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EP 6
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ゴルド商会の刺客と、大人の話し合い
「あぁん? 黙って聞いてりゃ、休憩だぁ?」
チンピラの一人が、龍魔呂の胸倉を掴もうと手を伸ばした。
背後では、金で雇われたと思われる小太りの男――ゴルド商会の支店長が、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべている。
「ひひひ、兄ちゃん。ここで商売したけりゃ、『場所代』ってもんが必要なんだよ。分かるよな?」
典型的な嫌がらせ。
だが、彼らは相手を間違えた。
彼らが絡んだのは、ただの料理人ではない。地獄の底から這い上がってきた「死神」だ。
ガリッ。
龍魔呂が口の中の角砂糖を噛み砕く音が、妙に大きく響いた。
「……来い」
短く、低く。
それだけの言葉だった。
だが、次の瞬間。
ドクンッ。
チンピラたちの心臓が早鐘を打った。
龍魔呂の体から、ゆらりと湯気のようなものが立ち上る。
それは、どす黒い闇に、鮮血のような赤が混じり合った禍々しいオーラ――『闘気』だった。
「ひっ……!?」
生物としての本能的な恐怖。
目の前の男が「捕食者」であり、自分たちが「餌」であることを、細胞レベルで理解させられる威圧感。
伸ばした手が震え、足が竦む。
龍魔呂は無言で踵を返すと、路地裏へと歩き出した。
チンピラたちと支店長は、まるで蛇に睨まれた蛙のように、フラフラとその背中に吸い寄せられていく。
逆らえば殺される。本能がそう告げていたからだ。
◇
人気のない、薄暗い路地裏。
龍魔呂は足を止め、ゆっくりと振り返った。
「で? どう落とし前(ケジメ)を付けてくれるんだ?」
淡々とした口調。だが、その瞳に光はない。
支店長は脂汗をダラダラと流しながら、震える声で虚勢を張ろうとした。
「き、貴様……我々はゴルド商会の者だぞ! こんなことをしてタダで済むと……!」
「うるせぇな」
龍魔呂は足元に転がっていた手頃な石を拾い上げた。
大人の拳ほどの大きさがある、硬い花崗岩だ。
「よく見とけ」
メキメキメキッ……バキンッ!!
信じがたい音が響いた。
龍魔呂が軽く握りしめただけで、硬い石が悲鳴を上げ、粉々に砕け散ったのだ。
パラパラと、砂になった石の残骸が地面に落ちる。
魔法ではない。純粋な握力と、闘気による物理破壊だ。
「俺の店に手を出すってことは、こういう覚悟があるってことだよな?」
龍魔呂が一歩踏み出す。
その姿が、支店長たちの目には巨大な鬼神のように映った。
頭蓋骨が、今の石のように砕かれるイメージが脳裏をよぎる。
「ひ、ひぃぃぃぃぃッ!!」
プライドも立場も吹き飛んだ。
残ったのは、ただ「生きたい」という渇望だけ。
「い、命ばかりはご勘弁をぉぉぉッ!!」
ザッ!
支店長とチンピラたちが、一糸乱れぬ動きで地面に額を擦り付けた。
見事な土下座である。
「申し訳有りませんでした! 私共が全て悪うございます!」
「調子に乗ってすいやせんでしたぁッ!」
「こ、これから何か不都合が有れば、私共が全力で処理致します! 役所の許可取りでも、資材の調達でも、何でもお申し付けくださいッ!!」
龍魔呂は冷ややかな目で見下ろす。
殺気は消さない。恐怖を骨の髄まで刻み込むためだ。
「……二度はねぇぞ」
「は、はいぃぃッ!! ありがとうございますぅぅッ!!」
龍魔呂は興味を失ったように背を向け、路地裏を去っていった。
残された男たちは、腰が抜けてしばらく立ち上がれなかった。
◇
その一部始終を、屋根の上から覗き見ている影があった。
猫耳の商人、ニャングルである。
(ひぇぇ……。あの支店長、強欲で有名やったのに、借りてきた猫みたいになっとる……)
ニャングルはブルリと体を震わせた。
暴力でねじ伏せるだけなら、ただの腕っ節の強い男だ。
だが、龍魔呂は違う。
一瞬で相手の心を折り、恐怖で支配し、自分の利になるように「使える駒」へと変えた。
(あの鬼(オーガ)……簡単に人を調教しよるで。関わったら骨までしゃぶられる……けど、味方に付けたら最強や!)
