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第二章 カツ丼とアイドル
EP 4
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森の賢者ルナと植物ネットワーク
バンッ!!
私はシェアハウス404号室のドアを勢いよく開け放ち、リビングへと雪崩れ込んだ。
「ルナさん! 緊急事態ですわ! 起きてまして!?」
リビングでは、ルナさんが優雅にソファに座り、月光を浴びながら謎の発光するハーブティーを飲んでいるところだった。
私の剣幕に、彼女はきょとんと目を丸くする。
「あら、おかえりなさいリーザさん。ずいぶん慌てて……またカツ丼の夢でも見ましたの?」
「カツ丼はもう(胃袋に)確保しました! 今度はもっと大きな獲物ですわ!」
私は懐からクシャクシャになった指名手配書を取り出し、テーブルの上に叩きつけた。
「ご覧になって! この悪人面!」
「まあ、お髭が伸び放題ですわね。不潔ですわ」
「そこじゃありません! ここ! 懸賞金『金貨10枚』!」
私は数字を指でトントンと叩いた。
ルナさんは優雅に首を傾げる。
「金貨10枚……。お安い金額ですわね。私の杖の宝石一つ分くらいかしら?」
「ぐっ……(金銭感覚の違いにダメージを受ける音)! 私にとっては一財産なんですの! これがあれば、向こう三ヶ月はパンの耳を卒業できますのよ!」
私はルナさんの手を取り、必死に訴えた。
「ルナさん、お願いがありますの。貴女の『エルフの力』で、この男を探し出せませんこと?」
「人探し、ですか?」
「ええ! 世界樹の巫女姫である貴女なら、何かこう……スピリチュアルな力でピピッと!」
私の無茶振りに、ルナさんはふふっと微笑み、カップを置いた。
「容易いことですわ。……この星に根を張る草木は、全て私の友達(下僕)ですもの」
ルナさんは立ち上がり、ベランダの方へと歩み寄った。
そこには、彼女が趣味で育てている小さなサボテンの鉢植えが置いてある。
ルナさんはそのサボテンを優しく指で撫でた。
「こんばんは、サボテンさん。……ねえ、ちょっと教えてくださる? この街に、火薬の臭いがする薄汚いネズミはいなくて?」
――ザワッ……。
その瞬間、私は信じられない光景を目にした。
サボテンが、プルプルと震え出したのだ。
それだけではない。ベランダの外、街路樹や公園の植え込み、遠くの森から、風に乗って「ざわめき」が聞こえてくる。
『……いるよー』
『第4区だよー』
『臭いよー』
『火薬持ってるよー』
「ヒッ!?」
私の頭の中に、直接声が響いてくる!?
これが、エルフの『植物ネットワーク』!?
ルナさんは楽しそうにサボテンと会話を続けている。
「あら、そうなの? 路地裏で立ち小便を? まあ、肥料にするには汚すぎますわね。……え? 今は第4区の廃ビル『旧タロウ製鉄所』跡地に隠れて、コンビニ弁当を食べている?」
情報が早い! そして細かい!
街中のあらゆる植物が、彼女の目となり耳となっているのだ。監視カメラなんて目じゃない。最強のセキュリティシステムだ。
「ありがとう、サボテンさん」
ルナさんはサボテンにキスをして、私の方を振り返った。
「わかりましたわ、リーザさん。犯人は第4区の廃ビル、3階の北側の部屋にいます」
「す、すごいですわ……! ピンポイント特定!」
「ついでに、今から私がここから『世界樹の根』を伸ばして、その廃ビルごと彼を締め上げて差し上げましょうか? 5秒でミンチにできますけれど」
ルナさんが物騒なことを言いながら、床から極太の木の根(のような触手)を召喚しようとする。
私は慌てて彼女に飛びついた。
「ストップ! ストップですわルナさん!!」
「あら? 捕まえるのでしょう?」
「ミンチにしたら懸賞金が貰えませんの! 『生け捕り』が条件なんです!」
それに、そんな怪獣大戦争みたいな捕まえ方をしたら、街が壊滅して修理費を請求されてしまいますわ!
私は冷や汗を拭いながら、ルナさんをなだめた。
「じ、情報は十分ですわ。ありがとうございます。……ここから先は、私の『ビジネス』です」
私はニヤリと笑った。
犯人の居場所はわかった。
でも、私一人であの爆弾魔を捕まえるのは、正直怖いし危険だ。
ならばどうするか?
専門家(プロ)を使えばいい。
それも、ついさっきカツ丼を奢ってくれた、あの怖い顔の隊長さんを。
「……ふふふ。待ってなさい鮫島隊長。この『極上ネタ』、高く売りつけてやりますわ!」
私はトレンチコート(古着屋で500円)を羽織り、夜の街へと駆け出した。
今夜の私はアイドルではない。
敏腕情報屋『インフォーマント・リーザ』だ!
