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第九章 異議あり!学校法廷
EP 6
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【判決】女神、トイレ掃除50日の刑
静寂に包まれた「絶対不可侵」の法廷。
神の力すら封じられたこの場所で、裁判長である天使長ヴァルキュリアの声が冷徹に響いた。
「被告人、名を名乗られよ」
被告人席の檻の中、ジャージ姿のルチアナが不満げに鼻を鳴らした。
「はぁ!? 私よ私! 創造神ルチアナよ!? ここにいる全員、元を辿れば私から作られた被造物じゃない! その創造主に向かって『名を名乗れ』とは何事よ!」
ルチアナが檻を揺らして抗議する。
だが、ヴァルキュリアは表情一つ変えず、手にした聖槍グラニを「ダンッ!」と卓上に叩きつけた。
「黙れ。 被告人の発言は、こちらから求められた時のみ許可する」
「ひぃッ!?」
元・部下であるヴァルキュリアの、かつてない冷たい視線。
法廷というフィールドにおいては、創造神の権威など紙屑同然だ。
「検察官、起訴状の朗読を」
「はい、裁判長」
検察席のルーベンスが立ち上がった。眼鏡の奥の瞳が、長年の恨みを晴らす喜びにギラリと光っている。
「被告人ルチアナは、学校運営費の**『業務上横領』に加え、部下に対する『ブラック労働の強要』の疑い。さらには……就寝中の『いびきが煩い』**との疑いがかけられています」
「ちょっと!? 最後のはただの悪口でしょ!?」
ルチアナが叫ぶが、ルーベンスは無視して証言台を指し示した。
「証人、入廷。……魔王ラスティア」
「はい、検察官様」
証言台に立ったのは、清楚なブラウス姿(※法廷用の猫かぶり)のラスティアだった。
彼女は困ったように眉を下げ、おずおずと口を開いた。
「私、よくルチアナの部屋に泊まるんですけど……彼女、お酒を飲むとすぐに寝ちゃって。その、いびきが凄くて……中々寝付けなくて困っているんです」
「こらぁ!? 何を言ってるのぉラスティア!?」
ルチアナが檻から身を乗り出した。
「あんたが私のお菓子目当てに、毎晩勝手に私の部屋に来てるんでしょ!? いびきなんてかいてないわよ! それに『ブラック労働』って、あんただって魔王軍をこき使ってる癖に!」
「……心外ですわ」
ラスティアはハンカチで嘘泣きをした。
「そんなまさか。私が魔王軍に無理をさせたとしても、それは全て創造神である貴女の差し金……『世界の均衡を保つために働け』という、貴女の命令があったからですわ。……ねぇ、検察官様?」
ラスティアがルーベンスに秋波を送る。
ルーベンスは大きく頷いた。
「その通りだ。彼女の証言により、魔界のブラック労働の実態は『創造神の過度なノルマ』が原因であることが判明した」
「はあああ!? ラスティア、あんた……!」
ルチアナは悟った。
この魔王、自分の罪(魔王軍の私的利用など)を見逃してもらう代わりに、全ての責任を創造神に押し付けたのだ。
「自分の罪を無くす為に私を司法に売ったなぁ!? 司法取引(プレア・バーギニング)したなぁ!?」
「人聞きが悪いですわね。私はただ、真実を話しただけですわ」
ラスティアは「べー」と小さく舌を出した。
絶体絶命のルチアナ。
彼女は最後の頼みの綱、弁護人席のリベラを見た。
「リ、リベラちゃん! なんとか言ってよ! 私の弁護人でしょ!?」
リベラは静かに六法全書を閉じた。
そして、聖母のような慈愛に満ちた(しかし目は笑っていない)表情で告げた。
「ええ、弁護人の務めですわ。……被告人の罪を、綺麗さっぱり『洗って』差し上げるのもね」
「え?」
「更生こそが最大の弁護。ルチアナさん、素直に罪を認め、汗を流して償いましょう? それが貴女のためですわ」
「み、見捨てられたぁぁぁッ!!」
リベラの方針は「無罪を勝ち取る」ことではなく、「適切な罰を与えて更生させる」ことにシフトしていた。
カイト農場の平和のためには、この駄女神を一度シメておく必要があると判断したのだ。
「もはや審理の必要なし!」
ヴァルキュリアが立ち上がり、聖槍を振り上げた。
陪審員席のカイトたちも「うん、ルチアナが悪いね」「自業自得だワン」と頷いている。
「判決を言い渡す! 被告人ルチアナ!」
ダンッ!!
「主文! 学校運営費の返済に加え……校庭50周! および校舎のトイレ掃除50日の刑に処す!!」
「いやぁぁぁぁ! トイレ掃除なんてしたことないぃぃぃ!」
「連れて行け!」
「待って! 私は神よ! トイレの神様になっちゃうぅぅぅ!」
警備員(ゴーレム)に両脇を抱えられ、ズルズルと退廷させられていくルチアナ。
その情けない絶叫が消えると、法廷の結界が解除され、元の校長室に戻った。
「……ふぅ。正義は執行されましたわね」
リベラは優雅に紅茶を一口飲んだ。
ルーベンスは長年の便秘が解消したような晴れやかな顔をしている。
「ありがとうリベラ殿。これほどスカッとしたのは数百年ぶりだ」
「お礼には及びませんわ。……さて、次はカイト様?」
リベラがクルリとカイトに向き直る。
「貴方の『未認可建築』の件も、追って審理(おはなし)しましょうね?」
「えっ……僕もトイレ掃除?」
カイトが青ざめる。
最強弁護士リベラの加入により、カイト農場に「法と秩序(とトイレ掃除)」という新たな風が吹き始めたのだった。
静寂に包まれた「絶対不可侵」の法廷。
神の力すら封じられたこの場所で、裁判長である天使長ヴァルキュリアの声が冷徹に響いた。
「被告人、名を名乗られよ」
被告人席の檻の中、ジャージ姿のルチアナが不満げに鼻を鳴らした。
「はぁ!? 私よ私! 創造神ルチアナよ!? ここにいる全員、元を辿れば私から作られた被造物じゃない! その創造主に向かって『名を名乗れ』とは何事よ!」
ルチアナが檻を揺らして抗議する。
だが、ヴァルキュリアは表情一つ変えず、手にした聖槍グラニを「ダンッ!」と卓上に叩きつけた。
「黙れ。 被告人の発言は、こちらから求められた時のみ許可する」
「ひぃッ!?」
元・部下であるヴァルキュリアの、かつてない冷たい視線。
法廷というフィールドにおいては、創造神の権威など紙屑同然だ。
「検察官、起訴状の朗読を」
「はい、裁判長」
検察席のルーベンスが立ち上がった。眼鏡の奥の瞳が、長年の恨みを晴らす喜びにギラリと光っている。
「被告人ルチアナは、学校運営費の**『業務上横領』に加え、部下に対する『ブラック労働の強要』の疑い。さらには……就寝中の『いびきが煩い』**との疑いがかけられています」
「ちょっと!? 最後のはただの悪口でしょ!?」
ルチアナが叫ぶが、ルーベンスは無視して証言台を指し示した。
「証人、入廷。……魔王ラスティア」
「はい、検察官様」
証言台に立ったのは、清楚なブラウス姿(※法廷用の猫かぶり)のラスティアだった。
彼女は困ったように眉を下げ、おずおずと口を開いた。
「私、よくルチアナの部屋に泊まるんですけど……彼女、お酒を飲むとすぐに寝ちゃって。その、いびきが凄くて……中々寝付けなくて困っているんです」
「こらぁ!? 何を言ってるのぉラスティア!?」
ルチアナが檻から身を乗り出した。
「あんたが私のお菓子目当てに、毎晩勝手に私の部屋に来てるんでしょ!? いびきなんてかいてないわよ! それに『ブラック労働』って、あんただって魔王軍をこき使ってる癖に!」
「……心外ですわ」
ラスティアはハンカチで嘘泣きをした。
「そんなまさか。私が魔王軍に無理をさせたとしても、それは全て創造神である貴女の差し金……『世界の均衡を保つために働け』という、貴女の命令があったからですわ。……ねぇ、検察官様?」
ラスティアがルーベンスに秋波を送る。
ルーベンスは大きく頷いた。
「その通りだ。彼女の証言により、魔界のブラック労働の実態は『創造神の過度なノルマ』が原因であることが判明した」
「はあああ!? ラスティア、あんた……!」
ルチアナは悟った。
この魔王、自分の罪(魔王軍の私的利用など)を見逃してもらう代わりに、全ての責任を創造神に押し付けたのだ。
「自分の罪を無くす為に私を司法に売ったなぁ!? 司法取引(プレア・バーギニング)したなぁ!?」
「人聞きが悪いですわね。私はただ、真実を話しただけですわ」
ラスティアは「べー」と小さく舌を出した。
絶体絶命のルチアナ。
彼女は最後の頼みの綱、弁護人席のリベラを見た。
「リ、リベラちゃん! なんとか言ってよ! 私の弁護人でしょ!?」
リベラは静かに六法全書を閉じた。
そして、聖母のような慈愛に満ちた(しかし目は笑っていない)表情で告げた。
「ええ、弁護人の務めですわ。……被告人の罪を、綺麗さっぱり『洗って』差し上げるのもね」
「え?」
「更生こそが最大の弁護。ルチアナさん、素直に罪を認め、汗を流して償いましょう? それが貴女のためですわ」
「み、見捨てられたぁぁぁッ!!」
リベラの方針は「無罪を勝ち取る」ことではなく、「適切な罰を与えて更生させる」ことにシフトしていた。
カイト農場の平和のためには、この駄女神を一度シメておく必要があると判断したのだ。
「もはや審理の必要なし!」
ヴァルキュリアが立ち上がり、聖槍を振り上げた。
陪審員席のカイトたちも「うん、ルチアナが悪いね」「自業自得だワン」と頷いている。
「判決を言い渡す! 被告人ルチアナ!」
ダンッ!!
「主文! 学校運営費の返済に加え……校庭50周! および校舎のトイレ掃除50日の刑に処す!!」
「いやぁぁぁぁ! トイレ掃除なんてしたことないぃぃぃ!」
「連れて行け!」
「待って! 私は神よ! トイレの神様になっちゃうぅぅぅ!」
警備員(ゴーレム)に両脇を抱えられ、ズルズルと退廷させられていくルチアナ。
その情けない絶叫が消えると、法廷の結界が解除され、元の校長室に戻った。
「……ふぅ。正義は執行されましたわね」
リベラは優雅に紅茶を一口飲んだ。
ルーベンスは長年の便秘が解消したような晴れやかな顔をしている。
「ありがとうリベラ殿。これほどスカッとしたのは数百年ぶりだ」
「お礼には及びませんわ。……さて、次はカイト様?」
リベラがクルリとカイトに向き直る。
「貴方の『未認可建築』の件も、追って審理(おはなし)しましょうね?」
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