ニャングルは恐怖と同時に、商人としての興奮を抑えきれずにいた。
◇
龍魔呂が広場の屋台に戻ると、ルナが心配そうに駆け寄ってきた。
「龍魔呂様! 大丈夫ですか? 怖そうな人たちに連れていかれて……どうかなさいましたか?」
ルナは本気で心配しているようで、オロオロと龍魔呂の体を確認しようとする。
龍魔呂はいつもの仏頂面で、ポンとルナの頭を軽く叩いた。
「いや、話し合いをしただけだ。大人のな」
「話し合い……ですか?」
「あぁ。彼らも反省して、これからは店の協力をしてくれるそうだ」
「まぁ! やっぱり龍魔呂さんの誠意が通じたんですね! 素敵ですぅ!」
ルナは目を輝かせて手を合わせた。
龍魔呂は「誠意(物理)」については訂正せず、エプロンを締め直した。
「休憩は終わりだ。夜の仕込みをするぞ」
「はいっ! 頑張ります、大将♡」
勘違いしたままのエルフ王女と、裏社会の頂点に立った(ような気がする)店主。
小料理屋『鬼灯』の夜は、平和に更けていく――はずだった。
「あぁん? 黙って聞いてりゃ、休憩だぁ?」
チンピラの一人が、龍魔呂の胸倉を掴もうと手を伸ばした。
背後では、金で雇われたと思われる小太りの男――ゴルド商会の支店長が、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべている。
「ひひひ、兄ちゃん。ここで商売したけりゃ、『場所代』ってもんが必要なんだよ。分かるよな?」
典型的な嫌がらせ。
だが、彼らは相手を間違えた。
彼らが絡んだのは、ただの料理人ではない。地獄の底から這い上がってきた「死神」だ。
ガリッ。
龍魔呂が口の中の角砂糖を噛み砕く音が、妙に大きく響いた。
「……来い」
短く、低く。
それだけの言葉だった。
だが、次の瞬間。
ドクンッ。
チンピラたちの心臓が早鐘を打った。
龍魔呂の体から、ゆらりと湯気のようなものが立ち上る。
それは、どす黒い闇に、鮮血のような赤が混じり合った禍々しいオーラ――『闘気』だった。
「ひっ……!?」
生物としての本能的な恐怖。
目の前の男が「捕食者」であり、自分たちが「餌」であることを、細胞レベルで理解させられる威圧感。
伸ばした手が震え、足が竦む。
龍魔呂は無言で踵を返すと、路地裏へと歩き出した。
チンピラたちと支店長は、まるで蛇に睨まれた蛙のように、フラフラとその背中に吸い寄せられていく。
逆らえば殺される。本能がそう告げていたからだ。
◇
人気のない、薄暗い路地裏。
龍魔呂は足を止め、ゆっくりと振り返った。
「で? どう落とし前(ケジメ)を付けてくれるんだ?」
淡々とした口調。だが、その瞳に光はない。
支店長は脂汗をダラダラと流しながら、震える声で虚勢を張ろうとした。
「き、貴様……我々はゴルド商会の者だぞ! こんなことをしてタダで済むと……!」
「うるせぇな」
龍魔呂は足元に転がっていた手頃な石を拾い上げた。
大人の拳ほどの大きさがある、硬い花崗岩だ。
「よく見とけ」
メキメキメキッ……バキンッ!!
信じがたい音が響いた。
龍魔呂が軽く握りしめただけで、硬い石が悲鳴を上げ、粉々に砕け散ったのだ。
パラパラと、砂になった石の残骸が地面に落ちる。
魔法ではない。純粋な握力と、闘気による物理破壊だ。
「俺の店に手を出すってことは、こういう覚悟があるってことだよな?」
龍魔呂が一歩踏み出す。
その姿が、支店長たちの目には巨大な鬼神のように映った。
頭蓋骨が、今の石のように砕かれるイメージが脳裏をよぎる。
「ひ、ひぃぃぃぃぃッ!!」
プライドも立場も吹き飛んだ。
残ったのは、ただ「生きたい」という渇望だけ。
「い、命ばかりはご勘弁をぉぉぉッ!!」
ザッ!
支店長とチンピラたちが、一糸乱れぬ動きで地面に額を擦り付けた。
見事な土下座である。
「申し訳有りませんでした! 私共が全て悪うございます!」
「調子に乗ってすいやせんでしたぁッ!」
「こ、これから何か不都合が有れば、私共が全力で処理致します! 役所の許可取りでも、資材の調達でも、何でもお申し付けくださいッ!!」
龍魔呂は冷ややかな目で見下ろす。
殺気は消さない。恐怖を骨の髄まで刻み込むためだ。
「……二度はねぇぞ」
「は、はいぃぃッ!! ありがとうございますぅぅッ!!」
龍魔呂は興味を失ったように背を向け、路地裏を去っていった。
残された男たちは、腰が抜けてしばらく立ち上がれなかった。
◇
その一部始終を、屋根の上から覗き見ている影があった。
猫耳の商人、ニャングルである。
(ひぇぇ……。あの支店長、強欲で有名やったのに、借りてきた猫みたいになっとる……)
ニャングルはブルリと体を震わせた。
暴力でねじ伏せるだけなら、ただの腕っ節の強い男だ。
だが、龍魔呂は違う。
一瞬で相手の心を折り、恐怖で支配し、自分の利になるように「使える駒」へと変えた。
(あの鬼(オーガ)……簡単に人を調教しよるで。関わったら骨までしゃぶられる……けど、味方に付けたら最強や!)
ニャングルは恐怖と同時に、商人としての興奮を抑えきれずにいた。
◇
龍魔呂が広場の屋台に戻ると、ルナが心配そうに駆け寄ってきた。
「龍魔呂様! 大丈夫ですか? 怖そうな人たちに連れていかれて……どうかなさいましたか?」
ルナは本気で心配しているようで、オロオロと龍魔呂の体を確認しようとする。
龍魔呂はいつもの仏頂面で、ポンとルナの頭を軽く叩いた。
「いや、話し合いをしただけだ。大人のな」
「話し合い……ですか?」
「あぁ。彼らも反省して、これからは店の協力をしてくれるそうだ」
「まぁ! やっぱり龍魔呂さんの誠意が通じたんですね! 素敵ですぅ!」
ルナは目を輝かせて手を合わせた。
龍魔呂は「誠意(物理)」については訂正せず、エプロンを締め直した。
「休憩は終わりだ。夜の仕込みをするぞ」
「はいっ! 頑張ります、大将♡」
勘違いしたままのエルフ王女と、裏社会の頂点に立った(ような気がする)店主。
小料理屋『鬼灯』の夜は、平和に更けていく――はずだった。
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