真！異世界転生×ユニークスキル 【ネット通販】で無双する！？

１歳児の勇者

EP 14

小さな処刑人たち
深夜の子供部屋。
リアン（1歳）は、ベビーベッドの中でイヤホンを耳に押し当て、屋根裏に設置した受信機からの音声に聞き入っていた。
（……父さんはリハビリか。だが、あの性格だ。少しでも動けるようになれば、無理をしてでも現場に戻るだろう）
リアンの目が、暗闇の中で冷たく光る。
（……戦わさせない。父さんが完治するまでは、俺が戦場を管理（コントロール）する）
ノイズ混じりの音声が、決定的な情報を拾った。
『……偵察部隊からの報告だ。森の北、古井戸の近くにオークの根城を確認……数は5体……』
『……明朝、討伐隊を……』
（……リーク（情報）確認。森の北、オークの根城か。……よし）
リアンはイヤホンを外すと、即座に行動を開始した。
（明朝じゃ遅い。今夜中に「処理」する）
「……センチネル」
意識を転送（ダイブ）。
カチリ。
センチネルの目に光が宿る。
（弓丸、騎士丸、竜丸。行くぞ！ 「掃除」の時間だ）
センチネル、弓丸、騎士丸の3機は、手際よく竜丸のキャリアに乗り込んだ。
（発進！）
竜丸は音もなく翼を広げ、子供部屋の窓から滑るように飛び立った。
森の北 オークの根城
月明かりも届かない深い森の中。
竜丸は、オークたちの根城を見下ろす高い木の枝に、音もなく着地した。
眼下には、焚き火を囲んで泥のように眠るオークたちの姿があった。
その巨体は、30センチのマグナギアと比べれば、山のような大きさだ。
（……数は5体か。起きれば脅威だが）
センチネル（リアン）は、冷徹に見下ろした。
（……関係ねぇ。寝てりゃ、ただの肉塊だ）
（行くぞ）
弓丸と騎士丸が、枝からロープを垂らし、スルスルと降下していく。
地面に降り立つと、枯れ枝一つ踏まない繊細な動きで、眠るオークたちに忍び寄った。
最初のターゲットは、見張り役とおぼしき（しかし眠っている）オーク。
弓丸が、背負っていた「注射器」を構える。中身は、ネット通販で購入した「強力睡眠導入剤」と、騎士団から拝借した「麻痺毒」のカクテルだ。
ブスリ。
太い首筋に針が突き刺さる。
「グゥ……？」
オークが一瞬呻いたが、即効性の毒が回り、より深い昏睡へと落ちていく。
（……よし、落ちた）
センチネルの合図で、騎士丸が動く。
騎士丸は、深く眠り抵抗できなくなったオークの首元に、研ぎ澄まされた片手剣をあてがった。
ザシュッ。
躊躇いなく、頸動脈を斬り裂く。
オークは声も上げず、ただビクンと一度痙攣し、絶命した。
（……よし。次だ）
それは「戦闘」ではなかった。「作業」だった。
弓丸が眠りを深め、騎士丸が命を断つ。
1歳児の操る人形たちは、淡々と、そして無慈悲に仕事を遂行していく。
2体目、3体目……。
やがて、焚き火の周りには、物言わぬ5つの死体が転がっていた。
（……よし。オーク達は全員、死体になった）
センチネルが状況を確認し、撤収を命じようとした、その時。
ガサッ……グルルルル……。
茂みの奥から、複数の光る目が現れた。
「ボアウルフ」だ。イノシシの突進力と狼の獰猛さを併せ持つ、森の掃獣（そうじゅう）。
（……ん？）
センチネルたちは、即座に木の上へと退避した。
ボアウルフたちは、オークの流した大量の血の匂いに惹かれて集まってきたのだ。彼らは涎を垂らし、新鮮な肉（オークの死体）へと群がっていく。
（……血の匂いを嗅ぎつけたか）
センチネル（リアン）は、その光景を見て、むしろ好都合だと判断した。
（……食わせろ。ボアウルフに食い荒らされていれば、死因が「人形による暗殺」だとはバレない。「魔獣同士の縄張り争い」か「共食い」として処理されるだろう）
（言い訳（アリバイ）工作の手間が省けたな）
センチネルたちは、ボアウルフたちが死体に夢中になっている間に、竜丸に乗って静かに上昇した。
誰にも知られることなく、ルナハンの脅威を排除した小さな影たちは、再び闇へと消えていった。