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第二章 神、魔王、竜王の飲み会
EP 11
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竜王堕つ! 禁断の白き麻薬(マヨネーズ)
「ねぇ、龍魔呂。……飽きたわ」
小料理屋『鬼灯(ほおずき)』のカウンター席。
開店から数時間、ジョッキを傾けていた竜王シルヴィアが、頬杖をついて不満げに言った。
その皿には、龍魔呂自慢の『鶏の唐揚げ』が盛られている。
「あぁ? 揚げたてだぞ。文句があるなら残せ」
「違うのよ! 美味しいの! 美味しいんだけど……物足りないのよ!」
シルヴィアは唐揚げをフォークで突き刺し、ジタバタと足を揺らした。
「竜王たるもの、もっとこう……ガツンとくる破壊力が欲しいのよ! 今の味は上品すぎるわ。もっと背徳的で、理性を吹き飛ばすような『脂の暴力』が欲しいの!」
隣で飲んでいた魔王ラスティアが、呆れたように眼鏡を直す。
「贅沢な蜥蜴(とかげ)ね。この醤油とショウガのバランスは黄金比よ。これ以上、何を足すと言うの?」
「うるさいわね、ガリ勉魔王。あんたみたいに頭で食べてるんじゃないのよ、私は魂(ソウル)で食ってるの!」
バチバチと火花を散らす二人。
龍魔呂は面倒くさそうに溜息をつき、ポケットから角砂糖を取り出して口へ放り込んだ。
ガリッ。
(……脂の暴力、か)
龍魔呂は厨房の冷蔵庫を開けた。
そこには、先日『地球ショッピング』のセールで大量購入した「アレ」が鎮座している。
地球の食卓における、最強にして最悪の調味料。
カロリーの化身。
「……ほらよ」
ドンッ。
龍魔呂は、赤いキャップのついた、柔らかいプラスチック容器をカウンターに置いた。
中には、クリーム色のねっとりとした物体が詰まっている。
「……何これ? スライムの死骸?」
「食いモンだ。唐揚げにかけてみろ」
シルヴィアは半信半疑でボトルを手に取った。
龍魔呂の指示通り、キャップを開け、逆さにして容器の腹を押す。
ブチュゥゥゥ……。
星型の絞り口から、白く艶やかな線が射出される。
茶色い唐揚げの上に描かれる、背徳の白いライン。
「匂いは……少し酸っぱい? お酢と……油の匂いね」
シルヴィアは、たっぷりとその白い物体がかかった唐揚げを口へと運んだ。
ガリッ、ジュワァ……!
瞬間。
竜王の瞳孔が、極限まで開いた。
「――っ!?」
脳髄を直接殴打されたような衝撃。
唐揚げの肉汁(脂)と、この白い物体の油分が混ざり合い、口の中で爆発的なコクを生み出している。
だが、クドくはない。
微かな酸味が後味を引き締め、卵黄のまろやかさが全てを包み込む。
美味い。
理屈抜きに、暴力的で、罪深い味がする。
「な、なんなのコレぇぇぇぇッ!?」
シルヴィアが絶叫した。
「美味しい! 美味すぎるわ! さっきまでの唐揚げが『平民』だとしたら、これは『皇帝』よ! 脂に脂を足してるのに、どうしてこんなに止まらないの!?」
「それは『マヨネーズ』だ。卵と酢と油を乳化させた、カロリー爆弾だ」
龍魔呂が淡々と告げる。
マヨネーズ。
それは、淡白な食材を御馳走に変え、こってりした食材をさらに凶悪な兵器に変える、禁断の調味料。
「マヨネーズ……! なんて恐ろしい響き……!」
シルヴィアの手が止まらなくなった。
次々と唐揚げにマヨネーズをかけ、貪り食う。
ブチュッ、パクッ。ブチュッ、パクッ。
「あぁん♡ この酸味がたまらない! ビール! ビール持ってきてぇ!」
ゴキュ、ゴキュ、プハァッ!
マヨネーズの濃厚な後味を、冷えたビールで洗い流す快感。
無限ループが完成してしまった。
「ちょっとシルヴィア、私にも貸しなさいよ」
我慢できなくなったラスティアがボトルを奪い取る。
彼女は、付け合わせの「野菜スティック(キュウリとニンジン)」にマヨネーズをたっぷりとつけた。
ポリッ。
「……ッ! 理解不能! ただの野菜が、メインディッシュに昇格したわ!」
ラスティアも陥落した。
シャキシャキの野菜とマヨネーズの相性は、人類が生み出した奇跡の一つだ。
「返してよ! それは私のよ!」
「うるさいわね、共有財産でしょう!」
ボトルを巡って争う魔王と竜王。
その横で、女神ルチアナがこっそりと「マヨご飯」を作って食べていた。
そんな中、シルヴィアがハッと動きを止めた。
「待って……。龍魔呂、これ『カロリー爆弾』って言ったわよね?」
「あぁ。大さじ一杯でごはん茶碗半分くらいのカロリーがあるぞ」
「……は?」
シルヴィアの顔が青ざめた。
彼女は今、ボトルの半分近くを消費している。
竜の姿ならいくら食べても問題ないが、今は人型(ナイスバディ)を取っている。このままでは、竜王としての威厳あるプロポーションが崩壊し、「ぽっちゃり竜王」になってしまう。
「い、嫌ぁぁぁぁッ! 私のくびれがぁぁぁ!」
シルヴィアが悲鳴を上げ、パチンと指を鳴らした。
「『時間巻き戻し(リワインド)』!」
世界が歪む。
シルヴィアの胃袋の中身と、摂取したカロリーの時間が「食べる前」まで巻き戻る。
彼女のお腹はぺたんこに戻った。
「ふぅ……危ない危ない。無かったことになったわ」
シルヴィアが冷や汗を拭う。
そして、空になった皿を見て、ニッコリと笑った。
「さて、お腹も空いたし、もう一回唐揚げ(マヨ増し)食べようかしら♡」
「……おい」
龍魔呂が、空になったマヨネーズのボトルを指さした。
「てめぇの腹の時間は戻ったかもしれねぇが、俺の店の『マヨネーズの在庫』は戻ってねぇぞ」
「えっ?」
「食ったもんは食ったんだ。カロリーは消せても、代金は消えねぇよ」
龍魔呂の背後に、ネギオが音もなく出現した。
手には、マヨネーズ一本分の追加料金と、唐揚げの再注文伝票が握られている。
「竜王様。当店のマヨネーズは『地球産・特級品』のため、一本あたり金貨2枚となります」
「た、高いぃぃぃ!?」
「嫌なら食うな。……それとも、皿洗いでもしてくか?」
龍魔呂が包丁を光らせる。
シルヴィアは涙目で財布(異空間収納)を開いた。
「払うわよ! 払えばいいんでしょ! ……だから、もう一本新品のマヨネーズちょうだい! 次は指につけて舐めるから!」
「……チッ。マヨラーかよ」
結局、その夜だけでマヨネーズが5本消費された。
野菜スティックが飛ぶように売れ、ルナが「野菜がいっぱい食べられてヘルシーですね!」と勘違い発言をしてネギオに突っ込まれていた。
翌日。
シルヴィアのウエストが心なしか1センチほど増えていたが、彼女は「誤差よ、誤差!」と言い張り、朝食のトーストにもマヨネーズを塗っていたという。
「ねぇ、龍魔呂。……飽きたわ」
小料理屋『鬼灯(ほおずき)』のカウンター席。
開店から数時間、ジョッキを傾けていた竜王シルヴィアが、頬杖をついて不満げに言った。
その皿には、龍魔呂自慢の『鶏の唐揚げ』が盛られている。
「あぁ? 揚げたてだぞ。文句があるなら残せ」
「違うのよ! 美味しいの! 美味しいんだけど……物足りないのよ!」
シルヴィアは唐揚げをフォークで突き刺し、ジタバタと足を揺らした。
「竜王たるもの、もっとこう……ガツンとくる破壊力が欲しいのよ! 今の味は上品すぎるわ。もっと背徳的で、理性を吹き飛ばすような『脂の暴力』が欲しいの!」
隣で飲んでいた魔王ラスティアが、呆れたように眼鏡を直す。
「贅沢な蜥蜴(とかげ)ね。この醤油とショウガのバランスは黄金比よ。これ以上、何を足すと言うの?」
「うるさいわね、ガリ勉魔王。あんたみたいに頭で食べてるんじゃないのよ、私は魂(ソウル)で食ってるの!」
バチバチと火花を散らす二人。
龍魔呂は面倒くさそうに溜息をつき、ポケットから角砂糖を取り出して口へ放り込んだ。
ガリッ。
(……脂の暴力、か)
龍魔呂は厨房の冷蔵庫を開けた。
そこには、先日『地球ショッピング』のセールで大量購入した「アレ」が鎮座している。
地球の食卓における、最強にして最悪の調味料。
カロリーの化身。
「……ほらよ」
ドンッ。
龍魔呂は、赤いキャップのついた、柔らかいプラスチック容器をカウンターに置いた。
中には、クリーム色のねっとりとした物体が詰まっている。
「……何これ? スライムの死骸?」
「食いモンだ。唐揚げにかけてみろ」
シルヴィアは半信半疑でボトルを手に取った。
龍魔呂の指示通り、キャップを開け、逆さにして容器の腹を押す。
ブチュゥゥゥ……。
星型の絞り口から、白く艶やかな線が射出される。
茶色い唐揚げの上に描かれる、背徳の白いライン。
「匂いは……少し酸っぱい? お酢と……油の匂いね」
シルヴィアは、たっぷりとその白い物体がかかった唐揚げを口へと運んだ。
ガリッ、ジュワァ……!
瞬間。
竜王の瞳孔が、極限まで開いた。
「――っ!?」
脳髄を直接殴打されたような衝撃。
唐揚げの肉汁(脂)と、この白い物体の油分が混ざり合い、口の中で爆発的なコクを生み出している。
だが、クドくはない。
微かな酸味が後味を引き締め、卵黄のまろやかさが全てを包み込む。
美味い。
理屈抜きに、暴力的で、罪深い味がする。
「な、なんなのコレぇぇぇぇッ!?」
シルヴィアが絶叫した。
「美味しい! 美味すぎるわ! さっきまでの唐揚げが『平民』だとしたら、これは『皇帝』よ! 脂に脂を足してるのに、どうしてこんなに止まらないの!?」
「それは『マヨネーズ』だ。卵と酢と油を乳化させた、カロリー爆弾だ」
龍魔呂が淡々と告げる。
マヨネーズ。
それは、淡白な食材を御馳走に変え、こってりした食材をさらに凶悪な兵器に変える、禁断の調味料。
「マヨネーズ……! なんて恐ろしい響き……!」
シルヴィアの手が止まらなくなった。
次々と唐揚げにマヨネーズをかけ、貪り食う。
ブチュッ、パクッ。ブチュッ、パクッ。
「あぁん♡ この酸味がたまらない! ビール! ビール持ってきてぇ!」
ゴキュ、ゴキュ、プハァッ!
マヨネーズの濃厚な後味を、冷えたビールで洗い流す快感。
無限ループが完成してしまった。
「ちょっとシルヴィア、私にも貸しなさいよ」
我慢できなくなったラスティアがボトルを奪い取る。
彼女は、付け合わせの「野菜スティック(キュウリとニンジン)」にマヨネーズをたっぷりとつけた。
ポリッ。
「……ッ! 理解不能! ただの野菜が、メインディッシュに昇格したわ!」
ラスティアも陥落した。
シャキシャキの野菜とマヨネーズの相性は、人類が生み出した奇跡の一つだ。
「返してよ! それは私のよ!」
「うるさいわね、共有財産でしょう!」
ボトルを巡って争う魔王と竜王。
その横で、女神ルチアナがこっそりと「マヨご飯」を作って食べていた。
そんな中、シルヴィアがハッと動きを止めた。
「待って……。龍魔呂、これ『カロリー爆弾』って言ったわよね?」
「あぁ。大さじ一杯でごはん茶碗半分くらいのカロリーがあるぞ」
「……は?」
シルヴィアの顔が青ざめた。
彼女は今、ボトルの半分近くを消費している。
竜の姿ならいくら食べても問題ないが、今は人型(ナイスバディ)を取っている。このままでは、竜王としての威厳あるプロポーションが崩壊し、「ぽっちゃり竜王」になってしまう。
「い、嫌ぁぁぁぁッ! 私のくびれがぁぁぁ!」
シルヴィアが悲鳴を上げ、パチンと指を鳴らした。
「『時間巻き戻し(リワインド)』!」
世界が歪む。
シルヴィアの胃袋の中身と、摂取したカロリーの時間が「食べる前」まで巻き戻る。
彼女のお腹はぺたんこに戻った。
「ふぅ……危ない危ない。無かったことになったわ」
シルヴィアが冷や汗を拭う。
そして、空になった皿を見て、ニッコリと笑った。
「さて、お腹も空いたし、もう一回唐揚げ(マヨ増し)食べようかしら♡」
「……おい」
龍魔呂が、空になったマヨネーズのボトルを指さした。
「てめぇの腹の時間は戻ったかもしれねぇが、俺の店の『マヨネーズの在庫』は戻ってねぇぞ」
「えっ?」
「食ったもんは食ったんだ。カロリーは消せても、代金は消えねぇよ」
龍魔呂の背後に、ネギオが音もなく出現した。
手には、マヨネーズ一本分の追加料金と、唐揚げの再注文伝票が握られている。
「竜王様。当店のマヨネーズは『地球産・特級品』のため、一本あたり金貨2枚となります」
「た、高いぃぃぃ!?」
「嫌なら食うな。……それとも、皿洗いでもしてくか?」
龍魔呂が包丁を光らせる。
シルヴィアは涙目で財布(異空間収納)を開いた。
「払うわよ! 払えばいいんでしょ! ……だから、もう一本新品のマヨネーズちょうだい! 次は指につけて舐めるから!」
「……チッ。マヨラーかよ」
結局、その夜だけでマヨネーズが5本消費された。
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