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第二章 ナンバーズとリセット
EP 7
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盤上の怒り
「……ポーン(歩兵)が、随分と面白い壊れ方をしたものだね」
アルバード侯爵邸、最上階の執務室。
豪奢なシャンデリアの下、No.0ことギアン・アルバードは、高級なベルギー産チョコレートを口に放り込み、カリリと噛み砕いた。
部屋の隅には、泥だらけのドレスを着た少女――No.2ルルシアが体育座りで震えている。
「うぅ……半額シール……貼ってない……高い……」
「豚汁……おかわり……」
彼女の目は虚ろで、焦点が合っていない。
リーザ王女の貧乏スキルをコピーした結果、精神構造(メンタル)が貴族のプライドと衝突し、完全に崩壊(バグ)を起こしていた。
もはや、最強のコピー能力者の面影はない。ただの「食に執着する廃人」だ。
「役立たずめ」
ギアンは冷めた目でルルシアを見下ろすと、手元のチェス盤から「クイーン」の駒を弾き飛ばした。
駒は床に転がり、ルルシアの足元で乾いた音を立てた。
「治療しますか? ボス」
影からぬらりと現れたのは、大商人の姿をしたNo.3、ガームだ。
「必要ない。一度壊れた駒は、リセットするまで元には戻らない。……それより、客人を呼べ」
ギアンが指を鳴らすと、扉が乱暴に蹴破られた。
「あぁん? 俺様を呼んだか、ボス」
入ってきたのは、頭部に包帯を巻き、新しい仮面をつけた大男。
No.1、ヴォルグ。
先日、リベラの事務所で鮫島に頭を撃ち抜かれた破壊者だ。
「ヴォルグ。傷の具合はどうだい?」
「ズキズキ痛むぜ。……あの黒服の野郎に撃たれた穴がな」
ヴォルグは仮面の上から額を抑え、ギリギリと歯ぎしりをした。
対魔破甲弾のダメージは深刻だったが、組織の治癒魔法で無理やり塞いだようだ。
その全身からは、以前よりも増したどす黒い殺意が立ち昇っている。
「許さねぇ……。俺様の顔に傷をつけたあの虫ケラども……。全員、分子レベルで消し飛ばしてやる」
「いいだろう。その怒り、解き放つ許可(ライセンス)を与える」
ギアンは椅子から立ち上がり、窓の外――王都の下町方向を見据えた。
「T-SWAT。……最初はただの道化だと思っていたが、どうやら僕のシナリオを狂わせる『バグ』のようだ」
No.1を撃退し、No.2を精神崩壊させ、No.3の資金源を潰した。
もはや見過ごせるレベルではない。
彼らは、ギアンが描く「完全なる支配」という盤面を覆す可能性を持つ、唯一の不確定要素。
「小細工は終わりだ。……僕たちは『力』で支配する者。ならば、圧倒的な暴力で押し潰すのが礼儀というものだろう」
ギアンはチェス盤の上の「キング」を手に取り、握りつぶした。
「No.1、No.3。そして残りの構成員全員を動員しろ」
「へへっ、やっとかよ。……で、標的は?」
ヴォルグが凶悪に笑う。
ギアンは甘いチョコレートの香りを纏った吐息で、冷酷に告げた。
「今夜、T-SWAT本部を襲撃せよ。……更地にして構わない。一人残らず消せ」
***
同時刻。T-SWAT本部。
「……風が変わったな」
深夜の廃倉庫で、俺は愛銃Korthの手入れをしながら呟いた。
オイルの匂いに混じって、どこか血生臭い風が吹き込んでいる気がする。
「隊長ー! 見て見て! この『えむよん』すごいよ! 300メートル先の空き缶に百発百中!」
キャルルが新しい玩具(M4カービン)を抱きしめてはしゃいでいる。
彼女の動体視力とM4の精度が組み合わされば、もはや移動砲台だ。
「ガハハ! この『ベネリ』ってショットガンも最高だぜ! ドアごと標的を吹き飛ばせる!」
イグニスはベネリM4スーパー90を片手で構え、ポンプアクションを楽しんでいる。
彼の馬鹿力なら、反動などないに等しい。
部下たちは最強の装備を手に入れ、士気は高い。
だが、俺の長年の勘(刑事の勘)が警鐘を鳴らしている。
これは、「終わりの始まり」だと。
「……総員、聞いてくれ」
俺が声をかけると、二人は手を止めてこちらを向いた。
「今夜は帰るな。……来るぞ」
俺はKorthに弾丸を装填し、カチリとシリンダーを戻した。
「ナンバーズが、本気で俺たちを潰しに来る。……遊び(ゲーム)は終わりだ。これからは戦争(ウォー)だ」
緊張が走る。
だが、イグニスもキャルルも、怯える様子はない。
不敵な笑みを浮かべ、それぞれの武器を構えた。
「上等だ。返り討ちにしてやるよ」
「あたしたちの職場(ここ)は壊させない!」
俺はタバコを口にくわえ、ライターの火を灯した。
揺れる炎の向こう側、闇の彼方から、無数の殺意が近づいてくるのを感じた。
「……配置につけ(ポジション)。迎撃戦を開始する」
静寂な夜が破られるまで、あと数分。
T-SWAT本部防衛戦の幕が上がる。
「……ポーン(歩兵)が、随分と面白い壊れ方をしたものだね」
アルバード侯爵邸、最上階の執務室。
豪奢なシャンデリアの下、No.0ことギアン・アルバードは、高級なベルギー産チョコレートを口に放り込み、カリリと噛み砕いた。
部屋の隅には、泥だらけのドレスを着た少女――No.2ルルシアが体育座りで震えている。
「うぅ……半額シール……貼ってない……高い……」
「豚汁……おかわり……」
彼女の目は虚ろで、焦点が合っていない。
リーザ王女の貧乏スキルをコピーした結果、精神構造(メンタル)が貴族のプライドと衝突し、完全に崩壊(バグ)を起こしていた。
もはや、最強のコピー能力者の面影はない。ただの「食に執着する廃人」だ。
「役立たずめ」
ギアンは冷めた目でルルシアを見下ろすと、手元のチェス盤から「クイーン」の駒を弾き飛ばした。
駒は床に転がり、ルルシアの足元で乾いた音を立てた。
「治療しますか? ボス」
影からぬらりと現れたのは、大商人の姿をしたNo.3、ガームだ。
「必要ない。一度壊れた駒は、リセットするまで元には戻らない。……それより、客人を呼べ」
ギアンが指を鳴らすと、扉が乱暴に蹴破られた。
「あぁん? 俺様を呼んだか、ボス」
入ってきたのは、頭部に包帯を巻き、新しい仮面をつけた大男。
No.1、ヴォルグ。
先日、リベラの事務所で鮫島に頭を撃ち抜かれた破壊者だ。
「ヴォルグ。傷の具合はどうだい?」
「ズキズキ痛むぜ。……あの黒服の野郎に撃たれた穴がな」
ヴォルグは仮面の上から額を抑え、ギリギリと歯ぎしりをした。
対魔破甲弾のダメージは深刻だったが、組織の治癒魔法で無理やり塞いだようだ。
その全身からは、以前よりも増したどす黒い殺意が立ち昇っている。
「許さねぇ……。俺様の顔に傷をつけたあの虫ケラども……。全員、分子レベルで消し飛ばしてやる」
「いいだろう。その怒り、解き放つ許可(ライセンス)を与える」
ギアンは椅子から立ち上がり、窓の外――王都の下町方向を見据えた。
「T-SWAT。……最初はただの道化だと思っていたが、どうやら僕のシナリオを狂わせる『バグ』のようだ」
No.1を撃退し、No.2を精神崩壊させ、No.3の資金源を潰した。
もはや見過ごせるレベルではない。
彼らは、ギアンが描く「完全なる支配」という盤面を覆す可能性を持つ、唯一の不確定要素。
「小細工は終わりだ。……僕たちは『力』で支配する者。ならば、圧倒的な暴力で押し潰すのが礼儀というものだろう」
ギアンはチェス盤の上の「キング」を手に取り、握りつぶした。
「No.1、No.3。そして残りの構成員全員を動員しろ」
「へへっ、やっとかよ。……で、標的は?」
ヴォルグが凶悪に笑う。
ギアンは甘いチョコレートの香りを纏った吐息で、冷酷に告げた。
「今夜、T-SWAT本部を襲撃せよ。……更地にして構わない。一人残らず消せ」
***
同時刻。T-SWAT本部。
「……風が変わったな」
深夜の廃倉庫で、俺は愛銃Korthの手入れをしながら呟いた。
オイルの匂いに混じって、どこか血生臭い風が吹き込んでいる気がする。
「隊長ー! 見て見て! この『えむよん』すごいよ! 300メートル先の空き缶に百発百中!」
キャルルが新しい玩具(M4カービン)を抱きしめてはしゃいでいる。
彼女の動体視力とM4の精度が組み合わされば、もはや移動砲台だ。
「ガハハ! この『ベネリ』ってショットガンも最高だぜ! ドアごと標的を吹き飛ばせる!」
イグニスはベネリM4スーパー90を片手で構え、ポンプアクションを楽しんでいる。
彼の馬鹿力なら、反動などないに等しい。
部下たちは最強の装備を手に入れ、士気は高い。
だが、俺の長年の勘(刑事の勘)が警鐘を鳴らしている。
これは、「終わりの始まり」だと。
「……総員、聞いてくれ」
俺が声をかけると、二人は手を止めてこちらを向いた。
「今夜は帰るな。……来るぞ」
俺はKorthに弾丸を装填し、カチリとシリンダーを戻した。
「ナンバーズが、本気で俺たちを潰しに来る。……遊び(ゲーム)は終わりだ。これからは戦争(ウォー)だ」
緊張が走る。
だが、イグニスもキャルルも、怯える様子はない。
不敵な笑みを浮かべ、それぞれの武器を構えた。
「上等だ。返り討ちにしてやるよ」
「あたしたちの職場(ここ)は壊させない!」
俺はタバコを口にくわえ、ライターの火を灯した。
揺れる炎の向こう側、闇の彼方から、無数の殺意が近づいてくるのを感じた。
「……配置につけ(ポジション)。迎撃戦を開始する」
静寂な夜が破られるまで、あと数分。
T-SWAT本部防衛戦の幕が上がる。
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