『地球ショッピング』で異世界を快適に!~医学生、善行ポイントで現代物資を取り寄せ、兎の村を最強要塞に変える~

月神世一

文字の大きさ
46 / 50

EP 46

しおりを挟む
最後の切り札と終焉の爆炎
​「はぁ……はぁ……」
​リーシャの回復魔法を受けながら、勇太はサーモグラフィーの記憶を反芻していた。
ヒュドラの心臓部は、三つの首の付け根――胴体の中心にある。
だが、そこは鋼鉄の鱗と、超高温の再生エネルギーに守られている。
生半可な火力では、再生速度に追いつけない。
​(再生を上回るには……細胞ごと消し飛ばすしかない)
​勇太はボードを展開した。
ポイントは17,955P(ノマド号購入後、少し減っている)。
この状況を打開できる「切り札」を買う。
​「リーシャ。……あいつを倒す算段がついた」
​「本当?」
​「ああ。だが、準備に10秒かかる。その間、あいつの動きを完全に止めなきゃならない」
​勇太の真剣な眼差しに、リーシャは静かに頷いた。
彼女の碧眼に、覚悟の炎が灯る。
​「……分かったわ。私の全魔力と引き換えに、10秒の『永遠』を作ってみせる」
​「リーシャ?」
​「イグニス! キャルル! 離れて!!」
​リーシャが叫び、杖を地面に突き刺した。
彼女の銀髪が逆立ち、大気中のマナが渦を巻いて収束していく。
​「大地の枷よ、巌(いわお)の腕となりて罪人を捕らえよ! 古代精霊召喚・『アース・ギガント』!!」
​ズゴゴゴゴゴ……ッ!!
地面が爆ぜ、岩石の巨人が上半身だけ姿を現した。
巨人は咆哮と共にヒュドラに組み付き、その太い腕で三つの首と胴体をまとめて羽交い締めにした。
​「グギャアアアッ!?」
​ヒュドラが暴れる。ミシミシと岩が砕ける音がする。
リーシャの鼻からツーッと血が流れた。精神力で巨人を維持しているのだ。
​「ぐっ……ぅぅぅ……! 急いで、ユウタ……!」
​「今だッ!!」
​勇太は飛び出した。
手には、『液体窒素タンク(噴射ノズル付き)』と、粘土のような白い塊――『C4プラスチック爆薬(時限・遠隔起爆式)』。
​勇太はヒュドラの懐に滑り込み、心臓部へ液体窒素を全開で噴射した。
​ブシュウウウウウウウッ!!!
​-196℃の極低温。
灼熱の再生エネルギーを帯びた鱗が、熱衝撃で悲鳴を上げる。
パキパキパキッ!
鋼鉄の硬度が失われ、白く凍りついていく。
​「そこだ!」
​勇太は凍りついた胸部に、C4爆薬の塊を叩きつけ、セットした。
量は1kg。ビルの一室を吹き飛ばせる量だ。
​「任務完了(ミッション・コンプリート)!」
​勇太は反転し、全力でダッシュした。
​「リーシャ! 解除だ! 逃げるぞ!」
​「……っ、はぁ!」
​リーシャが力を抜くと、石の巨人が崩れ落ちた。
拘束を解かれたヒュドラが、怒り狂って勇太の背中を睨む。
だが、その時にはもう遅い。
​「イグニス! リーシャを頼む!」
​「おうよッ!」
​イグニスが崩れ落ちるリーシャをひっ担ぎ、キャルルが勇太の手を引いて岩陰へ飛び込む。
ノマド号の分厚い装甲の陰へ。
​「……さよならだ、化け物」
​勇太はポケットから起爆スイッチを取り出し、親指で押し込んだ。
​カチッ。
​一瞬の静寂。
そして――。
​ズドオオオオオオオオオオオオオオンッッッ!!!!!
​世界が揺れた。
爆心からオレンジ色の閃光が膨れ上がり、衝撃波が霧を吹き飛ばす。
ヒュドラの断末魔すら聞こえない。
凍結して脆くなった心臓部は、C4の爆発速度(秒速8000メートル)の衝撃に耐えられず、細胞レベルで粉砕されたのだ。
​爆風が収まり、土煙が晴れていく。
そこには、巨大なクレーターと、首と胴体がバラバラに吹き飛んだヒュドラの残骸だけが転がっていた。
再生の兆候はない。完全なる沈黙。
​「……すっげぇ……」
​イグニスが呆然と呟く。
キャルルは震えながら勇太にしがみついている。
リーシャはイグニスの背中で、薄目を開けて微笑んだ。
​「……勝った、のね……」
​「ああ。僕たちの勝ちだ」
​勇太がガッツポーズを作ると、雲の切れ間から朝日が差し込んできた。
霧が晴れていく。
それは、彼らの前途を祝福するような、美しい光景だった。
​【ピンポンパンポーン♪】
​【賞金首:三つ首の毒蛇(トライ・ヒュドラ)を撃破しました! 8000 P 加算!】
【『霧降りの谷』の封鎖を解除しました! 4000 P 加算!】
【合計 12000 P 加算。現在 29955 P です】
​勇太は画面を見て、ふっと息を吐いた。
これで南への道が開いた。
そして、この最強のパーティなら、世界のどこへだって行ける。
​「さあ、行こうか。……まずは朝ごはんにしよう」
​勇太の言葉に、仲間たちの腹の虫が、爆音に負けないくらい元気に鳴り響いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

