10 / 14
EP 10
しおりを挟む
宴(うたげ)はファミレスで
「いらっしゃいませ! 『タロウキング』へようこそ! ……ひっ、T-SWAT!?」
店員の怯えた声を背に、俺たちはボックス席へと雪崩れ込んだ。
激闘の後のファミレス。
漂うハンバーグの焦げた匂いと、甘いデザートの香りが、張り詰めた神経を緩ませる。
「隊長! 勝利の宴だよね! もちろん隊長の奢りで!」
「俺様は『メガ・ティラノ・ステーキ(400g)』を5枚いくぞ!」
キャルルとイグニスがメニュー表を奪い合うように見ている。
俺はドカッとソファに腰を下ろし、やれやれと息を吐いた。
「……好きにしろ。今回は特別ボーナスも出るはずだ」
俺が水を一口飲んだ、その時だった。
「わーい! じゃあ遠慮なく呼ぶね! ……みんなー、こっちこっち!」
キャルルが入り口に向かって手を振る。
そこには、見慣れない……いや、見覚えのある顔ぶれが立っていた。
「……は?」
最初にトテトテと小走りでやってきたのは、貧乏オーラを全身から放つ美少女、リーザ。
続いて、ふわりとした足取りで、周囲の観葉植物を異常成長させながら歩くエルフ、ルナ。
そして、戦闘でドレスが破れたままのリベラも、涼しい顔で席に着こうとしている。
「キャルルちゃんから『隊長の奢りで食べ放題』って聞いたので……! ご馳走になります!」
リーザが涙目で俺の手を握りしめ、深々と頭を下げる。
「あらあら、ここがタローキング? 賑やかで素敵な場所ね。……あ、観葉植物さんが『お水欲しい』って言ってるわ(魔法を発動しかける)」
ルナが天然発言と共に、店内にジャングル化の危機をもたらす。
「ま、たまにはファミレスの食事も悪く無いですわね。……席が狭いですわよ、イグニス」
リベラが優雅に脚を組み、当然のように合流した。
「おいキャルル。……これはどういうことだ」
「えへへ、シェアハウスの友達を呼んだんです! 隊長の奢りって言ったら、みんな飛んできました!」
キャルルが悪びれもせずピースサインをする。
俺の額に冷や汗が流れた。
(……待て。計算しろ)
俺はテーブルの下で、こっそりと財布を開いた。
中に入っているのは、今月の残金と、パチンコで負けて残った小銭のみ。
太郎からのボーナスは「後日支給」だ。
(イグニスのステーキ5枚。キャルルのパフェ。リーザの飢餓状態を考えれば底なし。ルナも意外と食うだろう。そしてリベラ……)
俺の脳内で、レジの金額表示が高速でカウントアップされていく。
そして、その合計額は、俺の所持金を軽くオーバーしていた。
(安月給だ……このままでは足りない……!)
最悪の光景が脳裏をよぎる。
翌朝の『太郎新聞』の一面記事だ。
『正義の味方T-SWAT隊長、無銭飲食で現行犯逮捕!』
『食い逃げの代償は懲役刑? 国王も「遺憾の意」を表明』
(……笑えない冗談だ。元SWAT隊長が、ハンバーグ代で社会的に死ぬだと?)
俺が顔面蒼白で財布を握りしめていると、横からスッと白い手が伸びてきた。
リベラだ。
彼女は俺の財布を優しく閉じさせると、胸元から一枚のカード――ゴルド商会発行の『ブラックカード(ツケ払い証)』を取り出した。
「……鮫島隊長。顔色が優れませんわよ?」
「……いや、少し貧血気味でな」
「ふふっ。今日のところは、私が持ちますわ。……事務所を守っていただいたお礼です。経費で落としますから、お気になさらず」
リベラはウィンクしてみせた。
……後光が見えた。ルチアナよりよっぽど女神に見える。
「……悪いな。出世払いで返す」
「ええ、期待しておりますわ」
「よっしゃあ! 注文だ!」
「すみませーん! 『王様ハンバーグ』10個と、ドリンクバーと、ライス大盛りで!」
「私は『季節のフルーツパフェ・マウンテン』!」
「わ、私は……パンの耳以外なら何でも……あ、オムライス大盛りで……!」
「私は『大豆ミートのオーガニック御膳』を。あと、お水に魔力を込めて……」
テーブルの上は瞬く間に料理で埋め尽くされた。
イグニスが肉を食らい、キャルルがクリームを頬張り、リーザがオムライスを泣きながら掻き込む。
ルナがサラダバーの野菜に話しかけようとして、リベラに止められている。
カオスだ。
だが、騒がしくも温かい空気がそこにはあった。
俺は食後のコーヒーを啜りながら、窓の外を見た。
ナンバーズの幹部、No.1は倒した。
だが、組織のトップであるNo.0――ギアン・アルバードはまだ健在だ。
それに、No.2からNo.5までの能力者たちも潜んでいる。
戦いはこれから激化するだろう。
だが、今の俺には「武器」がある。
Korthだけじゃない。
この食い意地の張った、頼もしい部下たちと、奇妙な友人たちがいる。
「隊長ー! ドリンクバーの『メロンソーダ』って魔法の薬ですか!? シュワシュワします!」
リーザが興奮して話しかけてくる。
「……ただの炭酸だ。飲み過ぎると腹壊すぞ」
俺は苦笑し、最後の一口を飲み干した。
ポケットの赤マルに触れる。ここは禁煙席だ。外で一服するとしよう。
「ご馳走様でした! ……さて、帰るか」
「「「ご馳走様でしたー!!」」」
店中に響く声。
俺は席を立ち、騒がしい連中を引き連れて自動ドアをくぐった。
夜風が心地よい。
俺はライターに火をつけ、紫煙を夜空に吐き出した。
「……ま、悪くない職場だ」
タバコの煙の向こうで、ネオンサインが輝いている。
俺たちの「異世界警察24時」は、まだ始まったばかりだ。
「いらっしゃいませ! 『タロウキング』へようこそ! ……ひっ、T-SWAT!?」
店員の怯えた声を背に、俺たちはボックス席へと雪崩れ込んだ。
激闘の後のファミレス。
漂うハンバーグの焦げた匂いと、甘いデザートの香りが、張り詰めた神経を緩ませる。
「隊長! 勝利の宴だよね! もちろん隊長の奢りで!」
「俺様は『メガ・ティラノ・ステーキ(400g)』を5枚いくぞ!」
キャルルとイグニスがメニュー表を奪い合うように見ている。
俺はドカッとソファに腰を下ろし、やれやれと息を吐いた。
「……好きにしろ。今回は特別ボーナスも出るはずだ」
俺が水を一口飲んだ、その時だった。
「わーい! じゃあ遠慮なく呼ぶね! ……みんなー、こっちこっち!」
キャルルが入り口に向かって手を振る。
そこには、見慣れない……いや、見覚えのある顔ぶれが立っていた。
「……は?」
最初にトテトテと小走りでやってきたのは、貧乏オーラを全身から放つ美少女、リーザ。
続いて、ふわりとした足取りで、周囲の観葉植物を異常成長させながら歩くエルフ、ルナ。
そして、戦闘でドレスが破れたままのリベラも、涼しい顔で席に着こうとしている。
「キャルルちゃんから『隊長の奢りで食べ放題』って聞いたので……! ご馳走になります!」
リーザが涙目で俺の手を握りしめ、深々と頭を下げる。
「あらあら、ここがタローキング? 賑やかで素敵な場所ね。……あ、観葉植物さんが『お水欲しい』って言ってるわ(魔法を発動しかける)」
ルナが天然発言と共に、店内にジャングル化の危機をもたらす。
「ま、たまにはファミレスの食事も悪く無いですわね。……席が狭いですわよ、イグニス」
リベラが優雅に脚を組み、当然のように合流した。
「おいキャルル。……これはどういうことだ」
「えへへ、シェアハウスの友達を呼んだんです! 隊長の奢りって言ったら、みんな飛んできました!」
キャルルが悪びれもせずピースサインをする。
俺の額に冷や汗が流れた。
(……待て。計算しろ)
俺はテーブルの下で、こっそりと財布を開いた。
中に入っているのは、今月の残金と、パチンコで負けて残った小銭のみ。
太郎からのボーナスは「後日支給」だ。
(イグニスのステーキ5枚。キャルルのパフェ。リーザの飢餓状態を考えれば底なし。ルナも意外と食うだろう。そしてリベラ……)
俺の脳内で、レジの金額表示が高速でカウントアップされていく。
そして、その合計額は、俺の所持金を軽くオーバーしていた。
(安月給だ……このままでは足りない……!)
最悪の光景が脳裏をよぎる。
翌朝の『太郎新聞』の一面記事だ。
『正義の味方T-SWAT隊長、無銭飲食で現行犯逮捕!』
『食い逃げの代償は懲役刑? 国王も「遺憾の意」を表明』
(……笑えない冗談だ。元SWAT隊長が、ハンバーグ代で社会的に死ぬだと?)
俺が顔面蒼白で財布を握りしめていると、横からスッと白い手が伸びてきた。
リベラだ。
彼女は俺の財布を優しく閉じさせると、胸元から一枚のカード――ゴルド商会発行の『ブラックカード(ツケ払い証)』を取り出した。
「……鮫島隊長。顔色が優れませんわよ?」
「……いや、少し貧血気味でな」
「ふふっ。今日のところは、私が持ちますわ。……事務所を守っていただいたお礼です。経費で落としますから、お気になさらず」
リベラはウィンクしてみせた。
……後光が見えた。ルチアナよりよっぽど女神に見える。
「……悪いな。出世払いで返す」
「ええ、期待しておりますわ」
「よっしゃあ! 注文だ!」
「すみませーん! 『王様ハンバーグ』10個と、ドリンクバーと、ライス大盛りで!」
「私は『季節のフルーツパフェ・マウンテン』!」
「わ、私は……パンの耳以外なら何でも……あ、オムライス大盛りで……!」
「私は『大豆ミートのオーガニック御膳』を。あと、お水に魔力を込めて……」
テーブルの上は瞬く間に料理で埋め尽くされた。
イグニスが肉を食らい、キャルルがクリームを頬張り、リーザがオムライスを泣きながら掻き込む。
ルナがサラダバーの野菜に話しかけようとして、リベラに止められている。
カオスだ。
だが、騒がしくも温かい空気がそこにはあった。
俺は食後のコーヒーを啜りながら、窓の外を見た。
ナンバーズの幹部、No.1は倒した。
だが、組織のトップであるNo.0――ギアン・アルバードはまだ健在だ。
それに、No.2からNo.5までの能力者たちも潜んでいる。
戦いはこれから激化するだろう。
だが、今の俺には「武器」がある。
Korthだけじゃない。
この食い意地の張った、頼もしい部下たちと、奇妙な友人たちがいる。
「隊長ー! ドリンクバーの『メロンソーダ』って魔法の薬ですか!? シュワシュワします!」
リーザが興奮して話しかけてくる。
「……ただの炭酸だ。飲み過ぎると腹壊すぞ」
俺は苦笑し、最後の一口を飲み干した。
ポケットの赤マルに触れる。ここは禁煙席だ。外で一服するとしよう。
「ご馳走様でした! ……さて、帰るか」
「「「ご馳走様でしたー!!」」」
店中に響く声。
俺は席を立ち、騒がしい連中を引き連れて自動ドアをくぐった。
夜風が心地よい。
俺はライターに火をつけ、紫煙を夜空に吐き出した。
「……ま、悪くない職場だ」
タバコの煙の向こうで、ネオンサインが輝いている。
俺たちの「異世界警察24時」は、まだ始まったばかりだ。
0
あなたにおすすめの小説
『異世界でSWAT隊長になったが、部下が無職のドラゴンと婚活ウサギしか居ない件について〜 裁けぬ悪は、357マグナムとカツ丼で解決します〜』
月神世一
ファンタジー
「魔法? 知らん。閃光弾(フラバン)食らって手錠にかかれ!」元SWAT隊長が挑む、異世界警察24時!
【あらすじ】
元ロス市警SWAT隊員の鮫島勇護は、子供を庇って死んだ……はずが、気がつけば異世界の新興国「太郎国」で、特別機動隊『T-SWAT』の隊長になっていた!
支給されたのは、最強のリボルバー『Korth』と現代タクティカルギア。
魔法障壁? ゴム弾で割る。
詠唱? 閃光弾で黙らせる。
騎士道? 知るか、裏から制圧だ。
圧倒的な実力で凶悪犯を狩る鮫島だったが、彼には致命的な悩みがあった。
――部下がいない。そして、装備の維持費が高すぎて給料がマイナスだ。
安くて強い人材を求めた彼が採用したのは……
「火力が強すぎてクビになった無職のドラゴン」
「婚活資金のために戦う、安全靴を履いたウサギ」
さらには、取調室にカツ丼目当てで現れる貧乏アイドルまで!?
法で裁けぬ悪を、357マグナムとカツ丼で解決する!
ハードボイルド(になりきれない)痛快アクションコメディ、開幕!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる