50歳元艦長、スキル【酒保】と指揮能力で異世界を生き抜く。残り物の狂犬と天然エルフを拾ったら、現代物資と戦術で最強部隊ができあがりました

月神世一

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EP 18

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ボス戦・鋼鉄のゴーレム
​ ルナが開通させた「地下高速道路」の終着点。
 そこには、巨大なドーム状の空間が広がっていた。
 天井には無数の碧水晶(クリスタル)が輝き、幻想的な光を投げかけている。
 だが、その中央に鎮座する「守護者」の姿は、幻想とは程遠い、無骨で圧倒的な質量の塊だった。
​「……デカいな」
​ 坂上真一が、LEDライトで照らし出しながら呟いた。
 高さ5メートルはあろうかという巨体。
 全身が銀色に輝く金属で構成された、鋼鉄の巨人――**『ミスリル・ゴーレム』**だ。
​「グルルルル……」
​ 侵入者を感知し、ゴーレムの眼窩に真紅の光が灯る。
 重厚な駆動音と共に、その巨体がゆっくりと立ち上がった。地面がズシン、ズシンと揺れる。
​「ひぃッ! ミスリルゴーレム!? 物理攻撃も魔法も弾く、要塞みたいな怪物だぞ!」
​ 後ろをついてきたアルヴィスが悲鳴を上げる。
 だが、最強部隊の反応は違った。
​「へっ、硬そうじゃねぇか。殴り甲斐があるぜ」
「わぁ! キラキラしてる! 綺麗!」
「ヒャッハー! ミスリルの塊!? あれ全部で金貨何枚になりまんねん!?」
​ 恐怖よりも、闘争心、好奇心、そして商魂。
 坂上は冷静にPXウィンドウを開きながら、まずは威力偵察を命じた。
​「龍魔呂。……一発、試してみろ」
「おうよ! 待ってました!」
​ 龍魔呂が床を蹴る。
 一瞬でゴーレムの懐に潜り込み、渾身のアッパーカットを顎(あご)に叩き込んだ。
​ ガィィィィィィン!!
​ 激しい金属音が響き、火花が散る。
 だが、ゴーレムは僅かに仰け反っただけ。龍魔呂の拳は装甲に傷一つつけられなかった。
​「……ッ、痛(い)ってぇ!」
​ 龍魔呂が手を振ってバックステップで戻ってくる。
​「ダメだオッサン。あいつ、中身まで詰まってやがる。俺の拳でもヒビが入るかどうかだ」
「魔法はどうかしら? 『炎の矢(ファイア・アロー)』!」
​ ルナが炎を放つが、ミスリルの表面で弾かれ、黒い煤(すす)がついただけだ。
 ミスリルは高い魔法耐性を持つ金属。生半可な魔法では傷つかない。
​「ハハハ! 無駄だ! 諦めて逃げよう!」
​ アルヴィスが叫ぶが、坂上は平然としていた。
 彼は龍魔呂の攻撃音と、ルナの魔法への反応を見て、分析を完了していたのだ。
​「……物理が通じないなら、化学(カガク)だ」
「化学?」
「物質の性質を利用する」
​ 坂上はPXで購入したアイテムを取り出した。
 それは武器ではない。
 巨大なスプレー缶のような物体が数本。**『業務デカ缶・瞬間冷却スプレー(-42℃)』**だ。
​「ネギオ、これを持て」
「ほう、冷却ガスですか。……なるほど、そういうことですか」
「理解が早くて助かる」
​ 坂上とネギオはスプレー缶を構え、龍魔呂とルナに指示を出した。
​「作戦目標、敵装甲の『熱破壊』。……ルナ、全力でゴーレムを熱しろ」
「えっ? 燃やしていいの?」
「ああ。ただし、爆発させるな。とろ火でじっくり、全体を赤くなるまで炙れ」
「はーい! 『灼熱の抱擁を!(ヒート・ハグ)』」
​ ルナが杖を掲げると、ゴーレムの周囲に高熱の結界が発生した。
 爆発ではなく、持続的な加熱。
 ゴーレムは熱さに悶えるような動きを見せるが、ルナの魔力拘束で逃げられない。
 次第に、銀色の装甲が赤熱し、オレンジ色に輝き始める。
​「グオォォォ……!」
「今だ! 離れろルナ!」
​ 坂上の合図でルナが退避する。
 真っ赤に焼けた鉄塊と化したゴーレム。
 そこへ、坂上とネギオが飛び込んだ。
​「ネギオ、放射!」
「御意!」
​ ブシュゥゥゥゥゥゥ!!
​ 二本のノズルから、極低温の冷却ガスが噴射された。
 数百度に熱せられた金属に、マイナス四十二度の冷気が直撃する。
​ ジュウウウウウウウ!!
​ 凄まじい水蒸気が爆発し、視界が白く染まる。
 そして、その音に混じって、不吉な音が響き始めた。
​ パキッ……ピキピキッ……
​ 硬質な何かが、悲鳴を上げる音。
​「な、なんだ!? 何をした!?」
​ アルヴィスが目を剥く。坂上はゴーグル越しに冷静に解説した。
​「熱膨張と、急冷による収縮。……金属疲労だ」
​ 急激な温度変化に、強靭なミスリルの結晶構造が耐えきれず、内部から崩壊を始めたのだ。
 蒸気が晴れると、ゴーレムの全身には、無数の亀裂(クラック)が蜘蛛の巣のように走っていた。
​「……装甲値、低下を確認。龍魔呂!」
​ 坂上が叫ぶ。
 待機していた龍魔呂が、ニヤリと笑った。
​「へっ、随分と脆(もろ)そうなナリになりやがって!」
​ 龍魔呂が、赤黒い闘気を右腕に集中させる。
 今度の相手は、無敵の要塞ではない。ひび割れたガラス細工だ。
​「砕け散れ! 『鬼神流・砕(くだき)』!!」
​ 渾身の一撃が、ゴーレムの胸板――最も亀裂の入った箇所に突き刺さる。
​ 一瞬の静寂。
 
 ズドォォォォン!!
​ 次の瞬間、巨体が内側から弾け飛んだ。
 銀色の破片がキラキラと舞い散り、ミスリル・ゴーレムはただのスクラップの山へと変わった。
​「……任務完了(ミッション・コンプリート)」
​ 坂上はスプレー缶を下ろし、ふぅと息を吐いた。
 アルヴィスたちは、あんぐりと口を開けたまま、言葉も出ない。
 剣も魔法も通じない怪物を、スプレーと温度差だけで粉砕したのだ。
​「ヒャハーー!! 宝の山だぁぁ!!」
​ 最初に動いたのはニャングルだった。
 彼は飛び散ったミスリルの破片にダイブし、頬ずりしながら袋に詰め込み始めた。
​「これ全部純度100%のミスリルでっせ! 武器にするもよし、売るもよし! ゴルド商会の倉庫がパンクしてまうわ!」
​ 勝利の歓喜。
 だが、坂上の頭の中には、既に別のことが浮かんでいた。
​「さて……大仕事の後は、腹が減るな」
​ 彼はPXウィンドウを開き、検索カテゴリ【食品】をタップした。
 今日の勝利を祝う、最高のメニューのために。
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