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赤子の勇者
完
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シンフォニア家に、温かな光と甘い匂いが満ちていた。
リアン・シンフォニアの、1歳の誕生日会が始まったのだ。
「「「誕生日おめでとう! リアン!」」」
マーサとオニヒメが腕によりをかけて作った特製ケーキ。その上に立てられた1本のロウソクに、マーサが火を灯す。
アークスとマーサ、そしてオニヒメが、ハイチェアに座るリアンを囲んで歌う。
「ふぅー!」
家族の喝采を一身に浴びながら、ロウソクの火を消したのは――なぜか父アークスだった。
「パパ!」
「だぁ!」
リアンは、この一年で覚えた単語と、抗議の「だぁ!」(お前が消すのかよ!)を組み合わせて叫んだ。
「ははは! 悪い悪い! よぉし、1歳おめでとう、リアン!」
アークスは豪快に笑い飛ばす。
「もうリアンも1歳かぁ。早いもんだなぁ」
「えぇ、本当ね。もう、こんなに速くハイハイだって出来るのよ」
マーサが、感慨深げにリアンの頭を撫でる。
「だぁっ!」
リアンは胸を張った。(おうよ! オニヒメの完璧な監視網をかいくぐる為に、ハイハイの機動力を習得するのにどれだけ頑張ったか!)
「よぉし! そんな頑張り屋の息子に、父ちゃんからのプレゼントだ!」
アークスが、得意満面で大きな箱を差し出した。
中に入っていたのは、子供服でも、木のおもちゃでもない。
鈍い光を放つ、精巧な人形――「マグナギア」の素体(コア・フレーム)と、無数の「改造パーツキット」だった。
「まぁ! 貴方ったら!」
マーサが、さすがに呆れたようにアークスを諌める。
「まだリアンには早いわ! こんな複雑なもの!」
「いやあ、いいんだよ、マーサ! 触らせるだけなら! 男はなぁ、幼い頃から本物のギアに触れて育つんだ!」
だが、マーサの心配をよそに、プレゼントを見たリアンは、これまでにないほど目を輝かせ、興奮のあまりハイチェアの上で手足をバタつかせた。
「パパ! だぁ!」
(よっしゃあああ! 念願の公式マグナギアだ! しかも改造パーツ付き! これでセンチネル(胡桃割り人形)の強度不足から解放される! カスタム出来るぜ!)
「おお! 見ろマーサ! リアンも喜んでるぞ!」
「……もう。貴方もリアンも、男の子って……」
マーサは呆れながらも、幸せそうに微笑んだ。
アークスは、息子のリアンを力強く抱き上げる。
「どんどん大きくなるんだぞ、リアン!」
マーサも、その二人に寄り添う。
「えぇ。貴方は、私達の希望なんだから」
「だぁ!」
(ありがとうよ、父ちゃん、母ちゃん!)
リアン(中身25歳)は、この世界に来て初めて、心の底からの「赤ん坊の笑顔」を、二人に向けた。
「さぁ、皆様。ケーキが冷めてしまいます。お食べ(おめしあがり)ください」
オニヒメが、完璧なタイミングで切り分けたケーキを差し出す。
「そうね、食べましょう!」
「おお、美味そうだ!」
リアン・シンフォニア(1歳)。
その手には、まだ魔力も通っていない、冷たいマグナギアの素体が、固く握りしめられていた。
第一章 0歳児の勇者 完
リアン・シンフォニアの、1歳の誕生日会が始まったのだ。
「「「誕生日おめでとう! リアン!」」」
マーサとオニヒメが腕によりをかけて作った特製ケーキ。その上に立てられた1本のロウソクに、マーサが火を灯す。
アークスとマーサ、そしてオニヒメが、ハイチェアに座るリアンを囲んで歌う。
「ふぅー!」
家族の喝采を一身に浴びながら、ロウソクの火を消したのは――なぜか父アークスだった。
「パパ!」
「だぁ!」
リアンは、この一年で覚えた単語と、抗議の「だぁ!」(お前が消すのかよ!)を組み合わせて叫んだ。
「ははは! 悪い悪い! よぉし、1歳おめでとう、リアン!」
アークスは豪快に笑い飛ばす。
「もうリアンも1歳かぁ。早いもんだなぁ」
「えぇ、本当ね。もう、こんなに速くハイハイだって出来るのよ」
マーサが、感慨深げにリアンの頭を撫でる。
「だぁっ!」
リアンは胸を張った。(おうよ! オニヒメの完璧な監視網をかいくぐる為に、ハイハイの機動力を習得するのにどれだけ頑張ったか!)
「よぉし! そんな頑張り屋の息子に、父ちゃんからのプレゼントだ!」
アークスが、得意満面で大きな箱を差し出した。
中に入っていたのは、子供服でも、木のおもちゃでもない。
鈍い光を放つ、精巧な人形――「マグナギア」の素体(コア・フレーム)と、無数の「改造パーツキット」だった。
「まぁ! 貴方ったら!」
マーサが、さすがに呆れたようにアークスを諌める。
「まだリアンには早いわ! こんな複雑なもの!」
「いやあ、いいんだよ、マーサ! 触らせるだけなら! 男はなぁ、幼い頃から本物のギアに触れて育つんだ!」
だが、マーサの心配をよそに、プレゼントを見たリアンは、これまでにないほど目を輝かせ、興奮のあまりハイチェアの上で手足をバタつかせた。
「パパ! だぁ!」
(よっしゃあああ! 念願の公式マグナギアだ! しかも改造パーツ付き! これでセンチネル(胡桃割り人形)の強度不足から解放される! カスタム出来るぜ!)
「おお! 見ろマーサ! リアンも喜んでるぞ!」
「……もう。貴方もリアンも、男の子って……」
マーサは呆れながらも、幸せそうに微笑んだ。
アークスは、息子のリアンを力強く抱き上げる。
「どんどん大きくなるんだぞ、リアン!」
マーサも、その二人に寄り添う。
「えぇ。貴方は、私達の希望なんだから」
「だぁ!」
(ありがとうよ、父ちゃん、母ちゃん!)
リアン(中身25歳)は、この世界に来て初めて、心の底からの「赤ん坊の笑顔」を、二人に向けた。
「さぁ、皆様。ケーキが冷めてしまいます。お食べ(おめしあがり)ください」
オニヒメが、完璧なタイミングで切り分けたケーキを差し出す。
「そうね、食べましょう!」
「おお、美味そうだ!」
リアン・シンフォニア(1歳)。
その手には、まだ魔力も通っていない、冷たいマグナギアの素体が、固く握りしめられていた。
第一章 0歳児の勇者 完
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