元三つ星シェフ、最強の0歳児になる【ネット通販】で地球の物資を取り寄せ、夜な夜な胡桃割り人形を操って無双中〜元A級両親の英才教育が凄すぎて〜

月神世一

文字の大きさ
97 / 117
第七章 6歳児の勇者

EP 8

しおりを挟む
さらばルナハン、旅立ちの朝
​ルナハン領、領主の館。
雲ひとつない快晴の朝。門の前には、シンフォニア家の紋章が入った馬車が停まっている。
​「……忘れ物はないな」
​リアンは『魔法ポーチ』の中身を最終確認していた。
着替えや洗面用具はもちろんのこと、学園生活を快適に過ごすための「秘密兵器」たちも詰め込んである。
​『携帯用ウォシュレット(手動ポンプ式)』
​『インスタント味噌汁の素(乾燥野菜入り)』
​『マグナギア・カスタム(隠密・護身用)』
​『安眠枕(最高級羽毛使用)』
​(寮の設備がどれほど劣悪か分からん。衣食住の確保こそが、生存競争(スクールライフ)の鍵だ)
​リアンは頷き、ポーチを腰に装着した。
振り返ると、そこには見慣れた我が家と、家族たちの姿があった。
​「うっ……ううっ……!」
​朝から不穏な嗚咽が響いている。
父、アークスだ。
身長190センチを超える巨漢の英雄が、まるで捨てられた子犬のように顔をくしゃくしゃにして泣いている。
​「リアン……! 行くなぁ……! 俺を置いて行かないでくれぇぇ!!」
​「あなた、みっともないですわよ。リアンは戦場に行くわけじゃないんですから」
​マーサがハンカチでアークスの涙(と鼻水)を拭いているが、アークスは止まらない。
​「戦場より酷いかもしれんぞ!? 寮のご飯が不味かったらどうする!? 先輩にいじめられたら!? 悪い女に騙されたらぁぁぁ!?」
​「父上、苦しい……。骨が、骨が折れる……」
​アークスの熱烈なハグ(締め技)を受け、リアンのHPが削られていく。
リアンは必死に「6歳の息子」の演技をした。
​「だ、大丈夫だよ父上! 僕、立派な男爵になって帰ってくるから!」
​「うおおおおおん!! 立派にならなくていい! そのままの可愛いリアンでいてくれぇぇ!!」
​(……親バカもここまでくると災害だな)
​リアンが白目を剥きかけたその時、救世主が現れた。
​「旦那様、離してください。出発の時刻です」
​オニヒメが冷静な手刀をアークスの脇腹に入れ、リアンを救出した。
​「ゲハッ!?」
​「リアン様。……お気をつけて」
​オニヒメは乱れたリアンの襟を直し、小声で囁いた。
​「『太陽芋』の収益報告書は、毎月手紙に忍ばせて送ります。……ニャングルとの定例会議も、手紙で指示を」
​「あぁ、頼む。……留守の間、領地経営(父さんの操縦)は任せたぞ」
​「御意に」
​短いやり取りで通じ合う、主従の絆。
リアンは最後に、門の陰に隠れていた猫獣人――ニャングルに向けて、目配せをした。
ニャングルはニヤリと笑い、親指を立てた。
(商売は任せときなはれ)という合図だ。
​「じゃあ、行ってきます!」
​リアンは馬車に乗り込み、窓から身を乗り出して手を振った。
​「あなたー! 身体に気をつけてねー!」
「リアーーーン!! 週末には絶対帰ってこいよぉぉぉ!!」
​アークスの絶叫を背に、馬車が動き出す。
石畳の道をガタゴトと揺られながら、住み慣れたルナハンの街が遠ざかっていく。
​整備された道路。活気ある商店街。笑顔の領民たち。
この5年間、リアンが影から作り上げた「箱庭」だ。
​(……さらば、俺の聖域(サンクチュアリ))
​リアンは窓を閉め、ふぅと息を吐いてシートに沈み込んだ。
​(次に帰ってくる時まで、この平穏が維持されていればいいが)
​センチメンタルな気分に浸れたのは、ほんの数分だった。
リアンの思考は、すぐに「未来」へと切り替わる。
​(さて、ルナミス学園か。……目標はただ一つ。『目立たず、騒がず、平凡に卒業する』こと)
​彼は貴族(男爵)になってしまったが、学園にはもっと上の位の貴族――伯爵や公爵、あるいは王族の子弟がいるはずだ。
彼らの影に隠れ、成績は中の上をキープし、面倒な派閥争いには関わらず、空気のように過ごす。
そして、適当な文官資格でも取って、さっさと領地に帰還する。
​(完璧な計画だ。……あの『皇帝』に目をつけられているのが懸念点だが、まぁ、子供の戯言だと思って忘れてくれているだろう)
​リアンはポーチから『干し芋(スティックタイプ)』を取り出し、齧った。
​(それに、あの『嵐(ルナ)』もいない。エルフは入学できないって言ったしな。……静かな学園生活になりそうだ)
​彼は知らなかった。
彼が向かう先には、孫可愛さに国家権力をねじ伏せた「最強のお祖母ちゃん」の手回しにより、核弾頭級の転入生(ルナ)が待ち構えていることを。
​そして、かつて「公園」で因縁を持った、あの少年との再会が待っていることを。
​馬車は一路、帝都ルナミスへ。
幼き勇者の、波乱万丈な学園生活(スクールライフ)の幕が上がろうとしていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない

しめさば
ファンタジー
急遽異世界へと転生することになった九条颯馬(30) 小さな村に厄介になるも、生活の為に冒険者に。 ギルドに騙され、与えられたのは最低ランクのカッパープレート。 それに挫けることなく日々の雑務をこなしながらも、不慣れな異世界生活を送っていた。 そんな九条を優しく癒してくれるのは、ギルドの担当職員であるミア(10)と、森で助けた狐のカガリ(モフモフ)。 とは言えそんな日常も長くは続かず、ある日を境に九条は人生の転機を迎えることとなる。 ダンジョンで手に入れた魔法書。村を襲う盗賊団に、新たなる出会い。そして見直された九条の評価。 冒険者ギルドの最高ランクであるプラチナを手にし、目標であるスローライフに一歩前進したかのようにも見えたのだが、現実はそう甘くない。 今度はそれを利用しようと擦り寄って来る者達の手により、日常は非日常へと変化していく……。 「俺は田舎でモフモフに囲まれ、ミアと一緒にのんびり暮らしていたいんだ!!」 降りかかる火の粉は魔獣達と死霊術でズバッと解決! 面倒臭がりの生臭坊主は死霊術師として成り上がり、残念ながらスローライフは送れない。 これは、いずれ魔王と呼ばれる男と、勇者の少女の物語である。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

最安もふもふ三匹に名前をつける変な冒険者ですが、この子たちの力を引き出せるのは私だけです ~精霊偏愛録~

Lihito
ファンタジー
精霊に名前をつける冒険者は、たぶん私だけだ。 うさぎのノル、狐のルゥ、モモンガのピノ。三匹とも最安の契約で、手のひらに乗るサイズ。周りからは「手乗り精霊で何ができる」と笑われている。 でも、この子たちへの聞き方を変えるだけで、返ってくる答えはまるで違う。三匹の情報を重ねれば、上位の精霊一体では見えないものが見える。 上位パーティが三度失敗した大型討伐。私は戦わない。ノルに地中を、ピノに上空を、ルゥに地上を調べさせて、答えを組み上げる。 ——この世界の精霊の使い方、みんな間違ってませんか?

処理中です...