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第七章 6歳児の勇者
EP 10
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嵐を呼ぶ転入生
『王立ルナミス学園』の講堂。
シャンデリアが輝く広大なホールに、数百人の新入生が整列していた。
壇上では、長い白髭を蓄えた学園長が、ありがたくも眠たい祝辞を述べている。
(……長い。校長の話が長いのは異世界転生しても変わらないのか)
リアンは直立不動の姿勢を保ちながら、意識を半分飛ばしていた。
隣では、ライバル宣言をしたクラウスが、微動だにせず真剣な眼差しで学園長を見つめている。さすがは侯爵家の嫡男、姿勢もメンタルも鋼鉄製だ。
「――以上で、祝辞を終わります」
ようやく話が終わった。
拍手が起こり、リアンも機械的に手を叩く。
これで解散か、と思ったその時だった。
「さて。最後に、本年度の『特待生』を紹介します」
学園長が再びマイク(魔道具)を握り、少し緊張した面持ちで告げた。
「我が国と、長きにわたり国交を閉ざしていた『エルフの国』より……友好の架け橋として、特別留学生をお招きしております」
ざわっ……。
静寂だった講堂が、どよめきに包まれた。
エルフ? あの伝説の種族が? ここに?
「……嫌な予感がする」
リアンの背筋に悪寒が走る。
まさか。いや、ありえない。エルフは人間を嫌っているはずだ。
だが、壇上の扉がゆっくりと開き、その「まさか」が姿を現した。
「みんな~! こんにちは~!★」
弾けるような笑顔。
背中に揺れる透明な羽のような魔力光。
そして、少し改造された(スカート丈が短い)制服を着こなす、銀髪の美少女。
「ル、ルナ……!?」
リアンは思わず声を漏らした。
そこに立っていたのは、数日前、涙の別れ(?)をしたはずの幼馴染――エルフの姫、ルナだった。
「わたくし、ルナ・シルフィードと申します! この学園で、人間のお友達をいーっぱい作りに来ました! よろしくねっ!★」
ルナはアイドル顔負けのウィンクを飛ばした。
その愛らしさと、エルフ特有の神秘的なオーラに、男子生徒たちは一瞬で撃ち抜かれた。
「か、可愛い……!」
「本物のエルフだ……!」
「天使か!?」
会場のテンションが爆上がりする中、ルナはキョロキョロと客席を見回した。
そして――リアンと目が合った。
「あーーっ!! みーつけた!!」
ルナは壇上から飛び降りた。
物理的に。
「ちょ、ルナ様!? 階段を!」
教師たちの制止も聞かず、風の魔法でふわりと着地すると、一直線にリアンの元へダッシュしてきた。
「リアーーン!! 会いたかったよぉぉぉ!!」
「ぐえっ!?」
タックル気味のハグ。
周囲の視線が、再びリアンに集中する。
「な、なんだアイツ!? エルフの姫様と知り合いなのか!?」
「男爵家の息子じゃなかったのか!?」
「許せん! 爆発しろ!」
(……終わった。ステルス作戦、完全崩壊)
リアンは白目を剥いた。
これでもう、「平凡なモブ」として生きることは不可能だ。
「むぅ……?」
その騒ぎに、隣にいたクラウスが眉をひそめた。
「おいリアン。……その、破廉恥な格好をした少女は誰だ? まさか、君の知り合いか?」
クラウスはルナを指差した。
ルナはリアンから離れ、クラウスを見上げた。
「ん? なにこのキラキラした人?」
ルナは首を傾げた。
「僕はクラウス・アルヴィン。……君、校則違反だぞ。壇上から飛び降りるなど、淑女の振る舞いとは……」
クラウスが説教を始めようとした時、ルナがニカっと笑った。
「ルナだよ! ルナと仲良くしてね★」
ルナはクラウスの手を握り、上目遣いで微笑んだ。
至近距離での、ハイエルフ直伝の「魅了(チャーム)」クラスの笑顔。
「な……っ!?」
クラウスの言葉が止まった。
彼の顔が、耳まで真っ赤に染まっていく。
「な、ななな、なんだ君は!? い、いきなり手を……!?」
クラウスは女性免疫がゼロだった。
高貴な家柄ゆえ、女性とは一定の距離を保って接してきた彼にとって、ルナのような「距離感ゼロ」のタイプは天敵(エイリアン)だったのだ。
「えへへ、手ぇあったかいね!」
「ひぃっ!?」
クラウスは悲鳴を上げ、バッ! と手を振りほどいた。
「し、失礼するッ!!」
「あ、逃げた」
クラウスは脱兎のごとく、人の波をかき分けて逃走していった。
その背中は、いつもの冷静沈着な侯爵令息とは程遠い、パニック状態そのものだった。
「……あーあ」
残されたリアンは、深いため息をついた。
右には、トラブルメーカーのエルフ娘。
左には、逃亡したライバル(ポンコツ疑惑)。
そして周囲には、好奇と嫉妬の視線を向ける数百人の生徒たち。
「……前言撤回」
リアンは天を仰いだ。
「平凡な学園生活? ……無理だ。今日から毎日が『戦争』になりそうだ」
学園の鐘が高らかに鳴り響く。
幼き男爵リアン・シンフォニア(6歳)。
彼の、胃痛と波乱に満ちたスクールライフが、今ここに幕を開けたのだった。
『王立ルナミス学園』の講堂。
シャンデリアが輝く広大なホールに、数百人の新入生が整列していた。
壇上では、長い白髭を蓄えた学園長が、ありがたくも眠たい祝辞を述べている。
(……長い。校長の話が長いのは異世界転生しても変わらないのか)
リアンは直立不動の姿勢を保ちながら、意識を半分飛ばしていた。
隣では、ライバル宣言をしたクラウスが、微動だにせず真剣な眼差しで学園長を見つめている。さすがは侯爵家の嫡男、姿勢もメンタルも鋼鉄製だ。
「――以上で、祝辞を終わります」
ようやく話が終わった。
拍手が起こり、リアンも機械的に手を叩く。
これで解散か、と思ったその時だった。
「さて。最後に、本年度の『特待生』を紹介します」
学園長が再びマイク(魔道具)を握り、少し緊張した面持ちで告げた。
「我が国と、長きにわたり国交を閉ざしていた『エルフの国』より……友好の架け橋として、特別留学生をお招きしております」
ざわっ……。
静寂だった講堂が、どよめきに包まれた。
エルフ? あの伝説の種族が? ここに?
「……嫌な予感がする」
リアンの背筋に悪寒が走る。
まさか。いや、ありえない。エルフは人間を嫌っているはずだ。
だが、壇上の扉がゆっくりと開き、その「まさか」が姿を現した。
「みんな~! こんにちは~!★」
弾けるような笑顔。
背中に揺れる透明な羽のような魔力光。
そして、少し改造された(スカート丈が短い)制服を着こなす、銀髪の美少女。
「ル、ルナ……!?」
リアンは思わず声を漏らした。
そこに立っていたのは、数日前、涙の別れ(?)をしたはずの幼馴染――エルフの姫、ルナだった。
「わたくし、ルナ・シルフィードと申します! この学園で、人間のお友達をいーっぱい作りに来ました! よろしくねっ!★」
ルナはアイドル顔負けのウィンクを飛ばした。
その愛らしさと、エルフ特有の神秘的なオーラに、男子生徒たちは一瞬で撃ち抜かれた。
「か、可愛い……!」
「本物のエルフだ……!」
「天使か!?」
会場のテンションが爆上がりする中、ルナはキョロキョロと客席を見回した。
そして――リアンと目が合った。
「あーーっ!! みーつけた!!」
ルナは壇上から飛び降りた。
物理的に。
「ちょ、ルナ様!? 階段を!」
教師たちの制止も聞かず、風の魔法でふわりと着地すると、一直線にリアンの元へダッシュしてきた。
「リアーーン!! 会いたかったよぉぉぉ!!」
「ぐえっ!?」
タックル気味のハグ。
周囲の視線が、再びリアンに集中する。
「な、なんだアイツ!? エルフの姫様と知り合いなのか!?」
「男爵家の息子じゃなかったのか!?」
「許せん! 爆発しろ!」
(……終わった。ステルス作戦、完全崩壊)
リアンは白目を剥いた。
これでもう、「平凡なモブ」として生きることは不可能だ。
「むぅ……?」
その騒ぎに、隣にいたクラウスが眉をひそめた。
「おいリアン。……その、破廉恥な格好をした少女は誰だ? まさか、君の知り合いか?」
クラウスはルナを指差した。
ルナはリアンから離れ、クラウスを見上げた。
「ん? なにこのキラキラした人?」
ルナは首を傾げた。
「僕はクラウス・アルヴィン。……君、校則違反だぞ。壇上から飛び降りるなど、淑女の振る舞いとは……」
クラウスが説教を始めようとした時、ルナがニカっと笑った。
「ルナだよ! ルナと仲良くしてね★」
ルナはクラウスの手を握り、上目遣いで微笑んだ。
至近距離での、ハイエルフ直伝の「魅了(チャーム)」クラスの笑顔。
「な……っ!?」
クラウスの言葉が止まった。
彼の顔が、耳まで真っ赤に染まっていく。
「な、ななな、なんだ君は!? い、いきなり手を……!?」
クラウスは女性免疫がゼロだった。
高貴な家柄ゆえ、女性とは一定の距離を保って接してきた彼にとって、ルナのような「距離感ゼロ」のタイプは天敵(エイリアン)だったのだ。
「えへへ、手ぇあったかいね!」
「ひぃっ!?」
クラウスは悲鳴を上げ、バッ! と手を振りほどいた。
「し、失礼するッ!!」
「あ、逃げた」
クラウスは脱兎のごとく、人の波をかき分けて逃走していった。
その背中は、いつもの冷静沈着な侯爵令息とは程遠い、パニック状態そのものだった。
「……あーあ」
残されたリアンは、深いため息をついた。
右には、トラブルメーカーのエルフ娘。
左には、逃亡したライバル(ポンコツ疑惑)。
そして周囲には、好奇と嫉妬の視線を向ける数百人の生徒たち。
「……前言撤回」
リアンは天を仰いだ。
「平凡な学園生活? ……無理だ。今日から毎日が『戦争』になりそうだ」
学園の鐘が高らかに鳴り響く。
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彼の、胃痛と波乱に満ちたスクールライフが、今ここに幕を開けたのだった。
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