元三つ星シェフ、最強の0歳児になる【ネット通販】で地球の物資を取り寄せ、夜な夜な胡桃割り人形を操って無双中〜元A級両親の英才教育が凄すぎて〜

月神世一

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第四章 3歳児の勇者

EP 8

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深夜。シンフォニア家は深い静寂に包まれていた。
だが、子供部屋のベビーベッドの中だけは、冷徹な作戦行動の熱気に満ちていた。
リアン(3歳)の意識が、完全に人形へと移行する。
月明かりが差し込む窓辺で、センチネルの眼光が赤く鋭く輝いた。
『……状況開始(ミッション・スタート)』
センチネルの号令一下、シンフォニア小隊が音もなく動く。
今夜の装備は重い。魔法ポーチには、先日ネット通販で購入した「玩具(ホンモノ)のリボルバー」と、実包が装填されている。
センチネル、弓丸、騎士丸の三体は、待機していた竜丸の広い背中に乗り込んだ。
『行くぞ。……竜丸、発進!』
バサァッ!!
竜丸が鋼鉄の翼を広げ、子供部屋の窓の隙間から夜空へと滑り出した。
目指すは街の南、湿地帯。
数分後。竜丸は高度を下げ、湿った空気が漂う森の上空に到達した。
カエルの鳴き声や羽虫の羽音に混じり、独特の喉を鳴らすような低い声が聞こえてくる。
『……音声確認。リザードマンの鳴き声だ』
センチネルはセンサーの感度を上げ、真下の闇を見透かす。
焚き火の跡はない。警戒心の強い斥候らしい。だが、体温感知と音響センサーが、木の根元で休む四つの影を捉えていた。
『ターゲット確認。4体。……騎士団の情報通りだ』
奇襲の準備に移る。
空中でホバリングする竜丸の背上で、弓丸が魔法ポーチから、彼らにとっては大砲のごとき「S&W M10(玩具モデル)」を引っ張り出した。
『砲撃形態(フォーメーション・カノン)、移行』
騎士丸と弓丸が左右からリボルバーの重い銃身とグリップを支え、竜丸の背中に足を食い込ませて反動に備えるバイポッド(二脚)となる。
センチネルがその後方に立ち、両手でトリガーに指をかけた。
『……照準(エイム)』
だが、問題が発生した。
深い森の闇が、正確なヘッドショットを阻んでいる。鱗の隙間、あるいは眼球を狙わねば、一撃で仕留め損なう可能性がある。
『暗闇だ。視界不良。……しかし!』
センチネルは即座にプランBへ移行した。
『竜丸! 照明弾(フレア)だ!』
ゴオォォォォッ!!
竜丸が大きく口を開け、灼熱の炎のブレスを真下の森へ吐き出した。
それは攻撃用ではない。闇を切り裂くための「光」だ。
「ギャッ!?」「グォ!?」
突然、頭上が真昼のように明るくなり、熱風が吹き荒れたことに、リザードマン達が飛び起きた。
オレンジ色の炎の光が、彼らの爬虫類特有の硬い鱗と、驚愕に見開かれた黄色い目を鮮明に映し出す。
動きが止まったその瞬間。
センチネルの視界に、完璧なレティクル(照準線)が重なった。
『捕捉(ヒット)!』
センチネルがトリガーを引き絞る。
パンッ!! パンッ! パンッ! パンッ!
乾いた、しかし重い破裂音が四連続で湿地帯に轟いた。
玩具の銃口からマズルフラッシュが迸り、.38スペシャルの鉛弾が音速で撃ち出される。
ドスッ! ドスッ!
肉を、骨を、硬い鱗を貫く鈍い音。
四体のリザードマンは、悲鳴を上げる暇すらなく、その場に崩れ落ちた。全ての弾丸が、眉間や眼窩を正確に撃ち抜いていた。
『目標沈黙(ターゲット・サイレンス)。……よし、竜丸、下降しろ』
硝煙の匂いをなびかせながら、竜丸が静かに着陸する。
センチネルはリボルバーから熱を持った空薬莢を排出させながら、リザードマンの死体を見下ろした。
見事な即死だ。人間界の「玩具」の威力は、この世界の亜人を屠るに十分すぎた。
だが、これで終わりではない。
銃創、薬莢、硝煙の匂い。これらは全て「魔法でも剣でもない攻撃」の証拠となる。あの鋭いクルーガ捜査官なら、絶対に見逃さないだろう。
『喰丸』
センチネルが足元の魔法ポーチを軽く叩く。
中から、ピンク色ののっぺりとした「掃除屋」が這い出してきた。
『全部食え。骨の一片、血の一滴も残すな』
キュルルッ!
喰丸は歓喜の声を上げ、自分の数十倍はあるリザードマンの死体へ飛びついた。
その小さな口が、あり得ないほど大きく裂ける。
ガブォッ! バリバリバリッ!
鱗も、鎧も、肉も骨も。まるでブラックホールのように吸い込み、咀嚼し、亜空間の胃袋へと消し去っていく。
ついでに、地面に落ちた四つの薬莢と、硝煙の匂いが染み付いた土までも綺麗に平らげた。
数分後。
そこには、リザードマンがいた痕跡は何一つ残っていなかった。ただ、少し土が掘り返されたような跡があるだけだ。
『……任務完了(ミッション・コンプリート)。よし、帰還する』
満腹で少し動きが鈍くなった喰丸をポーチに回収し、センチネル達は再び竜丸に乗り込んだ。
闇に溶けるように飛び去る彼らの姿を、見ていた者は誰もいない。
明日の朝、アークス達騎士団は、もぬけの殻となった野営地を見て首を傾げることだろう。
「誤報だったのか?」と。
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