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第二章 神、魔王、竜王の飲み会
EP 10
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第1回『鬼灯』反省会 ~シメのラーメンを添えて~
「……おい」
深夜2時。
狂乱の飲み放題タイムが終了し、静寂が戻った小料理屋『鬼灯』。
そのカウンターの前で、四人の美女が一列に並んで正座させられていた。
左から、エルフ王女ルナ。女神ルチアナ。魔王ラスティア。竜王シルヴィア。
世界の支配者層が、畳の上で小さくなっている光景は、歴史の教科書に載せればページが発火するレベルの異常事態だ。
「……てめぇら、自分が何したか分かってんだよな?」
龍魔呂は腕を組み、仁王立ちで彼女たちを見下ろした。
その背後には、赤黒い闘気ではなく、もっとドス黒い「経営者の怒り」が渦巻いている。
「は、はい……」
四人が蚊の鳴くような声で答える。
龍魔呂は電子ボードを弾き、ネギオが集計した『損害報告書』を読み上げた。
「まずルチアナ。てめぇ、酔って『神気』を垂れ流したな? おかげで店内の植物(観葉植物)が異常成長してジャングルになりかけたぞ。剪定の手間を考えろ」
「うぅ……ごめんなさい。楽しかったからつい……」
「次、ラスティア。てめぇは製氷機の構造を解析しようとして、分解魔法をかけようとしたな? アレは精密機械だ。魔力干渉で基盤が焼けたらどうすんだ」
「……知的好奇心には抗えなかったの。弁償するわ(オリハルコンで)」
「次、シルヴィア。てめぇが一番重罪だ。閉店時間を勝手に3回も巻き戻しやがって。俺の労働時間が90分×3で、4時間半も増えたんだぞ。労基署(ろうき)があったら訴えるレベルだ」
「だってぇ……帰りたくなかったんだもん。龍魔呂と一緒にいたかったのよぉ……」
シルヴィアが上目遣いで甘えるが、龍魔呂は冷徹に無視した。
そして最後。
「ルナ」
「は、はいっ! 私は……私は何も壊してません! ただ、皆さんに愛想を振りまいて、可愛く接客してました!」
ルナが胸を張って言い訳をする。
だが、その瞬間。
スパーンッ!!
ネギオの右腕(ハリセン形態)が、ルナの後頭部を綺麗に叩いた。
「あだっ!?」
「報告しますマスター。姫様は接客中にビールジョッキを計5個粉砕。さらに、酔った勢いで『私のとっておきの魔法を見せてあげる』と言って、店内で花火魔法を起動しかけました。未遂ですが、ギルティです」
「うぅ~! ネギオの裏切り者ぉ~!」
龍魔呂は深くため息をついた。
どいつもこいつも、加減というものを知らない。
これでは体がいくつあっても足りない。
「……はぁ。説教は終わりだ」
龍魔呂は厨房へと戻った。
四人が顔を見合わせる。
「あ、あれ? 許してくれたの?」
「意外と優しいのね……」
だが、龍魔呂が始めたのは片付けではなかった。
寸胴鍋に湯を沸かし、別の小鍋でスープを温め始めたのだ。
漂ってくるのは、醤油と鶏ガラ、そして魚介の混じり合った、何とも言えない懐かしい香り。
飲んだ後の荒れた胃袋を優しく刺激する、あの匂い。
「……いい匂い」
「これって……?」
龍魔呂は湯切りをした麺を丼に入れ、熱々のスープを注ぐ。
具材はシンプルに。チャーシュー(自家製)、メンマ、ネギ、そしてナルト。
最後に黒胡椒をパラリ。
「ほらよ。……『シメのラーメン』だ」
ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ。
四人の前に置かれた、湯気を立てる醤油ラーメン。
『地球ショッピング』で購入した業務用スープと生麺だが、龍魔呂のチャーシューがそれを極上の一品に昇華させている。
「シメの……ラーメン?」
「飲んだ後は、これを食って終わる。それが俺の流儀だ。……食え」
四人は恐る恐る箸を手に取り、麺を啜った。
ズズズッ……。
「――んっ!」
ルチアナが目を見開いた。
醤油の塩気が、アルコールで麻痺した味覚に染み渡る。
ツルツルとした麺の喉越し。
そして、とろけるようなチャーシューの脂。
「お、美味しい……! 何これ、五臓六腑に染み渡るわ……!」
「さっきまでお腹いっぱいだったのに、スルスル入るわね……不思議な魔力だわ」
「このスープ……泳げるわね。私、このスープの海で暮らしたい……」
「はふはふっ! 龍魔呂さんの味がしますぅ~!」
四人は夢中で麺を啜った。
ズルズル、ハフハフ。
世界の美女たちが、なりふり構わずラーメンを食らう音だけが響く。
龍魔呂は、その様子を腕組みして眺めながら、ポケットから角砂糖を取り出した。
ガリッ。
口の中に広がる甘さが、一日の疲れを溶かしていく。
(……まあ、賑やかなのは悪くねぇか)
かつて、地下闘技場で孤独に戦っていた日々。
弟を失い、復讐鬼として生きてきた日々。
それらに比べれば、この騒がしくも温かい地獄(カオス)は、随分とマシな場所に思えた。
「……ごちそうさま!」
「美味しかったわ……」
スープまで飲み干し、四人が満足げに息を吐く。
その顔には、もう反省の色はない。あるのは満腹感と幸福感だけだ。
龍魔呂は、空になった丼を回収しながらボソリと言った。
「……明日も店を開ける。手伝う気があるなら、置いてやってもしゃーねぇぞ」
それは、彼なりの最大限のデレ(妥協)だった。
四人の美女たちの顔が、パァッと輝く。
「本当!? やったぁ! 私、看板娘やるわ!」
「私は経理と品質管理を担当するわね」
「私は用心棒兼、残飯処理係よ!」
「私はぁ……龍魔呂さんのお嫁さん係ですぅ!」
「……嫁はいらねぇ。皿洗え」
わっと笑い声が上がる。
小料理屋『鬼灯』。
そこは、異世界で最も危険で、最も美味い料理を出す店。
元・処刑人の店主と、規格外の美女たちが織りなすドタバタ劇は、まだ始まったばかりだ。
次はどんなトラブル(食材)が舞い込んでくるのか。
龍魔呂は夜空を見上げ、ニヤリと笑った。
「……さあて、明日の仕込みをするか」
「……おい」
深夜2時。
狂乱の飲み放題タイムが終了し、静寂が戻った小料理屋『鬼灯』。
そのカウンターの前で、四人の美女が一列に並んで正座させられていた。
左から、エルフ王女ルナ。女神ルチアナ。魔王ラスティア。竜王シルヴィア。
世界の支配者層が、畳の上で小さくなっている光景は、歴史の教科書に載せればページが発火するレベルの異常事態だ。
「……てめぇら、自分が何したか分かってんだよな?」
龍魔呂は腕を組み、仁王立ちで彼女たちを見下ろした。
その背後には、赤黒い闘気ではなく、もっとドス黒い「経営者の怒り」が渦巻いている。
「は、はい……」
四人が蚊の鳴くような声で答える。
龍魔呂は電子ボードを弾き、ネギオが集計した『損害報告書』を読み上げた。
「まずルチアナ。てめぇ、酔って『神気』を垂れ流したな? おかげで店内の植物(観葉植物)が異常成長してジャングルになりかけたぞ。剪定の手間を考えろ」
「うぅ……ごめんなさい。楽しかったからつい……」
「次、ラスティア。てめぇは製氷機の構造を解析しようとして、分解魔法をかけようとしたな? アレは精密機械だ。魔力干渉で基盤が焼けたらどうすんだ」
「……知的好奇心には抗えなかったの。弁償するわ(オリハルコンで)」
「次、シルヴィア。てめぇが一番重罪だ。閉店時間を勝手に3回も巻き戻しやがって。俺の労働時間が90分×3で、4時間半も増えたんだぞ。労基署(ろうき)があったら訴えるレベルだ」
「だってぇ……帰りたくなかったんだもん。龍魔呂と一緒にいたかったのよぉ……」
シルヴィアが上目遣いで甘えるが、龍魔呂は冷徹に無視した。
そして最後。
「ルナ」
「は、はいっ! 私は……私は何も壊してません! ただ、皆さんに愛想を振りまいて、可愛く接客してました!」
ルナが胸を張って言い訳をする。
だが、その瞬間。
スパーンッ!!
ネギオの右腕(ハリセン形態)が、ルナの後頭部を綺麗に叩いた。
「あだっ!?」
「報告しますマスター。姫様は接客中にビールジョッキを計5個粉砕。さらに、酔った勢いで『私のとっておきの魔法を見せてあげる』と言って、店内で花火魔法を起動しかけました。未遂ですが、ギルティです」
「うぅ~! ネギオの裏切り者ぉ~!」
龍魔呂は深くため息をついた。
どいつもこいつも、加減というものを知らない。
これでは体がいくつあっても足りない。
「……はぁ。説教は終わりだ」
龍魔呂は厨房へと戻った。
四人が顔を見合わせる。
「あ、あれ? 許してくれたの?」
「意外と優しいのね……」
だが、龍魔呂が始めたのは片付けではなかった。
寸胴鍋に湯を沸かし、別の小鍋でスープを温め始めたのだ。
漂ってくるのは、醤油と鶏ガラ、そして魚介の混じり合った、何とも言えない懐かしい香り。
飲んだ後の荒れた胃袋を優しく刺激する、あの匂い。
「……いい匂い」
「これって……?」
龍魔呂は湯切りをした麺を丼に入れ、熱々のスープを注ぐ。
具材はシンプルに。チャーシュー(自家製)、メンマ、ネギ、そしてナルト。
最後に黒胡椒をパラリ。
「ほらよ。……『シメのラーメン』だ」
ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ。
四人の前に置かれた、湯気を立てる醤油ラーメン。
『地球ショッピング』で購入した業務用スープと生麺だが、龍魔呂のチャーシューがそれを極上の一品に昇華させている。
「シメの……ラーメン?」
「飲んだ後は、これを食って終わる。それが俺の流儀だ。……食え」
四人は恐る恐る箸を手に取り、麺を啜った。
ズズズッ……。
「――んっ!」
ルチアナが目を見開いた。
醤油の塩気が、アルコールで麻痺した味覚に染み渡る。
ツルツルとした麺の喉越し。
そして、とろけるようなチャーシューの脂。
「お、美味しい……! 何これ、五臓六腑に染み渡るわ……!」
「さっきまでお腹いっぱいだったのに、スルスル入るわね……不思議な魔力だわ」
「このスープ……泳げるわね。私、このスープの海で暮らしたい……」
「はふはふっ! 龍魔呂さんの味がしますぅ~!」
四人は夢中で麺を啜った。
ズルズル、ハフハフ。
世界の美女たちが、なりふり構わずラーメンを食らう音だけが響く。
龍魔呂は、その様子を腕組みして眺めながら、ポケットから角砂糖を取り出した。
ガリッ。
口の中に広がる甘さが、一日の疲れを溶かしていく。
(……まあ、賑やかなのは悪くねぇか)
かつて、地下闘技場で孤独に戦っていた日々。
弟を失い、復讐鬼として生きてきた日々。
それらに比べれば、この騒がしくも温かい地獄(カオス)は、随分とマシな場所に思えた。
「……ごちそうさま!」
「美味しかったわ……」
スープまで飲み干し、四人が満足げに息を吐く。
その顔には、もう反省の色はない。あるのは満腹感と幸福感だけだ。
龍魔呂は、空になった丼を回収しながらボソリと言った。
「……明日も店を開ける。手伝う気があるなら、置いてやってもしゃーねぇぞ」
それは、彼なりの最大限のデレ(妥協)だった。
四人の美女たちの顔が、パァッと輝く。
「本当!? やったぁ! 私、看板娘やるわ!」
「私は経理と品質管理を担当するわね」
「私は用心棒兼、残飯処理係よ!」
「私はぁ……龍魔呂さんのお嫁さん係ですぅ!」
「……嫁はいらねぇ。皿洗え」
わっと笑い声が上がる。
小料理屋『鬼灯』。
そこは、異世界で最も危険で、最も美味い料理を出す店。
元・処刑人の店主と、規格外の美女たちが織りなすドタバタ劇は、まだ始まったばかりだ。
次はどんなトラブル(食材)が舞い込んでくるのか。
龍魔呂は夜空を見上げ、ニヤリと笑った。
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