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第十六章 月兎の初陣と、鬼神の深夜食堂
EP 2
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【任務】農場警備隊長キャルル、爆誕
「えへへ……『期待している』……期待されちゃった……♡」
カイト農場の納屋の前。
キャルルは、愛用の『鉄芯入り安全靴』を専用のクロスで磨きながら、にやけ顔が止まらなかった。
龍魔呂に頭を撫でられた感触が、まだ残っている。
あの強面でクールな鬼神が、自分にだけ見せた(と信じ込んでいる)優しい表情。
「もう、龍魔呂さんったら……。私に『警備』を任せるなんて、つまり私の強さを認めてくれたってことですよね? もしかして、これって共同作業? 実質的なパートナー宣言!?」
キャルルの脳内恋愛回路は、マッハ1で暴走していた。
「よしっ! ピカピカ!」
磨き上げられた安全靴のつま先が、鏡のように光る。
キャルルは靴紐をキュッと締め上げ、立ち上がった。
「任せてください、龍魔呂さん! 貴方が安心して料理に専念できるように、この農場の平和は私が守ります!」
キャルルはビシッと敬礼をした。
自称・『カイト農場警備隊長』の誕生である。
◇
「異常なーし! 次!」
シュバッ!!
ピンク色の影が、農場の外周を疾走する。
100mを5秒台で走るキャルルのパトロールは、傍から見ればピンク色の暴風だ。
「西の森、異常なし! 東の街道、行商人のおじさんのみ! 南の牧草地、フェンリルさんが昼寝中!」
キャルルのうさ耳がレーダーのように動き、周囲の音を拾う。
「ふふん、私の聴覚からは逃げられませんよぉ!」
彼女のやる気は過剰だった。
カイトの畑で、カラスが一羽、トマトを狙おうとした瞬間――。
「確保ぉぉぉッ!!」
ドガァッ!!
「カァッ!?」
キャルルが三角跳びで飛来し、空中でカラスを蹴散らした(手加減済み)。
「こらっ! カイトさんの野菜は売り物ですよ! 盗み食いはメッ! です!」
落ちてきた羽根をキャッチして着地するキャルル。
そこへ、農作業中のカイトが顔を出した。
「おーい、キャルルちゃん。すごい動きだね、何してるの?」
「あ、カイトさん! 今、警備中なんです!」
キャルルが胸を張る。
「龍魔呂さんから直々に任命されたんです! 『俺の代わりに守れ』って!」
「へえ、龍魔呂さんが? それは助かるなぁ。最近、湿地帯の方で魔物が増えてるって噂だし」
「任せてください! 不審者はこの安全靴で、お星様にしてみせますから!」
「ははは、頼もしいね。じゃあ、後でお駄賃に人参ジュースあげるね」
「わぁい! ありがとうございます!」
カイトの笑顔(と人参)に癒やされつつも、キャルルの心は燃えていた。
(見ていてください龍魔呂さん……。私がどれだけ役に立つ女か、証明してみせます!)
◇
そして、夕暮れ時。
農場が茜色に染まる頃、キャルルは北側の境界線に立っていた。
そこは、鬱蒼とした湿地帯へと続く森の入り口だ。
「ん……?」
キャルルの長い耳が、ピクリと動いた。
パトロールの足を止める。
(……匂う)
彼女の鼻がひくついた。
美味しい人参の匂いではない。
生臭い、泥と鉄錆のような臭気。
そして、湿った地面を踏みしめる、無数の足音。
ザッ……ザッ……ザッ……。
「……数が多い。10……20……いいえ、100近く?」
キャルルの赤い瞳が細められた。
乙女の顔から、戦士の顔へと変わる。
「カイトさんの野菜を狙う泥棒さんたちですね……?」
茂みの奥から、ギラギラとした爬虫類の瞳が無数に光った。
武装したリザードマンの群れだ。
「ふふ……ちょうどいいです」
キャルルは安全靴のつま先で、地面をトン、と叩いた。
「龍魔呂さんに褒められるための、最初の手柄……。全・員・蹴・り・飛・ば・し・て・あ・げ・ま・す・♡」
恋するウサギの安全靴が、不穏な闘気を纏って輝き始めた。
「えへへ……『期待している』……期待されちゃった……♡」
カイト農場の納屋の前。
キャルルは、愛用の『鉄芯入り安全靴』を専用のクロスで磨きながら、にやけ顔が止まらなかった。
龍魔呂に頭を撫でられた感触が、まだ残っている。
あの強面でクールな鬼神が、自分にだけ見せた(と信じ込んでいる)優しい表情。
「もう、龍魔呂さんったら……。私に『警備』を任せるなんて、つまり私の強さを認めてくれたってことですよね? もしかして、これって共同作業? 実質的なパートナー宣言!?」
キャルルの脳内恋愛回路は、マッハ1で暴走していた。
「よしっ! ピカピカ!」
磨き上げられた安全靴のつま先が、鏡のように光る。
キャルルは靴紐をキュッと締め上げ、立ち上がった。
「任せてください、龍魔呂さん! 貴方が安心して料理に専念できるように、この農場の平和は私が守ります!」
キャルルはビシッと敬礼をした。
自称・『カイト農場警備隊長』の誕生である。
◇
「異常なーし! 次!」
シュバッ!!
ピンク色の影が、農場の外周を疾走する。
100mを5秒台で走るキャルルのパトロールは、傍から見ればピンク色の暴風だ。
「西の森、異常なし! 東の街道、行商人のおじさんのみ! 南の牧草地、フェンリルさんが昼寝中!」
キャルルのうさ耳がレーダーのように動き、周囲の音を拾う。
「ふふん、私の聴覚からは逃げられませんよぉ!」
彼女のやる気は過剰だった。
カイトの畑で、カラスが一羽、トマトを狙おうとした瞬間――。
「確保ぉぉぉッ!!」
ドガァッ!!
「カァッ!?」
キャルルが三角跳びで飛来し、空中でカラスを蹴散らした(手加減済み)。
「こらっ! カイトさんの野菜は売り物ですよ! 盗み食いはメッ! です!」
落ちてきた羽根をキャッチして着地するキャルル。
そこへ、農作業中のカイトが顔を出した。
「おーい、キャルルちゃん。すごい動きだね、何してるの?」
「あ、カイトさん! 今、警備中なんです!」
キャルルが胸を張る。
「龍魔呂さんから直々に任命されたんです! 『俺の代わりに守れ』って!」
「へえ、龍魔呂さんが? それは助かるなぁ。最近、湿地帯の方で魔物が増えてるって噂だし」
「任せてください! 不審者はこの安全靴で、お星様にしてみせますから!」
「ははは、頼もしいね。じゃあ、後でお駄賃に人参ジュースあげるね」
「わぁい! ありがとうございます!」
カイトの笑顔(と人参)に癒やされつつも、キャルルの心は燃えていた。
(見ていてください龍魔呂さん……。私がどれだけ役に立つ女か、証明してみせます!)
◇
そして、夕暮れ時。
農場が茜色に染まる頃、キャルルは北側の境界線に立っていた。
そこは、鬱蒼とした湿地帯へと続く森の入り口だ。
「ん……?」
キャルルの長い耳が、ピクリと動いた。
パトロールの足を止める。
(……匂う)
彼女の鼻がひくついた。
美味しい人参の匂いではない。
生臭い、泥と鉄錆のような臭気。
そして、湿った地面を踏みしめる、無数の足音。
ザッ……ザッ……ザッ……。
「……数が多い。10……20……いいえ、100近く?」
キャルルの赤い瞳が細められた。
乙女の顔から、戦士の顔へと変わる。
「カイトさんの野菜を狙う泥棒さんたちですね……?」
茂みの奥から、ギラギラとした爬虫類の瞳が無数に光った。
武装したリザードマンの群れだ。
「ふふ……ちょうどいいです」
キャルルは安全靴のつま先で、地面をトン、と叩いた。
「龍魔呂さんに褒められるための、最初の手柄……。全・員・蹴・り・飛・ば・し・て・あ・げ・ま・す・♡」
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