が砂になった」などと意味不明な供述をしており――』
『ネット上では「解体師(ディスマントラー)」のファンクラブが設立され、会員数はすでに100万人を――』
「……うわぁ」
俺は箸を止めた。
画面には、モザイクがかかっているものの、明らかに俺の配信の切り抜き映像が流れている。
「ねえお兄ちゃん。あんた、明日から外歩けないよ?」
「マスクとサングラス買うか……」
「無駄よ。もう『九条湊』の名前、全世界に割れてるし」
未緒がスマホを見せてくる。
SNSのトレンド1位は『#解体師』。2位は『#九条湊』。3位は『#ATM妹』だった。
「……俺、そんなに凄いことしたっけ?」
「したわよ! ダンジョンの壁壊して、ドラゴン解体して、1億稼いだの! 自覚しなさいよ!」
未緒に怒鳴られ、俺はポリポリと頬をかいた。
借金を返すために必死だっただけなんだが。
結果として、世界を騒がせ、あいつらを懲らしめ、妹に美味い肉を食わせることができた。
まあ、悪くない結果か。
「……ま、なんとかなるだろ」
俺はホットプレートでジュウジュウと音を立てる龍肉をひっくり返した。
香ばしい脂の匂いが部屋に充満する。
「それより今は、これだ。……いただきます!」
「いただきます!」
俺たちは手を合わせ、最高級の肉を口に運んだ。
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それは、Fランクとして底辺を這いつくばってきた俺への、最高のご褒美だった。
窓の外では、まだサイレンの音が鳴り響いている。
俺の平穏な日常は、今日で終わったのかもしれない。
でも、ここには美味い肉と、うるさい妹がいる。
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