田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

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第五章 最凶ダンジョン天魔窟

EP 10

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カイト農場、経済圏を確立する
 地下遊楽施設『天魔窟』がオープンしてから数日が過ぎたある朝。
 B1階のゲームセンターエリアに、絶望のブザー音が響き渡った。
 ブブーーッ!!(残高不足です)
「な、なんですってぇぇぇ!?」
 スロットマシンの前で、魔王ラスティアが悲鳴を上げた。
「回らない……! 私の『確変』がまだ終わっていないのに、なんでリールが回らないのよぉぉ!」
 隣のバッティングセンターでも、竜神デュークが呆然としていた。
「おい、球が出んぞ! あと一発でハイスコア更新なのだ! 早く投げろポンコツ機械!」
 さらに、コンビニ『ダンジョンマート』のレジ前では、勇者リュウが膝から崩れ落ちていた。
「うそだろ……。入荷したばかりの『期間工限定・プレミアム肉まん』が……コイン不足で買えない……!」
 彼らの手持ちの『Kコイン(カイトコイン)』が、底をついたのだ。
 遊びすぎた。あまりにも無計画に、欲望のままに使いすぎた。
 そこへ、管理人の妖精キュルリンが冷酷な笑顔で飛んできた。
「残念でしたー! 『ノーマネー・ノーゲーム』だよ! 遊びたいなら、どうすればいいか分かってるよね?」
 神々と勇者は顔を見合わせた。
 答えは一つ。
 このコインを入手する唯一の手段。
 「「「……働くか」」」
 彼らの目に、かつてないほどの真剣な光(欲望)が宿った。
 †
 数分後。
 地上のカイト農場に、異様な光景が出現した。
 ズガガガガガガッ!!!!
「オラオラオラァ! 雑草ごときが俺の『肉まん』への道を塞ぐなァァッ!」
 勇者リュウが、ユニークスキル【ウェポンズマスター】を発動。
 亜空間から取り出した「聖なる草刈り鎌」を二刀流で振り回し、音速で雑草を刈り取っていく。
 その背中には、「借金返済」と書かれたハチマキが巻かれている。
「フン! 一気に耕してくれるわ! 『アース・ブレイク(耕運ブレス)』!」
 デュークが畑に向かってブレスを吐く。
 精密にコントロールされた衝撃波が、土を瞬時に掘り返し、空気を含ませてフカフカにする。
「水やりなら私に任せて! 『ダーク・レイン(養分入り)』!」
 ラスティアが空に魔法陣を展開し、ミネラルたっぷりの黒い雨を降らせる。
 魔王の魔力を浴びた野菜たちが、みるみるうちに巨大化していく。
 さらに、ドワーフ王ガンテツとアレン少年は、マグナギア(ロボット)を使って収穫作業を行い、リーザとリヴァイアサンは、歌声で植物の成長を促進させる。
「すごい……。みんな、どうしたの?」
 様子を見に来たカイトは、目を丸くした。
 普段はサボりたがる連中が、鬼のような形相で働いている。
「すごい生産効率だよ! いつもの10倍……いや、100倍のスピードで収穫が進んでる!」
 カイトは感動した。
 彼らが「ガチャを回したい」「続きをプレイしたい」という煩悩まみれの動機で動いているとは知らずに。
 †
 その様子を、ログハウスの窓から眺めている男がいた。
 魔族宰相ルーベンスだ。
 彼はコーヒーを啜りながら、帳簿(タブレット端末)を弾いていた。
「……恐ろしい男だ、カイト殿は」
 ルーベンスは眼鏡を光らせた。
「労働の対価としてコインを渡し、そのコインを地下施設で回収する。
 回収されたコイン(魔力)は、ダンジョンの維持エネルギーとなる。
 そして、生産された野菜はフードコートで消費され、さらに彼らの活力となる……」
 完璧なサイクル。
 外部に依存しない、完全自立型の経済圏がここに完成していた。
「遊び(娯楽)を餌に、神や魔王を最底辺の労働力として酷使する……。私のような小者には思いつかない、悪魔的な搾取システムですよ」
 ルーベンスは苦笑し、カイトへの敬意(と畏怖)を新たにした。
 もちろん、カイト本人は「みんな手伝ってくれて嬉しいな!」としか思っていないのだが。
 †
 夕方。
 労働を終えた神々には、大量のKコインと、採れたて野菜の晩御飯が振る舞われた。
「やったー! これでガチャが回せるぞー!」
「今夜こそジャックポットを出してやるわ!」
 リュウもラスティアも、泥だらけの顔で笑い合っている。
 労働の後の飯は美味い。そして、その後のゲームはもっと楽しい。
 カイト農場は、名実ともに「働かざる者食うべからず(遊ぶべからず)」の聖地となったのである。
 宴が盛り上がる中。
 カイトはふと、カウンターの奥に目を向けた。
 そこには、いつもグラスを磨いているはずの鬼神龍魔呂の姿がなかった。
「あれ? 龍魔呂さんは?」
 カイトが首を傾げると、テーブルに一枚の黒い封筒が置かれているのに気づいた。
 『オーナーへ。少し、野暮用を済ませてくる。留守は頼んだ』
 短い書き置き。
 だが、その筆跡からは、隠しきれない殺気が滲んでいた。
「……龍魔呂さん」
 カイトは外に出た。
 満月が照らす夜道を、黒いスーツの男が一人、静かに歩き去っていくのが見えた。
 その背中は、いつもの「優しいマスター」ではなく、かつて裏社会を震え上がらせた「処刑人」のものだった。
「……掃除、か」
 カイトは封筒を強く握りしめた。
 龍魔呂が一人で背負い込もうとしている過去。
 だが、カイト農場に「一人」なんて言葉はない。
「ポチ。……出番だよ」
 カイトの足元で、影が大きく揺らいだ。
 金色の瞳が闇の中で怪しく光る。
 『グルル……(御意。あの男を死なせるわけにはいかんからな)』
 遊びの時間は終わりだ。
 次なる舞台は、欲望と鮮血が渦巻く「闇の地下闘技場(アンダーグラウンド)」。
 カイト農場の「掃除(物理)」が、幕を開ける。
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