18 / 19
EP 18
しおりを挟む
ボス戦・鋼鉄のゴーレム
ルナが開通させた「地下高速道路」の終着点。
そこには、巨大なドーム状の空間が広がっていた。
天井には無数の碧水晶(クリスタル)が輝き、幻想的な光を投げかけている。
だが、その中央に鎮座する「守護者」の姿は、幻想とは程遠い、無骨で圧倒的な質量の塊だった。
「……デカいな」
坂上真一が、LEDライトで照らし出しながら呟いた。
高さ5メートルはあろうかという巨体。
全身が銀色に輝く金属で構成された、鋼鉄の巨人――**『ミスリル・ゴーレム』**だ。
「グルルルル……」
侵入者を感知し、ゴーレムの眼窩に真紅の光が灯る。
重厚な駆動音と共に、その巨体がゆっくりと立ち上がった。地面がズシン、ズシンと揺れる。
「ひぃッ! ミスリルゴーレム!? 物理攻撃も魔法も弾く、要塞みたいな怪物だぞ!」
後ろをついてきたアルヴィスが悲鳴を上げる。
だが、最強部隊の反応は違った。
「へっ、硬そうじゃねぇか。殴り甲斐があるぜ」
「わぁ! キラキラしてる! 綺麗!」
「ヒャッハー! ミスリルの塊!? あれ全部で金貨何枚になりまんねん!?」
恐怖よりも、闘争心、好奇心、そして商魂。
坂上は冷静にPXウィンドウを開きながら、まずは威力偵察を命じた。
「龍魔呂。……一発、試してみろ」
「おうよ! 待ってました!」
龍魔呂が床を蹴る。
一瞬でゴーレムの懐に潜り込み、渾身のアッパーカットを顎(あご)に叩き込んだ。
ガィィィィィィン!!
激しい金属音が響き、火花が散る。
だが、ゴーレムは僅かに仰け反っただけ。龍魔呂の拳は装甲に傷一つつけられなかった。
「……ッ、痛(い)ってぇ!」
龍魔呂が手を振ってバックステップで戻ってくる。
「ダメだオッサン。あいつ、中身まで詰まってやがる。俺の拳でもヒビが入るかどうかだ」
「魔法はどうかしら? 『炎の矢(ファイア・アロー)』!」
ルナが炎を放つが、ミスリルの表面で弾かれ、黒い煤(すす)がついただけだ。
ミスリルは高い魔法耐性を持つ金属。生半可な魔法では傷つかない。
「ハハハ! 無駄だ! 諦めて逃げよう!」
アルヴィスが叫ぶが、坂上は平然としていた。
彼は龍魔呂の攻撃音と、ルナの魔法への反応を見て、分析を完了していたのだ。
「……物理が通じないなら、化学(カガク)だ」
「化学?」
「物質の性質を利用する」
坂上はPXで購入したアイテムを取り出した。
それは武器ではない。
巨大なスプレー缶のような物体が数本。**『業務デカ缶・瞬間冷却スプレー(-42℃)』**だ。
「ネギオ、これを持て」
「ほう、冷却ガスですか。……なるほど、そういうことですか」
「理解が早くて助かる」
坂上とネギオはスプレー缶を構え、龍魔呂とルナに指示を出した。
「作戦目標、敵装甲の『熱破壊』。……ルナ、全力でゴーレムを熱しろ」
「えっ? 燃やしていいの?」
「ああ。ただし、爆発させるな。とろ火でじっくり、全体を赤くなるまで炙れ」
「はーい! 『灼熱の抱擁を!(ヒート・ハグ)』」
ルナが杖を掲げると、ゴーレムの周囲に高熱の結界が発生した。
爆発ではなく、持続的な加熱。
ゴーレムは熱さに悶えるような動きを見せるが、ルナの魔力拘束で逃げられない。
次第に、銀色の装甲が赤熱し、オレンジ色に輝き始める。
「グオォォォ……!」
「今だ! 離れろルナ!」
坂上の合図でルナが退避する。
真っ赤に焼けた鉄塊と化したゴーレム。
そこへ、坂上とネギオが飛び込んだ。
「ネギオ、放射!」
「御意!」
ブシュゥゥゥゥゥゥ!!
二本のノズルから、極低温の冷却ガスが噴射された。
数百度に熱せられた金属に、マイナス四十二度の冷気が直撃する。
ジュウウウウウウウ!!
凄まじい水蒸気が爆発し、視界が白く染まる。
そして、その音に混じって、不吉な音が響き始めた。
パキッ……ピキピキッ……
硬質な何かが、悲鳴を上げる音。
「な、なんだ!? 何をした!?」
アルヴィスが目を剥く。坂上はゴーグル越しに冷静に解説した。
「熱膨張と、急冷による収縮。……金属疲労だ」
急激な温度変化に、強靭なミスリルの結晶構造が耐えきれず、内部から崩壊を始めたのだ。
蒸気が晴れると、ゴーレムの全身には、無数の亀裂(クラック)が蜘蛛の巣のように走っていた。
「……装甲値、低下を確認。龍魔呂!」
坂上が叫ぶ。
待機していた龍魔呂が、ニヤリと笑った。
「へっ、随分と脆(もろ)そうなナリになりやがって!」
龍魔呂が、赤黒い闘気を右腕に集中させる。
今度の相手は、無敵の要塞ではない。ひび割れたガラス細工だ。
「砕け散れ! 『鬼神流・砕(くだき)』!!」
渾身の一撃が、ゴーレムの胸板――最も亀裂の入った箇所に突き刺さる。
一瞬の静寂。
ズドォォォォン!!
次の瞬間、巨体が内側から弾け飛んだ。
銀色の破片がキラキラと舞い散り、ミスリル・ゴーレムはただのスクラップの山へと変わった。
「……任務完了(ミッション・コンプリート)」
坂上はスプレー缶を下ろし、ふぅと息を吐いた。
アルヴィスたちは、あんぐりと口を開けたまま、言葉も出ない。
剣も魔法も通じない怪物を、スプレーと温度差だけで粉砕したのだ。
「ヒャハーー!! 宝の山だぁぁ!!」
最初に動いたのはニャングルだった。
彼は飛び散ったミスリルの破片にダイブし、頬ずりしながら袋に詰め込み始めた。
「これ全部純度100%のミスリルでっせ! 武器にするもよし、売るもよし! ゴルド商会の倉庫がパンクしてまうわ!」
勝利の歓喜。
だが、坂上の頭の中には、既に別のことが浮かんでいた。
「さて……大仕事の後は、腹が減るな」
彼はPXウィンドウを開き、検索カテゴリ【食品】をタップした。
今日の勝利を祝う、最高のメニューのために。
ルナが開通させた「地下高速道路」の終着点。
そこには、巨大なドーム状の空間が広がっていた。
天井には無数の碧水晶(クリスタル)が輝き、幻想的な光を投げかけている。
だが、その中央に鎮座する「守護者」の姿は、幻想とは程遠い、無骨で圧倒的な質量の塊だった。
「……デカいな」
坂上真一が、LEDライトで照らし出しながら呟いた。
高さ5メートルはあろうかという巨体。
全身が銀色に輝く金属で構成された、鋼鉄の巨人――**『ミスリル・ゴーレム』**だ。
「グルルルル……」
侵入者を感知し、ゴーレムの眼窩に真紅の光が灯る。
重厚な駆動音と共に、その巨体がゆっくりと立ち上がった。地面がズシン、ズシンと揺れる。
「ひぃッ! ミスリルゴーレム!? 物理攻撃も魔法も弾く、要塞みたいな怪物だぞ!」
後ろをついてきたアルヴィスが悲鳴を上げる。
だが、最強部隊の反応は違った。
「へっ、硬そうじゃねぇか。殴り甲斐があるぜ」
「わぁ! キラキラしてる! 綺麗!」
「ヒャッハー! ミスリルの塊!? あれ全部で金貨何枚になりまんねん!?」
恐怖よりも、闘争心、好奇心、そして商魂。
坂上は冷静にPXウィンドウを開きながら、まずは威力偵察を命じた。
「龍魔呂。……一発、試してみろ」
「おうよ! 待ってました!」
龍魔呂が床を蹴る。
一瞬でゴーレムの懐に潜り込み、渾身のアッパーカットを顎(あご)に叩き込んだ。
ガィィィィィィン!!
激しい金属音が響き、火花が散る。
だが、ゴーレムは僅かに仰け反っただけ。龍魔呂の拳は装甲に傷一つつけられなかった。
「……ッ、痛(い)ってぇ!」
龍魔呂が手を振ってバックステップで戻ってくる。
「ダメだオッサン。あいつ、中身まで詰まってやがる。俺の拳でもヒビが入るかどうかだ」
「魔法はどうかしら? 『炎の矢(ファイア・アロー)』!」
ルナが炎を放つが、ミスリルの表面で弾かれ、黒い煤(すす)がついただけだ。
ミスリルは高い魔法耐性を持つ金属。生半可な魔法では傷つかない。
「ハハハ! 無駄だ! 諦めて逃げよう!」
アルヴィスが叫ぶが、坂上は平然としていた。
彼は龍魔呂の攻撃音と、ルナの魔法への反応を見て、分析を完了していたのだ。
「……物理が通じないなら、化学(カガク)だ」
「化学?」
「物質の性質を利用する」
坂上はPXで購入したアイテムを取り出した。
それは武器ではない。
巨大なスプレー缶のような物体が数本。**『業務デカ缶・瞬間冷却スプレー(-42℃)』**だ。
「ネギオ、これを持て」
「ほう、冷却ガスですか。……なるほど、そういうことですか」
「理解が早くて助かる」
坂上とネギオはスプレー缶を構え、龍魔呂とルナに指示を出した。
「作戦目標、敵装甲の『熱破壊』。……ルナ、全力でゴーレムを熱しろ」
「えっ? 燃やしていいの?」
「ああ。ただし、爆発させるな。とろ火でじっくり、全体を赤くなるまで炙れ」
「はーい! 『灼熱の抱擁を!(ヒート・ハグ)』」
ルナが杖を掲げると、ゴーレムの周囲に高熱の結界が発生した。
爆発ではなく、持続的な加熱。
ゴーレムは熱さに悶えるような動きを見せるが、ルナの魔力拘束で逃げられない。
次第に、銀色の装甲が赤熱し、オレンジ色に輝き始める。
「グオォォォ……!」
「今だ! 離れろルナ!」
坂上の合図でルナが退避する。
真っ赤に焼けた鉄塊と化したゴーレム。
そこへ、坂上とネギオが飛び込んだ。
「ネギオ、放射!」
「御意!」
ブシュゥゥゥゥゥゥ!!
二本のノズルから、極低温の冷却ガスが噴射された。
数百度に熱せられた金属に、マイナス四十二度の冷気が直撃する。
ジュウウウウウウウ!!
凄まじい水蒸気が爆発し、視界が白く染まる。
そして、その音に混じって、不吉な音が響き始めた。
パキッ……ピキピキッ……
硬質な何かが、悲鳴を上げる音。
「な、なんだ!? 何をした!?」
アルヴィスが目を剥く。坂上はゴーグル越しに冷静に解説した。
「熱膨張と、急冷による収縮。……金属疲労だ」
急激な温度変化に、強靭なミスリルの結晶構造が耐えきれず、内部から崩壊を始めたのだ。
蒸気が晴れると、ゴーレムの全身には、無数の亀裂(クラック)が蜘蛛の巣のように走っていた。
「……装甲値、低下を確認。龍魔呂!」
坂上が叫ぶ。
待機していた龍魔呂が、ニヤリと笑った。
「へっ、随分と脆(もろ)そうなナリになりやがって!」
龍魔呂が、赤黒い闘気を右腕に集中させる。
今度の相手は、無敵の要塞ではない。ひび割れたガラス細工だ。
「砕け散れ! 『鬼神流・砕(くだき)』!!」
渾身の一撃が、ゴーレムの胸板――最も亀裂の入った箇所に突き刺さる。
一瞬の静寂。
ズドォォォォン!!
次の瞬間、巨体が内側から弾け飛んだ。
銀色の破片がキラキラと舞い散り、ミスリル・ゴーレムはただのスクラップの山へと変わった。
「……任務完了(ミッション・コンプリート)」
坂上はスプレー缶を下ろし、ふぅと息を吐いた。
アルヴィスたちは、あんぐりと口を開けたまま、言葉も出ない。
剣も魔法も通じない怪物を、スプレーと温度差だけで粉砕したのだ。
「ヒャハーー!! 宝の山だぁぁ!!」
最初に動いたのはニャングルだった。
彼は飛び散ったミスリルの破片にダイブし、頬ずりしながら袋に詰め込み始めた。
「これ全部純度100%のミスリルでっせ! 武器にするもよし、売るもよし! ゴルド商会の倉庫がパンクしてまうわ!」
勝利の歓喜。
だが、坂上の頭の中には、既に別のことが浮かんでいた。
「さて……大仕事の後は、腹が減るな」
彼はPXウィンドウを開き、検索カテゴリ【食品】をタップした。
今日の勝利を祝う、最高のメニューのために。
20
あなたにおすすめの小説
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる