15 / 19
EP 15
しおりを挟む
モンスターハウス(飽和攻撃)
「……匂いが、扉を開けたようだな」
坂上真一が呟くと同時に、広間の奥にある巨大な両開きの扉が、重々しい音を立てて開ききった。
その向こうに広がっていたのは、サッカーグラウンドほどもある巨大な空間だった。
そして、中央には――冒険者の欲望を刺激する、巨大な宝箱が一つ、鎮座していた。
「た、宝箱だ! しかもデカい!」
『白銀の剣』のリーダー、アルヴィスが叫んだ。
カップヌードル(シーフード)で腹を満たし、体力を回復させた彼らは、失っていた自信と欲求を再燃させていた。
「へっ! 老人たちに飯を恵んでもらった借りは、このお宝でチャラにしてやるぜ!」
アルヴィスが剣を抜き、先頭を切って走り出す。
他のメンバーも、遅れまいと続く。
「待て、若造!」
坂上の鋭い警告が飛んだ。
「その配置は不自然だ。……罠(トラップ)の可能性が高い」
何もない大部屋の真ん中に、ポツンと宝箱。
現代戦術で言えば、あまりに露骨な「キルゾーン(殺害地帯)」への誘引だ。
だが、功を焦るアルヴィスの耳には届かない。
「うるせぇ! 臆病風に吹かれて指をくわえて見てな!」
アルヴィスは宝箱に駆け寄り、鍵がかかっていないことを確認すると、勢いよく蓋を開け放った。
カチッ。
無機質な音が、洞窟内に響き渡った。
次の瞬間。
『ギャアアアアアアアアアアア!!』
耳をつんざくような咆哮が、四方八方から轟いた。
天井から、壁の亀裂から、そして地面の下から。
湧き出すように現れたのは、無数の魔物たちだった。
「な、なんだコリャ!? ゴブリン!? オーク!?」
「いや、ケーブ・スパイダーもいるわ! 数が……数が多すぎる!」
モンスターハウス。
ダンジョンが仕掛ける最悪の罠。
数百匹を超える魔物の群れが、シーフードの香りと侵入者の生体反応に興奮し、殺到する。
それは戦闘ではない。「飽和攻撃」による圧殺だ。
「ひ、ひいいいっ!?」
「囲まれた! 逃げ道がない!」
『白銀の剣』のメンバーは、一瞬でパニックに陥った。
松明の薄暗い灯りでは、どこから敵が来るのかも分からない。
剣を振るえば仲間に当たり、魔法を唱える隙もない。
「た、助け……助けてくれぇぇぇ!」
アルヴィスが情けない悲鳴を上げて後退る。
だが、退路である扉の方角にも、既にオークの壁が立ちはだかっていた。
絶体絶命。
エリートたちの命運が尽きかけた、その時。
バシュッ!
強烈な閃光弾(フラッシュバン)のような光が、オークの壁を貫いた。
坂上のLEDライトだ。
「……まったく。世話の焼ける連中だ」
入り口付近。
坂上は腕を組み、冷静に戦場を見渡していた。
その瞳には焦りの色はなく、むしろ盤面を分析する棋士のような冷徹さが宿っている。
「オッサン、行っていいか?」
隣で龍魔呂が、ボキボキと首を鳴らしている。
その瞳は、獲物を前にした歓喜でギラついていた。
「もう我慢できねぇ。……あの数を全部潰していいなら、今日のデザートは我慢してやる」
「私もー! 燃やしたい! 凍らせたい! どかーんってしたい!」
ルナも杖をウズウズさせている。
坂上は、ふっと口元を緩めた。
「許可する(エンゲージ)。……ただし」
坂上は双眼鏡を構え、イヤホンマイクのスイッチを入れた。
「指揮権は俺が持つ。……俺の手足となって動け」
五〇歳の元艦長から発せられる、圧倒的なカリスマ(統率力)。
それに呼応するように、龍魔呂とルナの顔つきが変わる。
「……へっ、了解だ(ラジャー)。司令官殿」
「はーい! 指示ちょーだい!」
坂上は右手を振り上げ、短く、しかし力強く宣言した。
「状況を、開始する」
最強部隊の介入。
それは、一方的な虐殺(スタンピード)を、管理された殲滅戦へと塗り替える合図だった。
「……匂いが、扉を開けたようだな」
坂上真一が呟くと同時に、広間の奥にある巨大な両開きの扉が、重々しい音を立てて開ききった。
その向こうに広がっていたのは、サッカーグラウンドほどもある巨大な空間だった。
そして、中央には――冒険者の欲望を刺激する、巨大な宝箱が一つ、鎮座していた。
「た、宝箱だ! しかもデカい!」
『白銀の剣』のリーダー、アルヴィスが叫んだ。
カップヌードル(シーフード)で腹を満たし、体力を回復させた彼らは、失っていた自信と欲求を再燃させていた。
「へっ! 老人たちに飯を恵んでもらった借りは、このお宝でチャラにしてやるぜ!」
アルヴィスが剣を抜き、先頭を切って走り出す。
他のメンバーも、遅れまいと続く。
「待て、若造!」
坂上の鋭い警告が飛んだ。
「その配置は不自然だ。……罠(トラップ)の可能性が高い」
何もない大部屋の真ん中に、ポツンと宝箱。
現代戦術で言えば、あまりに露骨な「キルゾーン(殺害地帯)」への誘引だ。
だが、功を焦るアルヴィスの耳には届かない。
「うるせぇ! 臆病風に吹かれて指をくわえて見てな!」
アルヴィスは宝箱に駆け寄り、鍵がかかっていないことを確認すると、勢いよく蓋を開け放った。
カチッ。
無機質な音が、洞窟内に響き渡った。
次の瞬間。
『ギャアアアアアアアアアアア!!』
耳をつんざくような咆哮が、四方八方から轟いた。
天井から、壁の亀裂から、そして地面の下から。
湧き出すように現れたのは、無数の魔物たちだった。
「な、なんだコリャ!? ゴブリン!? オーク!?」
「いや、ケーブ・スパイダーもいるわ! 数が……数が多すぎる!」
モンスターハウス。
ダンジョンが仕掛ける最悪の罠。
数百匹を超える魔物の群れが、シーフードの香りと侵入者の生体反応に興奮し、殺到する。
それは戦闘ではない。「飽和攻撃」による圧殺だ。
「ひ、ひいいいっ!?」
「囲まれた! 逃げ道がない!」
『白銀の剣』のメンバーは、一瞬でパニックに陥った。
松明の薄暗い灯りでは、どこから敵が来るのかも分からない。
剣を振るえば仲間に当たり、魔法を唱える隙もない。
「た、助け……助けてくれぇぇぇ!」
アルヴィスが情けない悲鳴を上げて後退る。
だが、退路である扉の方角にも、既にオークの壁が立ちはだかっていた。
絶体絶命。
エリートたちの命運が尽きかけた、その時。
バシュッ!
強烈な閃光弾(フラッシュバン)のような光が、オークの壁を貫いた。
坂上のLEDライトだ。
「……まったく。世話の焼ける連中だ」
入り口付近。
坂上は腕を組み、冷静に戦場を見渡していた。
その瞳には焦りの色はなく、むしろ盤面を分析する棋士のような冷徹さが宿っている。
「オッサン、行っていいか?」
隣で龍魔呂が、ボキボキと首を鳴らしている。
その瞳は、獲物を前にした歓喜でギラついていた。
「もう我慢できねぇ。……あの数を全部潰していいなら、今日のデザートは我慢してやる」
「私もー! 燃やしたい! 凍らせたい! どかーんってしたい!」
ルナも杖をウズウズさせている。
坂上は、ふっと口元を緩めた。
「許可する(エンゲージ)。……ただし」
坂上は双眼鏡を構え、イヤホンマイクのスイッチを入れた。
「指揮権は俺が持つ。……俺の手足となって動け」
五〇歳の元艦長から発せられる、圧倒的なカリスマ(統率力)。
それに呼応するように、龍魔呂とルナの顔つきが変わる。
「……へっ、了解だ(ラジャー)。司令官殿」
「はーい! 指示ちょーだい!」
坂上は右手を振り上げ、短く、しかし力強く宣言した。
「状況を、開始する」
最強部隊の介入。
それは、一方的な虐殺(スタンピード)を、管理された殲滅戦へと塗り替える合図だった。
20
あなたにおすすめの小説
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる