『地球ショッピング』で異世界を快適に!~医学生、善行ポイントで現代物資を取り寄せ、兎の村を最強要塞に変える~

月神世一

文字の大きさ
43 / 50

EP 43

しおりを挟む
鉄の巨象と四つの心
​ルナキャロット村の朝。
村人総出の見送りの中、勇太は広場の中央に立った。
​「みんな、今までありがとう。……最後にもう一度だけ、驚いてくれるかな?」
​勇太がボードを操作し、購入ボタンを押す。
空気が振動し、光の粒子が収束する。
​ズドオオオオオオオオッ!!!
​出現したのは、全長8メートル、6輪駆動の**大型装甲キャンピングトラック『ノマド・カスタム』**だ。
マットブラックの塗装、荒野を噛み砕く巨大なタイヤ、そして屋根には太陽光パネルと衛星アンテナ。
それは、異世界には存在し得ない「鉄の要塞」だった。
​「な、なんだこの鉄の塊はぁぁぁっ!?」
「家か!? 家が車輪で走るのか!?」
​村人たちが腰を抜かす中、勇太は運転席のドアを開け、仲間たちを招いた。
​「さあ、乗って。僕たちの新しい『足』であり『家』だよ」
​恐る恐る乗り込んだ三人は、さらに絶句した。
外見の無骨さとは裏腹に、内装はラグジュアリーホテルのようだったからだ。
広々としたリビング、IHキッチン、ふかふかのソファベッド、そして清潔なシャワールームまで完備されている。
​「うわぁぁ……! 床がフワフワです! ソファが吸い付いてきます!」
キャルルがベッドにダイブし、喜びのあまり耳をバタバタさせる。
​「信じられない……。外は鋼鉄の鎧、中は王宮の寝室……。これがユウタの世界の『車』なの?」
リーシャがシステムキッチンを撫で回し、ため息をつく。
​「へっ、悪くねえな! 俺様の指定席はここか!」
イグニスは助手席にドカッと座り、視点の高さにご満悦だ。
​「それじゃあ、出発だ!」
​勇太がキーを回すと、ディーゼルエンジンが野獣のような咆哮を上げた。
ブロロロロロ……!!
クラクションを鳴らし、手を振る村人たちに見送られながら、ノマド号は荒野へと走り出した。
​旅は、快適そのものだった。
サスペンションの効いた車内は、砂利道でも揺れを感じさせない。
エアコンが効いたリビングで、勇太たちは流れる景色を眺めながら語り合った。
​「ユウタ、この『えんじん』というのは、どういう理屈で動いているの?」
​リーシャが助手席の勇太に身を乗り出す。
彼女の知的好奇心は、この鉄の塊に釘付けだった。
​「化石燃料を爆発させて、その力を回転運動に変えてるんだ。魔法陣じゃなくて、『ピストン』と『ギア』の物理法則だよ」
​「爆発を動力に……。火炎魔法を閉じ込めて推進力にするようなものかしら。……美しいわ」
​リーシャはダッシュボードの計器類を見つめ、科学という名の魔法に酔いしれていた。
​昼食は、イグニスのリクエストで「カツカレー」になった。
勇太がキッチンで揚げたてのトンカツを乗せると、車内にスパイシーな香りが充満する。
​「うめぇぇぇ! サクサクのカツと、このドロっとした汁(ルー)! 揺れる馬車じゃ絶対食えねえ贅沢だぜ!」
​イグニスが大盛りカレーを飲み込むように平らげる。
キャルルも、口の端にルーをつけながら幸せそうだ。
​「ユウタさんのご飯、本当に美味しいです! ……なんだか、ピクニックみたいですね!」
​「はは、そうだね。でも、そろそろエリアが変わるよ」
​勇太がハンドルを切り、海岸線沿いのルートへ入る。
窓の外には、グラングル大陸の雄大な海が広がっていた。
​夜。
彼らは景色の良い岬に停車し、車の上(ルーフデッキ)に上がった。
勇太が出した天体望遠鏡で、満天の星空を見上げる。
​「きれい……。村で見る空と同じはずなのに、ここから見ると、なんだか手が届きそう」
​キャルルが呟く。
その横顔には、少しだけ故郷を離れた寂しさが滲んでいた。
リーシャが優しく彼女の肩を抱く。
​「世界は広いのね。……私の知っている『エルフの森』が、ちっぽけに思えるくらい」
​「俺たちは、この広い世界のどこへだって行けるさ。この『ノマド号』と一緒ならな」
​勇太の言葉に、三人が頷く。
種族も生まれも違う四人。だが、同じ星空の下、同じ車に乗って旅をする「家族」になった。
​だが、そんな穏やかな時間は長くは続かない。
数日後。
ノマド号が峠を越えると、景色が一変した。
青空は消え、どす黒い雲が垂れ込め、視界の先が濃密な白い霧に覆われている。
​【警告:有害性ガスを探知。外気循環を停止します】
​車のモニターに警告が表示された。
​「……来たわね。『霧降りの谷』よ」
​リーシャの声が緊張を帯びる。
ヘッドライトが霧を切り裂くが、その先には生物の気配がない。
あるのは、ねじくれた木々と、何かが這いずったような巨大な痕跡だけ。
​「おいユウタ。……なんかデカイのがいるぞ。俺の勘が警報鳴らしてやがる」
​イグニスが窓の外を睨みつける。
キャルルの長い耳も、ピクリと動いた。
​「聞こえます……。地響きと、空気が擦れる音……。たくさん……ううん、一つ?」
​勇太はハンドルを握る手に力を込めた。
「来るぞ。全員、戦闘準備!」
​快適なドライブは終わりだ。
ここからは、命を懸けた「狩り」の時間。
勇太はアクセルを踏み込み、白い地獄へと突入していった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