バンッ!!
私はシェアハウス404号室のドアを勢いよく開け放ち、リビングへと雪崩れ込んだ。
「ルナさん! 緊急事態ですわ! 起きてまして!?」
リビングでは、ルナさんが優雅にソファに座り、月光を浴びながら謎の発光するハーブティーを飲んでいるところだった。
私の剣幕に、彼女はきょとんと目を丸くする。
「あら、おかえりなさいリーザさん。ずいぶん慌てて……またカツ丼の夢でも見ましたの?」
「カツ丼はもう(胃袋に)確保しました! 今度はもっと大きな獲物ですわ!」
私は懐からクシャクシャになった指名手配書を取り出し、テーブルの上に叩きつけた。
「ご覧になって! この悪人面!」
「まあ、お髭が伸び放題ですわね。不潔ですわ」
「そこじゃありません! ここ! 懸賞金『金貨10枚』!」
私は数字を指でトントンと叩いた。
ルナさんは優雅に首を傾げる。
「金貨10枚……。お安い金額ですわね。私の杖の宝石一つ分くらいかしら?」
「ぐっ……(金銭感覚の違いにダメージを受ける音)! 私にとっては一財産なんですの! これがあれば、向こう三ヶ月はパンの耳を卒業できますのよ!」
私はルナさんの手を取り、必死に訴えた。
「ルナさん、お願いがありますの。貴女の『エルフの力』で、この男を探し出せませんこと?」
「人探し、ですか?」
「ええ! 世界樹の巫女姫である貴女なら、何かこう……スピリチュアルな力でピピッと!」
私の無茶振りに、ルナさんはふふっと微笑み、カップを置いた。
「容易いことですわ。……この星に根を張る草木は、全て私の友達(下僕)ですもの」
ルナさんは立ち上がり、ベランダの方へと歩み寄った。
そこには、彼女が趣味で育てている小さなサボテンの鉢植えが置いてある。
ルナさんはそのサボテンを優しく指で撫でた。
「こんばんは、サボテンさん。……ねえ、ちょっと教えてくださる? この街に、火薬の臭いがする薄汚いネズミはいなくて?」
――ザワッ……。
その瞬間、私は信じられない光景を目にした。
サボテンが、プルプルと震え出したのだ。
それだけではない。ベランダの外、街路樹や公園の植え込み、遠くの森から、風に乗って「ざわめき」が聞こえてくる。
『……いるよー』
『第4区だよー』
『臭いよー』
『火薬持ってるよー』
「ヒッ!?」
私の頭の中に、直接声が響いてくる!?
これが、エルフの『植物ネットワーク』!?
ルナさんは楽しそうにサボテンと会話を続けている。
「あら、そうなの? 路地裏で立ち小便を? まあ、肥料にするには汚すぎますわね。……え? 今は第4区の廃ビル『旧タロウ製鉄所』跡地に隠れて、コンビニ弁当を食べている?」
情報が早い! そして細かい!
街中のあらゆる植物が、彼女の目となり耳となっているのだ。監視カメラなんて目じゃない。最強のセキュリティシステムだ。
「ありがとう、サボテンさん」
ルナさんはサボテンにキスをして、私の方を振り返った。
「わかりましたわ、リーザさん。犯人は第4区の廃ビル、3階の北側の部屋にいます」
「す、すごいですわ……! ピンポイント特定!」
「ついでに、今から私がここから『世界樹の根』を伸ばして、その廃ビルごと彼を締め上げて差し上げましょうか? 5秒でミンチにできますけれど」
ルナさんが物騒なことを言いながら、床から極太の木の根(のような触手)を召喚しようとする。
私は慌てて彼女に飛びついた。
「ストップ! ストップですわルナさん!!」
「あら? 捕まえるのでしょう?」
「ミンチにしたら懸賞金が貰えませんの! 『生け捕り』が条件なんです!」
それに、そんな怪獣大戦争みたいな捕まえ方をしたら、街が壊滅して修理費を請求されてしまいますわ!
私は冷や汗を拭いながら、ルナさんをなだめた。
「じ、情報は十分ですわ。ありがとうございます。……ここから先は、私の『ビジネス』です」
私はニヤリと笑った。
犯人の居場所はわかった。
でも、私一人であの爆弾魔を捕まえるのは、正直怖いし危険だ。
ならばどうするか?
専門家(プロ)を使えばいい。
それも、ついさっきカツ丼を奢ってくれた、あの怖い顔の隊長さんを。
「……ふふふ。待ってなさい鮫島隊長。この『極上ネタ』、高く売りつけてやりますわ!」
私はトレンチコート(古着屋で500円)を羽織り、夜の街へと駆け出した。
今夜の私はアイドルではない。
敏腕情報屋『インフォーマント・リーザ』だ!
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