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第四章 3歳児の勇者
EP 5
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スキル検査の喧騒から数時間後。
シンフォニア家は深夜の静寂に包まれていた。
子供部屋のベビーベッド。
リアン(3歳)は、興奮と少しの不安を抱えながら起き上がった。
(よし……。皆寝静まったな)
昼間、女神ルチアナによって改変されたスキル『召喚(小)』。
これが単なる「ネット通販隠しのカモフラージュ」なのか、それとも「実際に使えるスキル」なのか。それを確認する必要がある。
「でろ! ……サモン(召喚)!」
リアンが小さな手を前に突き出すと、床に直径50センチほどの小さな魔法陣がボゥッと浮かび上がった。
ネット通販のデジタルなウィンドウとは違う、正真正銘の魔法だ。
光が収束し、ポンッという間の抜けた音と共に「それ」は現れた。
「…………」
現れたのは、体長30センチほどの、ピンクと茶色が混ざったようなのっぺりとした生き物。
目も鼻もなく、ただ先端に小さな口があるだけ。
端的に言えば、巨大なミミズだ。
「……なんだコイツ」
リアンは眉をひそめた。
センチネル(マグナギア)のような格好良さは皆無。
これが俺の「召喚獣」? 駄目女神め、適当な仕事を……。
キュルルルル……
その時、ミミズのような召喚獣から、哀愁漂う腹の虫の音が響いた。
どうやら空腹らしい。
「腹減ってんのか? ……っ!?」
リアンが声をかけようとした瞬間、そいつは猛スピードで部屋の隅にあるゴミ箱へと這っていった。
そして、ゴミ箱の中に頭を突っ込む。
ガアアアッ!!
先端の小さな口が、嘘のように大きく裂けた。
まるで花が咲くように4つに割れ、中から回転鋸のような鋭利な牙がビッシリと覗く。
バクンッ! ガリガリガリッ!
「おいおい!?」
そいつは、ゴミ箱に入っていた紙くず、失敗した落書き、そして木製のゴミ箱の縁までもを、一瞬で齧り取った。
「……マジかよ。何でも食べるのかよ」
リアンは呆気にとられた。
有機物も無機物も関係ない。そこにある「物質」を消滅させている。
(……待てよ?)
リアンの脳内で、元経営者の計算機が弾かれた。
彼は枕の下に隠していた「コーヒーキャンディ」を取り出した。
ネット通販で買った、大人味の嗜好品だ。
「……実験だ」
リアンはキャンディを口に放り込み、ほろ苦い甘さを楽しみながら、キラキラしたプラスチックの包み紙を床にポイッと捨てた。
「ほら。食うか?」
ミミズ――召喚獣は、ピクッと反応した。
シュルルッ!
一瞬で包み紙に飛びつき、あの凶悪な口で丸呑みにした。
咀嚼音すらない。完全に「消えた」のだ。
「……使える」
リアンはニヤリと笑った。
「好き嫌いなし。消化も一瞬。排泄物も見当たらない。……これなら、落とし穴を掘る時の土砂処理にも使えるし、何より……」
リアンの脳裏に、先日「撒菱(マキビシ)」を一つ一つ手で回収した苦労がよぎる。
「センチネル達が退治した魔物達の死体、血痕、ばら撒いた毒、科学兵器の痕跡……。それらを『無かったこと』にできる」
完全犯罪の最後のピース。
それが、この一見マヌケなミミズだ。
証拠隠滅(クリーニング)こそが、裏稼業において最も重要で、最も面倒な作業なのだから。
「よし……」
リアンは床に這いつくばる召喚獣に手を伸ばした。
見た目は悪いが、その有用性は計り知れない。
「お前の名前は『喰丸(くいまる)』だ」
リアンが頭(?)を撫でると、喰丸は嬉しそうにクネクネと体を捩らせた。
「シンフォニア小隊・掃除係へようこそ。……これからよろしくな、相棒」
こうして、リアンの最強の「掃除機」が仲間に加わった。
この先、どれだけ派手に暴れても、喰丸がいれば現場は常に「異常なし(オールグリーン)」だ。
