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第二章 カツ丼とアイドル
EP 5
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情報屋リーザの駆け引き
深夜の第9倉庫。
海風が吹き荒れる中、私は再びSWAT本部の前に立っていた。
ただし、昼間の不審者スタイル(ハート型サングラス)とは違う。
今の私は、古着屋のワゴンセールで500円で買った、ヨレヨレのベージュのトレンチコートに身を包んでいる。
襟を立て、深く帽子を被る。
これぞ、裏社会に生きるハードボイルドな情報屋の正装だ。
「……ふっ。待たせたわね」
私はインターホンを押さず、重厚な鉄扉を拳でコツコツと叩いた。
秘密の合図(ただのリズム)だ。
ギギギ……。
数秒後、扉が少しだけ開き、不機嫌そうな顔をした鮫島隊長が顔を出した。
「……あ? またお前か。今度は何の真似だ」
「フフ……『お前』じゃないわ。今の私は『インフォーマント(情報屋)』と呼んで頂戴」
私はポケットから一枚の紙を取り出し、ヒラヒラと見せつけた。
さっき剥がしてきた、爆弾魔ボマーの指名手配書だ。
「鮫島隊長。……いいネタ、入りましたわよ?」
「ネタだと?」
鮫島隊長が眉をひそめ、口の中でガリリとキャンディを噛み砕いた。
私はニヤリと笑い、声を潜める。
「貴方が血眼になって探している、この爆弾魔の『現在の潜伏先』……知っていたら、どうします?」
「……何?」
鮫島隊長の眼光が鋭くなった。
先ほどまでの「面倒な子供を見る目」から、「獲物を狙う肉食獣の目」に変わる。
ゾクリと背筋が震えたが、私は踏ん張った。
ここが商売の正念場だ。
「ガセじゃねぇだろうな」
「私の情報網(ルナさんの植物ネットワーク)を舐めないで。……第4区の廃ビル、3階北側の部屋。今まさにコンビニ弁当の唐揚げを食べている最中ですわ」
「……詳細だな」
鮫島隊長は私の目をじっと覗き込み、嘘がないかを見定めた。
そして、ふっと口元を緩める。
「いいだろう。採用だ」
「商談成立ですわね! では、報酬の話を――」
私は電卓(100均)を取り出し、弾き始めた。
「懸賞金は金貨10枚。情報提供料として、相場の3割……金貨3枚(3万円)を頂きますわ!」
金貨3枚。
これがあれば家賃が一ヶ月分払える。私の自由への切符!
しかし、鮫島隊長は冷ややかな目で首を横に振った。
「却下だ」
「えっ!?」
「ウチの予算(機密費)はカツカツなんだよ。弾薬代とコーヒー代で消える。金貨なんて出せるか」
「そ、そんな! じゃあタダ働きですか!? 公権力の横暴ですわ!」
「だが……」
鮫島隊長は懐から、一冊の綴りチケットを取り出した。
「これならある」
「……それは?」
私が目を凝らすと、そこには黄金色の文字でこう書かれていた。
『タローソン特製・店内調理カツ丼 無料引換券(期限間近)』。
「なっ……!?」
「警察関係者に配られる福利厚生だ。俺は飽きるほど食ったから余ってる。……10枚やる」
「じゅ、10枚!?」
カツ丼10杯分。
金額にすれば金貨1枚(1万円)相当。
現金3万円には遠く及ばない。
しかし……私の脳裏に、あのサクサクでジューシーなカツ丼の味がフラッシュバックする。
あれが、あと10回も食べられる? タダで?
私の胃袋(貧乏神)が、「YESと言え! 今すぐYESと言え!」と絶叫した。
プライド? 計算? そんなものは食欲の前では無力だ。
「……くっ……! の、乗りましたわ!」
「交渉成立だな」
鮫島隊長はチケットを私のポケットにねじ込むと、背後の無線機を掴み、怒号を飛ばした。
「総員、第一種戦闘配置(スクランブル)ッ!! ガイシャ(爆弾魔)の居場所が割れた! 第4区廃ビルへ急行する!」
ウゥゥゥゥ――ッ!!
倉庫内にサイレンが鳴り響く。
奥の部屋から、ドタバタと足音が近づいてきた。
「了解だよ隊長! デザート食べてたのにー!」
「おう! 新しい武器の試し撃ちができるな!」
口の周りにクリームをつけたキャルルさんと、巨大なガトリング砲のようなものを担いだイグニスさんが飛び出してきた。
「あれ、リーザちゃん?」
「嬢ちゃん、また来たのか?」
「ええ、今夜は『ビジネスパートナー』として同行させてもらいますわ!」
私はトレンチコートを翻し、倉庫の前に停まっていたSWAT車両――黒塗りに改造された軽トラックの荷台へと飛び乗った。
「乗りな、情報屋。……特等席で花火を見せてやる」
鮫島隊長が運転席でエンジンを吹かす。
ブロロロロロ……!
軽トラとは思えない重低音が響く。
「T-SWAT、出動(ムーブ・アウト)!!」
タイヤが砂利を蹴り上げ、黒い軽トラが夜の街へと疾走し始めた。
荷台の上の私、兎耳のキャルルさん、竜人のイグニスさん。
この奇妙なメンバーで挑む、初めての捕り物が始まったのだ!
深夜の第9倉庫。
海風が吹き荒れる中、私は再びSWAT本部の前に立っていた。
ただし、昼間の不審者スタイル(ハート型サングラス)とは違う。
今の私は、古着屋のワゴンセールで500円で買った、ヨレヨレのベージュのトレンチコートに身を包んでいる。
襟を立て、深く帽子を被る。
これぞ、裏社会に生きるハードボイルドな情報屋の正装だ。
「……ふっ。待たせたわね」
私はインターホンを押さず、重厚な鉄扉を拳でコツコツと叩いた。
秘密の合図(ただのリズム)だ。
ギギギ……。
数秒後、扉が少しだけ開き、不機嫌そうな顔をした鮫島隊長が顔を出した。
「……あ? またお前か。今度は何の真似だ」
「フフ……『お前』じゃないわ。今の私は『インフォーマント(情報屋)』と呼んで頂戴」
私はポケットから一枚の紙を取り出し、ヒラヒラと見せつけた。
さっき剥がしてきた、爆弾魔ボマーの指名手配書だ。
「鮫島隊長。……いいネタ、入りましたわよ?」
「ネタだと?」
鮫島隊長が眉をひそめ、口の中でガリリとキャンディを噛み砕いた。
私はニヤリと笑い、声を潜める。
「貴方が血眼になって探している、この爆弾魔の『現在の潜伏先』……知っていたら、どうします?」
「……何?」
鮫島隊長の眼光が鋭くなった。
先ほどまでの「面倒な子供を見る目」から、「獲物を狙う肉食獣の目」に変わる。
ゾクリと背筋が震えたが、私は踏ん張った。
ここが商売の正念場だ。
「ガセじゃねぇだろうな」
「私の情報網(ルナさんの植物ネットワーク)を舐めないで。……第4区の廃ビル、3階北側の部屋。今まさにコンビニ弁当の唐揚げを食べている最中ですわ」
「……詳細だな」
鮫島隊長は私の目をじっと覗き込み、嘘がないかを見定めた。
そして、ふっと口元を緩める。
「いいだろう。採用だ」
「商談成立ですわね! では、報酬の話を――」
私は電卓(100均)を取り出し、弾き始めた。
「懸賞金は金貨10枚。情報提供料として、相場の3割……金貨3枚(3万円)を頂きますわ!」
金貨3枚。
これがあれば家賃が一ヶ月分払える。私の自由への切符!
しかし、鮫島隊長は冷ややかな目で首を横に振った。
「却下だ」
「えっ!?」
「ウチの予算(機密費)はカツカツなんだよ。弾薬代とコーヒー代で消える。金貨なんて出せるか」
「そ、そんな! じゃあタダ働きですか!? 公権力の横暴ですわ!」
「だが……」
鮫島隊長は懐から、一冊の綴りチケットを取り出した。
「これならある」
「……それは?」
私が目を凝らすと、そこには黄金色の文字でこう書かれていた。
『タローソン特製・店内調理カツ丼 無料引換券(期限間近)』。
「なっ……!?」
「警察関係者に配られる福利厚生だ。俺は飽きるほど食ったから余ってる。……10枚やる」
「じゅ、10枚!?」
カツ丼10杯分。
金額にすれば金貨1枚(1万円)相当。
現金3万円には遠く及ばない。
しかし……私の脳裏に、あのサクサクでジューシーなカツ丼の味がフラッシュバックする。
あれが、あと10回も食べられる? タダで?
私の胃袋(貧乏神)が、「YESと言え! 今すぐYESと言え!」と絶叫した。
プライド? 計算? そんなものは食欲の前では無力だ。
「……くっ……! の、乗りましたわ!」
「交渉成立だな」
鮫島隊長はチケットを私のポケットにねじ込むと、背後の無線機を掴み、怒号を飛ばした。
「総員、第一種戦闘配置(スクランブル)ッ!! ガイシャ(爆弾魔)の居場所が割れた! 第4区廃ビルへ急行する!」
ウゥゥゥゥ――ッ!!
倉庫内にサイレンが鳴り響く。
奥の部屋から、ドタバタと足音が近づいてきた。
「了解だよ隊長! デザート食べてたのにー!」
「おう! 新しい武器の試し撃ちができるな!」
口の周りにクリームをつけたキャルルさんと、巨大なガトリング砲のようなものを担いだイグニスさんが飛び出してきた。
「あれ、リーザちゃん?」
「嬢ちゃん、また来たのか?」
「ええ、今夜は『ビジネスパートナー』として同行させてもらいますわ!」
私はトレンチコートを翻し、倉庫の前に停まっていたSWAT車両――黒塗りに改造された軽トラックの荷台へと飛び乗った。
「乗りな、情報屋。……特等席で花火を見せてやる」
鮫島隊長が運転席でエンジンを吹かす。
ブロロロロロ……!
軽トラとは思えない重低音が響く。
「T-SWAT、出動(ムーブ・アウト)!!」
タイヤが砂利を蹴り上げ、黒い軽トラが夜の街へと疾走し始めた。
荷台の上の私、兎耳のキャルルさん、竜人のイグニスさん。
この奇妙なメンバーで挑む、初めての捕り物が始まったのだ!
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