『地球ショッピング』で異世界を快適に!~医学生、善行ポイントで現代物資を取り寄せ、兎の村を最強要塞に変える~

月神世一

文字の大きさ
11 / 50

EP 11

しおりを挟む
鍛冶師ウルジと薙刀の夢
​ルナキャロット村での生活が日常になり始めた頃。
自警団の教官役も板についてきた勇太だったが、その心には一つの小さな、しかし無視できない違和感が燻っていた。
​(……やっぱり、槍じゃしっくりこない)
​ラトルから託された長槍は、確かに業物だ。
だが、槍の本質は「点(突き)」だ。
対して、勇太の身体に染み付いている薙刀の動きは、「線(斬撃)」と「面(払い)」、そして石突を使った「打撃」の複合技だ。
今の槍では、薙刀特有の遠心力を活かした斬り上げや、柄を使ったいなし技が、どうしてもワンテンポ遅れる。
​(100%の力を出すには、やはり『薙刀』が必要だ……)
​訓練後、そんな顔をして自分の掌を見つめていたからだろう。
敏いキャルルが、タオルを渡しながら声をかけてきた。
​「ユウタさん。もしかして、槍だと戦いにくいですか?」
​「え? ああ、いや……戦いにくいわけじゃないんだけど、一番慣れている武器とは重心が違ってね」
​「やっぱり! なんだか動きに少しだけ迷いがある気がしたんです。……だったら、ウルジ爺さんのところに行きましょう!」
​「ウルジ爺さん?」
​「はい! この村一番の鍛冶師さんです。すっごく頑固で口も悪いですけど、腕は確かですから!」
​キャルルは「善は急げです!」と勇太の手を引き、有無を言わさず歩き出した。
​連れてこられたのは、村の外れ、工房区画の中でもひときわ大きな石造りの建物だった。
近づくだけで、肌がジリジリと焼けるような熱気を感じる。
カーン! カーン!
腹に響くような、重くリズミカルな槌の音が、周囲の空気を震わせていた。
​「ここです!」
​キャルルが重い鉄の扉を押し開ける。
途端に、熱風と共に鉄と煤の匂いが鼻孔を突いた。
中は薄暗いが、中央にある炉の赤々とした炎が、主の姿を影絵のように浮かび上がらせている。
​筋肉の鎧をまとったような、小柄だが岩のように頑強な老人。
煤で真っ黒に汚れた長い兎耳をねじり鉢巻で縛り上げ、玉のような汗を散らしながら、真っ赤に焼けた鉄塊を叩いている。
​「ウルジ爺さーん! お客さんだよー!」
​キャルルの大声に、老人は槌を止め、ジュウッという音と共に鉄を冷却水に突っ込んだ。
​「ああん? ……誰かと思えばキャルルか。なんだ、またトンファーの金具を飛ばしたのか?」
​「むっ、今日は違います! お願いがあって来たの! このユウタさんに、新しい武器を作って欲しいんです!」
​「武器だぁ?」
​ウルジは、ギロリと鋭い眼光で勇太を睨みつけた。その目は、ただの老人ではない、一芸を極めた職人特有の厳しい光を宿している。
​「人間か。……腰にいい槍を下げてるじゃねえか。ラトルの野郎が大事にしてた槍だろ、それで十分じゃねえのか」
​「いえ、この槍は素晴らしいものです。ですが……僕の流派には合わないんです」
​勇太は一歩前に出ると、持参した羊皮紙(村で手に入れたもの)と木炭を取り出した。
​「僕が使いたいのは、『薙刀(ナギナタ)』という武器です。作っていただけませんか」
​「ナギナタ? ……聞いたことねえな。グレイブの親戚か?」
​「似ていますが、違います。……こういう形状です」
​勇太は、近くの作業台でサラサラと図面を描き始めた。
医学生としてのデッサン力と、長年使い込んだ相棒の記憶。
描き出されたのは、優美な曲線を描く刃と、長い柄を持つ武器の設計図だった。
​「ほほう……」
​ウルジが身を乗り出し、脂ぎった指で図面をなぞる。
​「長い柄に、反りのある刃……。これじゃあ『突き』の威力が落ちるぞ。重心も先重(さきおも)りになる。扱いづらいだけの奇形じゃねえか」
​プロならではの指摘。だが、勇太は怯まなかった。
​「おっしゃる通り、重心は先端に寄ります。ですが、その遠心力を利用するんです」
​勇太は図面を指差しながら、熱っぽく語った。
​「この『反り』があることで、引いて斬る動作が滑らかになります。さらに、長い柄をテコにして回転させることで、叩き斬る威力は斧にも匹敵する。……つまり、槍の間合いで、剣の斬撃と、斧の破壊力を両立させる武器なんです」
​「……槍の間合いで、剣と斧の威力、か」
​ウルジの目の色が変わった。
単なるワガママな注文ではない。理にかなった、実戦のための機能美。
職人の魂に火がついた瞬間だった。
​「……面白い。理屈は分かった」
​ウルジはニヤリと笑うと、煤けた手で顎をさすった。
​「だが、こいつを作るにはバランスが肝だ。柄の素材はただの樫じゃダメだ、しなりが足りねえ。芯に鉄を通すか……いや、それじゃ重すぎる。『アイアンウッド』の古木を使うか」
​「素材はお任せします。この世界で手に入る、一番頑丈なもので」
​「はん、言うじゃねえか。……いいぜ、引き受けてやる」
​ウルジは作業台に拳を叩きつけた。
​「ただし! 金なんぞはいらねえが、条件がある」
​「条件、ですか?」
​「ああ。出来上がったら、一番最初にワシに見せろ。その『ナギナタ』とやらが、ワシの打った鉄に相応しい動きをするのか……お前の演武で証明してみせろ」
​それは、職人から使い手への挑戦状だった。
​「……望むところです」
​勇太は深く頭を下げた。
​「よし! ならば話は早い。一週間だ。最高の一振りを仕上げてやるから、首を洗って待ってな!」
​そう言うと、ウルジはもう勇太たちを見ていなかった。
炉の火力を上げるふいごを操作し、棚の奥から厳重に包まれた鉱石を取り出し始める。その背中は、すでに「創造」の世界に入り込んでいた。
​カーン! カーン!!
​先ほどよりも高く、澄んだ音が響き始める。
それは、勇太の新たな相棒が産声を上げ始めた音だった。
​「よかったですね、ユウタさん! 爺さんがあんなに乗り気になるなんて珍しいですよ!」
​「ああ……楽しみだ」
​勇太は、期待に胸を膨らませながら、熱気に満ちた鍛冶場を後にした。
自分専用の武器。それは、この異世界で生きていく覚悟を、物理的な形にすることでもあった。
​【ピンポンパンポーン♪】
​【善行ポイントが 10 P 加算されました】
【現在所持ポイント: 95 P】
​(え、これにもポイントが?)
​どうやら「異文化技術の提供」も、この世界では評価対象になるらしい。
あと5ポイントで、ついに100ポイントの大台だ。
​勇太は自身の掌を見つめた。
一週間後、この手に馴染む「最強の武器」が握られる日を夢見て。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

水神飛鳥の異世界茶会記 ~戦闘力ゼロの茶道家が、神業の【陶芸】と至高の【和菓子】で、野蛮な異世界を「癒やし」で侵略するようです~

月神世一
ファンタジー
「剣を下ろし、靴を脱いでください。……茶が入りましたよ」 ​ 猫を助けて死んだ茶道家・水神飛鳥(23歳)。 彼が転生したのは、魔法と闘気が支配する弱肉強食のファンタジー世界だった。 ​チート能力? 攻撃魔法? いいえ、彼が手にしたのは「茶道具一式」と「陶芸セット」が出せるスキルだけ。 ​「私がすべき事は、戦うことではありません。一服の茶を出し、心を整えることです」 ​ゴブリン相手に正座で茶を勧め、 戦場のど真ん中に「結界(茶室)」を展開して空気を変え、 牢屋にぶち込まれれば、そこを「隠れ家カフェ」にリフォームして看守を餌付けする。 ​そんな彼の振る舞う、異世界には存在しない「極上の甘味(カステラ・羊羹)」と、魔法よりも美しい「茶器」に、武闘派の獣人女王も、強欲な大商人も、次第に心を(胃袋を)掴まれていき……? ​「野暮な振る舞いは許しません」 ​これは、ブレない茶道家が、殺伐とした異世界を「おもてなし」で平和に変えていく、一期一会の物語。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

『異世界でSWAT隊長になったが、部下が無職のドラゴンと婚活ウサギしか居ない件について〜 裁けぬ悪は、357マグナムとカツ丼で解決します〜』

月神世一
ファンタジー
「魔法? 知らん。閃光弾(フラバン)食らって手錠にかかれ!」元SWAT隊長が挑む、異世界警察24時! ​【あらすじ】  元ロス市警SWAT隊員の鮫島勇護は、子供を庇って死んだ……はずが、気がつけば異世界の新興国「太郎国」で、特別機動隊『T-SWAT』の隊長になっていた! ​ 支給されたのは、最強のリボルバー『Korth』と現代タクティカルギア。  魔法障壁? ゴム弾で割る。  詠唱? 閃光弾で黙らせる。  騎士道? 知るか、裏から制圧だ。 ​ 圧倒的な実力で凶悪犯を狩る鮫島だったが、彼には致命的な悩みがあった。  ――部下がいない。そして、装備の維持費が高すぎて給料がマイナスだ。 ​ 安くて強い人材を求めた彼が採用したのは……  「火力が強すぎてクビになった無職のドラゴン」  「婚活資金のために戦う、安全靴を履いたウサギ」  さらには、取調室にカツ丼目当てで現れる貧乏アイドルまで!? ​ 法で裁けぬ悪を、357マグナムとカツ丼で解決する!  ハードボイルド(になりきれない)痛快アクションコメディ、開幕!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

処理中です...