真!異世界転生×ユニークスキル 【ネット通販】で無双する!?

月神世一

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赤子の勇者

EP 8

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(お休み、母ちゃん……)
マーサが心地よい寝息を立て始めたのを確認し、リアン(中身25歳)は、乳母車に同乗させられている相棒へと意識を集中させた。
(センチネル……起動)
カチリ、と胡桃割り人形の目が、微かな魔力の光を帯びる。
公園の広場では、リアンより少し年上の子供たちが、何やら機械仕掛けの人形のようなもので遊んでいた。
「行け! 鋼鉄(こうてつ)の拳!」
「こっちだ! 高速機動!」
(あれが父さんが言ってた『マグナギア』か……? 人形同士を戦わせてるのか。……確かに、面白そうだ。だが)
リアンの視線は、もっと現実的な「獲物」を捉えていた。
広場の隅、ベンチの下。泥に半分埋もれているが、間違いない。銅色の輝き。
(……今回の本命は、こっちだ)
リアンの厳命が飛ぶ。
(センチネル。アレだ。アレを持ってくるんだ)
センチネルは、マーサを起こさないよう、音を立てずに乳母車から滑り降りた。0歳の赤ん坊が操るにはあまりに精密な魔力制御で、木製の足が芝生の上を「こそこそ」と進んでいく。
リアンは息を詰めて見守った。これが、彼の初めての「仕入れ」だった。
センチネルはベンチの下に到達すると、その小さな木の手で、器用に泥の中の輝きをつまみ上げた。
一枚、二枚……そして三枚。
(よし!)
センチネルは、その3枚の銅貨を、自身の軍服の(装飾だと思われていた)ポケットにしっかりと収納した。
(よし、良くやった! 帰ってこい、センチネル!)
センチネルは再び音もなく乳母車に戻り、元の「ただの人形」のポーズに戻った。
全てが完了したのと、マーサが「ふぁ……」と目を覚ましたのは、ほぼ同時だった。
「あら、やだわ。私ったら、すっかり寝ちゃって……。もう夕飯の支度もあるのに。帰りましょうね、リアン」
マーサが慌てて乳母車を押し始める。
「キャッキャッ!」
(おうよ! 速く帰って、今日の『仕入れ(銅貨)』の確認だ!)
その夜。
シンフォニア家が寝静まり、子供部屋が静寂に包まれた頃。
リアンはベッドの中から、センチネルに命令を下していた。
センチネルは、昼間手に入れた銅貨3枚をポケットから取り出すと、リアンの眼前に浮かぶ「ネット通販」の電子ボードに、そっと触れさせた。
銅貨は光の粒子となってボードに吸い込まれる。
【G残高: 300 G】
(やった……!)
リアンは内心で拳を握った。
(1銅貨=100円換算なら、300円か。コーヒーを買うにはまだ足りないが……)
前世の簿記1級の血が騒ぐ。
(無駄遣いは出来ねぇが、このスキルが本当に『購入』まで機能するかどうか、試さねぇとな。これは必要な初期投資だ)
リアンはセンチネルを使い、「JPY残高(300 JPY)」を使って検索・購入を実行させた。
彼が選んだのは、「100円ナイフ」。前世のホームセンターで売っていたような、安価な小型の万能ナイフだ。
【購入しますか?: 100 JPY】
(実行だ、センチネル)
センチネルが「購入」ボタンを押した直後。
ボードがわずかに強く発光し、リアンのベッドの横に、カシャン、と小さな金属音が響いた。
間違いなく、地球の大量生産品であるナイフが、そこに「転送」されていた。
(よし……! これで、センチネルの武装に出来る)
センチネルは、その小さな体でナイフを拾い上げると、よちよちと歩き、部屋の隅にあるクローゼットの、そのわずかな隙間の下に、ナイフを滑り込ませて隠した。
(これで俺の『手』は、ただの人形じゃなく、武器を持った衛兵(センチネル)になった)
リアン(0歳)は、異世界での確かな一歩を、誰にも知られず踏み出したのだった。
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