元三つ星シェフ、最強の0歳児になる【ネット通販】で地球の物資を取り寄せ、夜な夜な胡桃割り人形を操って無双中〜元A級両親の英才教育が凄すぎて〜

月神世一

文字の大きさ
55 / 117
第四章 3歳児の勇者

EP 12

しおりを挟む
ルナハンの昼下がり。
アークスとマーサが「たまには外の空気を吸ってきなさい」と言うので、リアン(3歳)は渋々ながら近所の公園へと足を運んでいた。
(……平和だ。昨日のリザードマン討伐の証拠隠滅も完璧だったし、今日はベンチで今後の対クルーガ対策でも練るか)
そう考えていた、矢先だった。
「あぁ~! リアン君だぁ!」
鼓膜を揺らす、可愛らしくも恐ろしい声。
リアンが反射的に振り向くと、そこには白銀の髪をなびかせた「歩く自然災害」こと、ハイエルフのルナがいた。
「げぇっ! ルナ!?」
リアンの顔が引きつる。
よりによって、一番会いたくない奴に遭遇してしまった。
ここでの接触は危険だ。何が起きるか分からない。
(逃げるが勝ちだ!)
リアンは即座に回れ右をして、脱兎のごとく駆け出した。
だが、世界(森)は彼を逃さない。
シュルルッ!
「うおっ!?」
地面から突如として伸びた「植物の蔦(ツタ)」が、正確無比なタイミングでリアンの足首に絡みついた。
ドサッ!
「イッテェェェ!? ……ふ、ふざけんなよ、こいつ!」
派手に転んだリアンは、擦りむいた膝をさすりながら悪態をついた。
蔦はまるで意志を持っているかのように、リアンの足を拘束したままだ。
「ねぇねぇ、リアン君」
ルナがトテトテと駆け寄り、倒れたリアンの顔を覗き込む。
その笑顔は天使のように無垢で、悪意の欠片もない。
「私、喉乾いちゃった。お水筒忘れちゃって……。だから、リアン君のお家で休みたい!」
「……はぁぁ!? どんな理不尽要求だよ!?」
リアンは叫んだ。
通りすがりに足を引っ掛けて転ばせておいて、「喉が渇いたから家に上げろ」だと?
強盗ですらもう少し手順を踏むぞ。
「駄目だ! 俺の家は関係ないだろ! 公園の水飲み場で――」
断ろうとした、その時だった。
ゴロゴロゴロ……
足元に、握り拳ほどの大きさの「イガ栗」が転がってきた。
しかも、ただの栗ではない。針一本一本が鋼鉄のように鋭く尖った、殺傷能力の高そうな栗だ。
ザワワワ……
さらに、近くの植え込みの枝がしなり、その栗の横にセットされた。
まるで、ゴルフのドライバーのように。
狙いは、リアンの眉間。
(……おいおい。マジかよ)
枝がブンブンと素振りをする。
『ナイスショットデ、アナタノ顔面ヲホールインワンシマス』
そんな植物たちの意思が伝わってくる。
「……わ、分かったよ! 分かりました! 連れて行けばいいんだろ!」
リアンは両手を上げた。
栗によるゴルフの的になるのは、人生プランに含まれていない。
「わ~い! リアン君、優しい~★」
ルナがパァッと破顔し、蔦がスルスルと解ける。
「優しさじゃねぇよ! お前達に脅された結果だ!」
リアンは心の中で血の涙を流しながら、最強の不法侵入者を自宅へと案内することになった。
シンフォニア家、玄関。
「ただいま……」
「お邪魔しまーす☆」
死んだ魚のような目のリアンと、キラキラオーラ全開のルナが入ってくる。
その声を聞きつけ、マーサが奥から出てきた。
「あら、リアン。……まぁ! 新しいお友達?」
マーサがルナを見て目を丸くする。
エルフの子供。珍しい客人に、母の顔が綻ぶ。
「ルナだよ! よろしくね、おば様☆」
ルナはスカートの裾をつまみ、完璧なカーテシー(挨拶)を披露した。
外面(そとづら)が良すぎる。
「おお、しっかりとした挨拶だ。リアンとお似合いだな!」
アークスも顔を出し、ガハハと笑った。
「パパもママも、若い頃を思い出すよ。なぁ、マーサ?」
「ふふ、そうねぇ。可愛いお嫁さんが来てくれて良かったわね、リアン」
(……勘弁してくれ)
両親の温かい眼差しが、今は針の筵(むしろ)だ。
こいつの本性を知らないからこそ言える台詞だ。
このままリビングで話を広げられると、ボロが出る。
あるいは、ルナがうっかり魔法を暴発させて家を破壊しかねない。
隔離(収容)が必要だ。
「ママ! ジュース頂戴! 喉乾いたの!」
リアンは精一杯の「3歳児演技」で甘えた。
「あらあら、分かったわ。美味しいブドウジュースを部屋に持って行ってあげるわね」
「ありがと、ママ!」
リアンはルナの手を引き(植物に刺されないように優しく)、早足で階段を上がった。
「行こう、ルナちゃん(怒)」
「うん! お部屋デートだね☆」
子供部屋。
バタン、と扉を閉めた瞬間、リアンは大きな溜息をついた。
(やれやれ……とんでもない事になったな)
ここは俺の城(作戦司令室)だ。
ベッドの下には『玩具のリボルバー』、机の引き出しには『証拠隠滅用化学薬品』、そして部屋の隅には『センチネル』たちが隠されている。
さらに、ゴミ箱の中には『喰丸』が潜んでいる。
(この「歩く自然災害」と、「俺の秘密兵器たち」が同居する空間……。火薬庫に火のついたマッチを投げ込むようなもんだぞ)
「わぁ~! 広いお部屋! あ、あのお人形さん(センチネル)だ!」
案の定、ルナの目が怪しく光った。
「ちょ、触るなよ! 絶対に触るなよ!」
最強の3歳児リアン。
今日ばかりは、ホスト役兼、爆弾処理班としての手腕が試されることになった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない

しめさば
ファンタジー
急遽異世界へと転生することになった九条颯馬(30) 小さな村に厄介になるも、生活の為に冒険者に。 ギルドに騙され、与えられたのは最低ランクのカッパープレート。 それに挫けることなく日々の雑務をこなしながらも、不慣れな異世界生活を送っていた。 そんな九条を優しく癒してくれるのは、ギルドの担当職員であるミア(10)と、森で助けた狐のカガリ(モフモフ)。 とは言えそんな日常も長くは続かず、ある日を境に九条は人生の転機を迎えることとなる。 ダンジョンで手に入れた魔法書。村を襲う盗賊団に、新たなる出会い。そして見直された九条の評価。 冒険者ギルドの最高ランクであるプラチナを手にし、目標であるスローライフに一歩前進したかのようにも見えたのだが、現実はそう甘くない。 今度はそれを利用しようと擦り寄って来る者達の手により、日常は非日常へと変化していく……。 「俺は田舎でモフモフに囲まれ、ミアと一緒にのんびり暮らしていたいんだ!!」 降りかかる火の粉は魔獣達と死霊術でズバッと解決! 面倒臭がりの生臭坊主は死霊術師として成り上がり、残念ながらスローライフは送れない。 これは、いずれ魔王と呼ばれる男と、勇者の少女の物語である。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

最安もふもふ三匹に名前をつける変な冒険者ですが、この子たちの力を引き出せるのは私だけです ~精霊偏愛録~

Lihito
ファンタジー
精霊に名前をつける冒険者は、たぶん私だけだ。 うさぎのノル、狐のルゥ、モモンガのピノ。三匹とも最安の契約で、手のひらに乗るサイズ。周りからは「手乗り精霊で何ができる」と笑われている。 でも、この子たちへの聞き方を変えるだけで、返ってくる答えはまるで違う。三匹の情報を重ねれば、上位の精霊一体では見えないものが見える。 上位パーティが三度失敗した大型討伐。私は戦わない。ノルに地中を、ピノに上空を、ルゥに地上を調べさせて、答えを組み上げる。 ——この世界の精霊の使い方、みんな間違ってませんか?

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...