田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

文字の大きさ
59 / 180
第五章 最凶ダンジョン天魔窟

EP 9

しおりを挟む
リーザのカラオケ・リサイタル
 天魔窟のB4階にある、完全防音カラオケボックス『セイレーン』。
 最新の音響設備と、異世界転移者たちの記憶から抽出された楽曲データが揃うこの場所で、今まさに伝説のライブ(練習)が行われようとしていた。
 特大パーティールーム。
 ステージに立つのは、農場専属アイドルとなった人魚姫リーザ。
 プロデューサーの女神ルチアナ(すでに泥酔)がタンバリンを叩き、カイトと勇者リュウ(借金返済の休憩中)が観客としてソファに座っている。
「聴いてください! ルチアナPから授かった、新曲です!」
 リーザがマイクを握りしめ、瞳をキラキラと輝かせた。
「この歌は、古代の戦士『オーエル(OL)』たちが、邪悪な魔王『ジョーシ(上司)』と戦い、伝説になる物語だと聞きました! 心を込めて歌います!」
「……嫌な予感がするな」
 リュウが冷や汗を拭う。
 モニターにタイトルが表示された。
 『サビ残なOLのテーゼ』
「ぶふっ!?」
 リュウがお茶を吹き出した。
 チャラッチャ~♪ チャラッチャ~♪(あの有名なイントロ)
 壮大な音楽と共に、リーザが歌い出す。
(歌い出し)
♪サビ残な上司のように
社畜よ 神話になれ
「うっ……!」
 リュウが胸を押さえて呻く。
 リーザの無垢な美声が、元・サラリーマンの古傷を正確に抉ってくる。
(Aメロ)
♪青いグラフ(営業成績)が 今 胸のドアを叩いても
私だけをただ見つめて 命令(い)いつけるあなた
そっと定時を 求めることに夢中で
労基(運命)さえまだ知らない いたいけな瞳
「やめろ……やめてくれ……」
 リュウが膝から崩れ落ちる。
 「青いグラフ」や「労基」という単語が、呪言(カース)となって彼の精神を蝕む。
 だが、リーザは意味を分かっていないため、悲劇のヒロインになりきって切なく歌い上げる。
(Bメロ)
♪だけどいつか気付くでしょう その背中には
遥か終電 目指すための 羽根があること
「羽根なんてねぇよ! あるのはタクシーチケット(自腹)だけだよ!」
 リュウが涙ながらにツッコミを入れるが、リーザの熱唱は止まらない。
 そして、サビへ突入しようとした――その時だった。
 バァァァァァンッ!!
 防音ドアが物理的に吹き飛んだ。
 入り口に立っていたのは、真珠のドレスを纏い、鬼の形相をした海の女王リヴァイアサンだった。
「リーザ! ここにいましたのね! また変な歌を……!」
「お、お母様!? 練習の邪魔をしないでください!」
「邪魔などしていません! お母様も混ぜなさい!」
「えっ?」
 リヴァイアサンはマイク(2本目)をひったくると、ステージに上がり込んだ。
「私も地上(ここ)に来て、アイドルの動画を研究しましたわ! 娘だけにいい格好はさせません! デュエットですわよ!」
「お母様……! はいっ!」
 母と娘、最強の海洋親子が並び立つ。
 曲はクライマックスのサビへ。
(サビ)
♪サビ残なOLのテーゼ
窓際からやがて飛び立つ(※比喩)
 『窓際ぁぁぁぁぁ~~~~ッ!!』
 リヴァイアサンのオペラ歌手のような超高音が、リーザのアイドルボイスと共鳴する。
 「窓際族」という言葉の哀愁が、物理的な衝撃波となってカラオケルームを揺らす。
♪ほとばしる熱いストレスで
有給を裏切るなら
 パリィィィィンッ!!
 「ストレス」の部分で込められた魔力が臨界点を超え、テーブルの上のグラスと、リュウの眼鏡(伊達)が砕け散った。
♪この稟議(そら)を抱いて輝く
社畜よ 神話になれ
 ズドオオオオオオオオッ!!!!
 歌い終わった瞬間、カラオケマシンの採点機能が限界突破し、爆発した。
 (採点:測定不能・国家転覆レベル)
 †
「はぁ……はぁ……。気持ちいい……!」
 リヴァイアサンが紅潮した顔で肩で息をする。
 リーザも完全燃焼の笑顔だ。
「やりましたね、お母様! 『リンギ』って、きっと世界を救う聖剣の名前ですね!」
「ええ、そうですわね! 稟議を通す……なんて重みのある言葉でしょう!」
 親子は手を取り合い、感動を分かち合っている。
 その対面で。
 勇者リュウは、ソファで真っ白な灰になっていた。
「……稟議……ハンコ……差し戻し……うっ、頭が……」
 カイトが慌てて駆け寄る。
「リュウさん! しっかりして! ここは異世界だよ! もう稟議書なんて書かなくていいんだよ!」
「カイト君……。俺、帰るよ……。ポチ殿の散歩の方が、この歌よりマシだ……」
 リュウはよろよろと部屋を出て行った。
 最強の勇者の心を折ったのは、魔神王でも邪神でもなく、「社畜の歌(パロディ)」だった。
 †
 ちなみに、この時リヴァイアサンの歌声(超音波)は、地下を抜けて地上の海まで届いていた。
 その影響で、ルナミス近海の魚たちが、翌朝なぜか「整列して死んだような目で泳ぐ(通勤ラッシュ泳ぎ)」という奇妙な現象が確認されたが、原因は不明とされている。
 歌って踊って、心を破壊して。
 天魔窟の夜は更けていく。
 だが、遊びすぎたツケは必ず回ってくる。
 神々の手持ちコイン(Kコイン)が、底をつきかけていたのだ。
 次回、神々が労働に目覚める!?
 「カイト農場、経済圏を確立する」へ続く!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん
ファンタジー
すぐに精霊と仲良しになれる孤児のイーアは、召喚術の才能を最強の召喚士に認められ、帝国の名門魔術学校グランドールに入学した。召喚術だけはすごいけどほかはだめ、そんなイーアは、万能天才少年な幼なじみや、いいところも悪いところもある同級生たちといっしょに学園生活を楽しんでいた。だけど、なぜかいつもイーアのことを見守る黄金色の霊獣がいる。  実はイーアは帝国の魔導士に滅ぼされた精霊とともに生きる民の生き残りだった。記憶がもどったイーアは、故郷を滅ぼした白装束の魔導士たちの正体、そして、学校の地下にかくされた秘密を追う。その結果、自分が世界を大きく変えることになるとは知らずに。 (ゆっくり成長。召喚獣は多いけど、バトルは少なめ、10万字に1回くらい戦闘しますが、主人公が強くなるのはだいぶ後です) 小説家になろう、カクヨムにも投稿しました。

『推しの「貧乏騎士」を養うつもりでしたが、正体は「王弟殿下」だったようです。

とびぃ
ファンタジー
応援ありがとうございます。 本作は多くの方にお届けする準備のため、2月6日(金)で、一旦、非公開といたします。 今後の展開については、是非、各電子書籍ストアなどでチェックいただければ幸いです。 短い間でしたが、たくさんのハートとお気に入りを ありがとうございました。 〜「管理人のふり」をして別荘に連れ込まれましたが、過保護な溺愛が止まりません〜 【作品紹介】社畜根性が染み付いた悪役令嬢、推しの『モブ騎士』を養うつもりが、国の裏支配者に溺愛されていました!? ◆あらすじ 「貴方を、私が養います!」  前世はブラック企業の社畜、現世は借金のカタに「豚侯爵」へ売られそうになっていた伯爵令嬢エリーゼ。  絶望的な状況の中、彼女が起死回生の一手として選んだのは、夜会で誰の目にも留まらずに立っていた「推し」の『背景(モブ)騎士』への求婚だった!  実家を捨て、身分を捨て、愛する推しを支える慎ましいスローライフを夢見て駆け落ちしたエリーゼ。  しかし、彼女は知らなかった。  自分が拾ったその騎士の正体が、実は冷酷無比な『影の宰相』にして、国一番の権力者である王弟殿下レオンハルトその人であることを――! ◆見どころポイント ① 勘違いが止まらない!「福利厚生」という名の規格外な溺愛  逃避行の馬車は王族仕様の超高級車、新居は湖畔の豪華別荘、家事は精鋭部隊(暗殺者)が神速で完遂!  あまりの厚遇に「近衛騎士団の福利厚生ってすごいのね!」と斜め上の解釈で感動する元社畜のエリーゼと、そんな彼女を「俺の全権力を使って守り抜く」と誓うレオンハルト様の、噛み合っているようで全く噛み合っていない甘々な新婚(?)生活は必見です。 ② 伝説の魔獣も「わんこ」扱い!?  庭で拾った泥だらけの毛玉を「お洗濯(浄化魔法)」したら、出てきたのは伝説の終焉魔獣フェンリル!  「ポチ」と名付けられ、エリーゼの膝の上を巡ってレオンハルト様と大人気ないマウント合戦を繰り広げる最強のペット(?)との癒やしの日々も見逃せません。 ③ 迫りくる追手は、玄関先で「お掃除(物理)」  エリーゼを連れ戻そうと迫る実家の魔手や悪徳侯爵の刺客たち。  しかし、彼らがエリーゼの目に触れることはありません。なぜなら、最強の執事と「お掃除スタッフ」たちが、文字通り塵一つ残さず「処理」してしまうから!  本人が鼻歌交じりにお菓子を焼いている裏で、敵が完膚なきまでに叩き潰される爽快な「ざまぁ」展開をお楽しみください。 ◆こんな方におすすめ! すれ違い勘違いラブコメが好き! ハイスペックなヒーローによる重すぎる溺愛を浴びたい! 無自覚な主人公が、周りを巻き込んで幸せになる話が読みたい! 悪役たちがコテンパンにされるスカッとする展開が好き!

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界の底辺村で静かに暮らしたいだけなのに、気づけば世界最強の勇者だった件

fuwamofu
ファンタジー
「村の畑を守りたいだけなんだが…?」──勇者召喚に巻き込まれて異世界に来た青年レオン。しかし才能を測る水晶が“無能”を示したため、勇者パーティから追放される。失意のまま辺境の小村でのんびりスローライフを目指すが、土を耕せば豊穣の奇跡、狩りに出れば魔王級を一撃、助けた少女たちは次々と彼に恋をする。 本人はただ平穏に暮らしたいだけなのに、気づけば国を救い、人々に「救世の英雄」と讃えられていた──。 ざまぁ、逆転、ハーレム、爽快、全部乗せ! 無自覚最強スローライフ・ファンタジー開幕!

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

追放された雑用係、実は神々の隠し子でした~無自覚に世界最強で、気づいたら女神と姫と勇者パーティがハーレム化していた件~

fuwamofu
ファンタジー
異世界ギルドの「雑用係」としてコキ使われていた青年レオン。だが彼は、自分が神々の血を継ぐ存在だとは知らなかった。追放をきっかけに本来の力が目覚め、魔王軍・帝国・勇者をも圧倒する無自覚最強へと覚醒する。 皮肉にも、かつて見下していた仲間たちは再び彼に跪き、女神、聖女、王女までが彼の味方に!? 誰もが予想しなかった「ざまぁ」の嵐が、今、幕を開ける——!

処理中です...