リアンは安心して眠りについた。枕元で、喰丸がセンチネルの足を食べようとして騎士丸に叩かれるのを見ながら。
シンフォニア家は深夜の静寂に包まれていた。
子供部屋のベビーベッド。
リアン(3歳)は、興奮と少しの不安を抱えながら起き上がった。
(よし……。皆寝静まったな)
昼間、女神ルチアナによって改変されたスキル『召喚(小)』。
これが単なる「ネット通販隠しのカモフラージュ」なのか、それとも「実際に使えるスキル」なのか。それを確認する必要がある。
「でろ! ……サモン(召喚)!」
リアンが小さな手を前に突き出すと、床に直径50センチほどの小さな魔法陣がボゥッと浮かび上がった。
ネット通販のデジタルなウィンドウとは違う、正真正銘の魔法だ。
光が収束し、ポンッという間の抜けた音と共に「それ」は現れた。
「…………」
現れたのは、体長30センチほどの、ピンクと茶色が混ざったようなのっぺりとした生き物。
目も鼻もなく、ただ先端に小さな口があるだけ。
端的に言えば、巨大なミミズだ。
「……なんだコイツ」
リアンは眉をひそめた。
センチネル(マグナギア)のような格好良さは皆無。
これが俺の「召喚獣」? 駄目女神め、適当な仕事を……。
キュルルルル……
その時、ミミズのような召喚獣から、哀愁漂う腹の虫の音が響いた。
どうやら空腹らしい。
「腹減ってんのか? ……っ!?」
リアンが声をかけようとした瞬間、そいつは猛スピードで部屋の隅にあるゴミ箱へと這っていった。
そして、ゴミ箱の中に頭を突っ込む。
ガアアアッ!!
先端の小さな口が、嘘のように大きく裂けた。
まるで花が咲くように4つに割れ、中から回転鋸のような鋭利な牙がビッシリと覗く。
バクンッ! ガリガリガリッ!
「おいおい!?」
そいつは、ゴミ箱に入っていた紙くず、失敗した落書き、そして木製のゴミ箱の縁までもを、一瞬で齧り取った。
「……マジかよ。何でも食べるのかよ」
リアンは呆気にとられた。
有機物も無機物も関係ない。そこにある「物質」を消滅させている。
(……待てよ?)
リアンの脳内で、元経営者の計算機が弾かれた。
彼は枕の下に隠していた「コーヒーキャンディ」を取り出した。
ネット通販で買った、大人味の嗜好品だ。
「……実験だ」
リアンはキャンディを口に放り込み、ほろ苦い甘さを楽しみながら、キラキラしたプラスチックの包み紙を床にポイッと捨てた。
「ほら。食うか?」
ミミズ――召喚獣は、ピクッと反応した。
シュルルッ!
一瞬で包み紙に飛びつき、あの凶悪な口で丸呑みにした。
咀嚼音すらない。完全に「消えた」のだ。
「……使える」
リアンはニヤリと笑った。
「好き嫌いなし。消化も一瞬。排泄物も見当たらない。……これなら、落とし穴を掘る時の土砂処理にも使えるし、何より……」
リアンの脳裏に、先日「撒菱(マキビシ)」を一つ一つ手で回収した苦労がよぎる。
「センチネル達が退治した魔物達の死体、血痕、ばら撒いた毒、科学兵器の痕跡……。それらを『無かったこと』にできる」
完全犯罪の最後のピース。
それが、この一見マヌケなミミズだ。
証拠隠滅(クリーニング)こそが、裏稼業において最も重要で、最も面倒な作業なのだから。
「よし……」
リアンは床に這いつくばる召喚獣に手を伸ばした。
見た目は悪いが、その有用性は計り知れない。
「お前の名前は『喰丸(くいまる)』だ」
リアンが頭(?)を撫でると、喰丸は嬉しそうにクネクネと体を捩らせた。
「シンフォニア小隊・掃除係へようこそ。……これからよろしくな、相棒」
こうして、リアンの最強の「掃除機」が仲間に加わった。
この先、どれだけ派手に暴れても、喰丸がいれば現場は常に「異常なし(オールグリーン)」だ。
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