水神飛鳥の異世界茶会記 ~戦闘力ゼロの茶道家が、神業の【陶芸】と至高の【和菓子】で、野蛮な異世界を「癒やし」で侵略するようです~

月神世一
ファンタジー
「剣を下ろし、靴を脱いでください。……茶が入りましたよ」 ​ 猫を助けて死んだ茶道家・水神飛鳥(23歳)。 彼が転生したのは、魔法と闘気が支配する弱肉強食のファンタジー世界だった。 ​チート能力? 攻撃魔法? いいえ、彼が手にしたのは「茶道具一式」と「陶芸セット」が出せるスキルだけ。 ​「私がすべき事は、戦うことではありません。一服の茶を出し、心を整えることです」 ​ゴブリン相手に正座で茶を勧め、 戦場のど真ん中に「結界(茶室)」を展開して空気を変え、 牢屋にぶち込まれれば、そこを「隠れ家カフェ」にリフォームして看守を餌付けする。 ​そんな彼の振る舞う、異世界には存在しない「極上の甘味(カステラ・羊羹)」と、魔法よりも美しい「茶器」に、武闘派の獣人女王も、強欲な大商人も、次第に心を(胃袋を)掴まれていき……? ​「野暮な振る舞いは許しません」 ​これは、ブレない茶道家が、殺伐とした異世界を「おもてなし」で平和に変えていく、一期一会の物語。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

『異世界でSWAT隊長になったが、部下が無職のドラゴンと婚活ウサギしか居ない件について〜 裁けぬ悪は、357マグナムとカツ丼で解決します〜』

月神世一
ファンタジー
「魔法? 知らん。閃光弾(フラバン)食らって手錠にかかれ!」元SWAT隊長が挑む、異世界警察24時! ​【あらすじ】  元ロス市警SWAT隊員の鮫島勇護は、子供を庇って死んだ……はずが、気がつけば異世界の新興国「太郎国」で、特別機動隊『T-SWAT』の隊長になっていた! ​ 支給されたのは、最強のリボルバー『Korth』と現代タクティカルギア。  魔法障壁? ゴム弾で割る。  詠唱? 閃光弾で黙らせる。  騎士道? 知るか、裏から制圧だ。 ​ 圧倒的な実力で凶悪犯を狩る鮫島だったが、彼には致命的な悩みがあった。  ――部下がいない。そして、装備の維持費が高すぎて給料がマイナスだ。 ​ 安くて強い人材を求めた彼が採用したのは……  「火力が強すぎてクビになった無職のドラゴン」  「婚活資金のために戦う、安全靴を履いたウサギ」  さらには、取調室にカツ丼目当てで現れる貧乏アイドルまで!? ​ 法で裁けぬ悪を、357マグナムとカツ丼で解決する!  ハードボイルド(になりきれない)痛快アクションコメディ、開幕!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...