水神飛鳥の異世界茶会記 ~戦闘力ゼロの茶道家が、神業の【陶芸】と至高の【和菓子】で、野蛮な異世界を「癒やし」で侵略するようです~

月神世一
ファンタジー
「剣を下ろし、靴を脱いでください。……茶が入りましたよ」 ​ 猫を助けて死んだ茶道家・水神飛鳥(23歳)。 彼が転生したのは、魔法と闘気が支配する弱肉強食のファンタジー世界だった。 ​チート能力? 攻撃魔法? いいえ、彼が手にしたのは「茶道具一式」と「陶芸セット」が出せるスキルだけ。 ​「私がすべき事は、戦うことではありません。一服の茶を出し、心を整えることです」 ​ゴブリン相手に正座で茶を勧め、 戦場のど真ん中に「結界(茶室)」を展開して空気を変え、 牢屋にぶち込まれれば、そこを「隠れ家カフェ」にリフォームして看守を餌付けする。 ​そんな彼の振る舞う、異世界には存在しない「極上の甘味(カステラ・羊羹)」と、魔法よりも美しい「茶器」に、武闘派の獣人女王も、強欲な大商人も、次第に心を(胃袋を)掴まれていき……? ​「野暮な振る舞いは許しません」 ​これは、ブレない茶道家が、殺伐とした異世界を「おもてなし」で平和に変えていく、一期一会の物語。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

『異世界でSWAT隊長になったが、部下が無職のドラゴンと婚活ウサギしか居ない件について〜 裁けぬ悪は、357マグナムとカツ丼で解決します〜』

月神世一
ファンタジー
「魔法? 知らん。閃光弾(フラバン)食らって手錠にかかれ!」元SWAT隊長が挑む、異世界警察24時! ​【あらすじ】  元ロス市警SWAT隊員の鮫島勇護は、子供を庇って死んだ……はずが、気がつけば異世界の新興国「太郎国」で、特別機動隊『T-SWAT』の隊長になっていた! ​ 支給されたのは、最強のリボルバー『Korth』と現代タクティカルギア。  魔法障壁? ゴム弾で割る。  詠唱? 閃光弾で黙らせる。  騎士道? 知るか、裏から制圧だ。 ​ 圧倒的な実力で凶悪犯を狩る鮫島だったが、彼には致命的な悩みがあった。  ――部下がいない。そして、装備の維持費が高すぎて給料がマイナスだ。 ​ 安くて強い人材を求めた彼が採用したのは……  「火力が強すぎてクビになった無職のドラゴン」  「婚活資金のために戦う、安全靴を履いたウサギ」  さらには、取調室にカツ丼目当てで現れる貧乏アイドルまで!? ​ 法で裁けぬ悪を、357マグナムとカツ丼で解決する!  ハードボイルド(になりきれない)痛快アクションコメディ、開幕!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

処理中です...