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EP 48
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大地を揺るがす咆哮、太郎倒れる
幾多の魔獣を退け、数々の罠を潜り抜けた太郎たちは、ついにダンジョンの最下層へと到達した。
そこには、今までとは異質な、重厚で巨大な扉がそびえ立っていた。
「これが、最後の扉……」
扉の隙間から漏れ出るプレッシャーに、ピカリですら『怖い……』と太郎のフードの中に隠れるほどだ。
「行きましょう、太郎さん。私達なら大丈夫です」
サリーが震える太郎の手をギュッと握る。
「あぁ! ここまで来たら引けない!」
太郎は覚悟を決め、巨大な扉を押し開けた。
ボスフロアは、ドーム状の広大な空間だった。
その中央に、小山のような巨体が鎮座していた。
紫色の剛毛、ねじれた二本の巨大な角、そして丸太のような四肢。
「ブモオオオオオオ……」
その怪物がゆっくりと立ち上がると、地響きと共にフロア全体が震えた。
大地を支配する伝説の魔獣、ベヒーモスだ。
「ベヒーモス!? そんな……伝説級の魔物か!?」
ライザが驚愕に目を見開く。ドラゴンと並ぶ、あるいは地上戦においてはそれ以上の脅威とされるSランクモンスター。
「よし! 行くぞ! 先手必勝だ!」
太郎は躊躇わず、最強の一手を選んだ。
相手が伝説だろうと関係ない。これで終わらせる。
弓を構え、漆黒の「必殺の矢」をつがえる。
「喰らえぇぇぇッ!!」
シュッ!!
風切り音と共に放たれた矢は、ベヒーモスの眉間へ向かって一直線に進む。
だが、怪物は逃げも隠れもしなかった。ただ、大きく息を吸い込んだだけだ。
「ブモオオオオオオオオオッッ!!!」
ベヒーモスが凄まじい雄叫びを上げた。
それは単なる声ではない。物理的な破壊力を伴う衝撃波(ソニックブーム)となり、前方へと噴出した。
ドォォォォン!!
「なっ!?」
空中で必殺の矢が衝撃波と衝突し、爆発する前に弾き飛ばされ、壁に激突して無意味な火花を散らした。
「何!? そんな馬鹿な!?」
ドラゴンの風圧をも超える、咆哮による無力化。
呆然とする太郎を尻目に、ベヒーモスが地面を蹴った。
ドズンッ! ドズンッ!
巨大な戦車が突っ込んでくるようなものだ。速い。巨体に似合わず、恐ろしく速い。
「来ます!!」
「地の神よ! 我が盾となれ! 『ロック・シールド』!!」
サリーが咄嗟に前に出て杖を掲げる。
地面から分厚い岩盤が隆起し、幾重もの壁となってベヒーモスの進路を塞いだ。
だが。
ズドォォォォン!!
ベヒーモスは止まらなかった。
岩の壁を紙細工のように粉砕し、その勢いのまま突進を続ける。
「キャァッ!?」
サリーが爆風で吹き飛ばされる。
そして、砕け散った岩の破片――鋭利な礫(つぶて)が、散弾銃のように後方の太郎を襲った。
「ぐぅっ……!!」
ドスッ!
大きな岩片が太郎の脇腹と頭部を直撃した。
太郎の体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。
「ゴフッ……!」
口から大量の鮮血が吐き出された。肋骨が折れ、内臓にダメージがいった感触。視界が赤く染まる。
「た、太郎さん!!」
その光景を見た瞬間、ライザの中で何かが切れた。
「おのれぇぇぇッ!! 私の愛する人をッ!!」
ライザは激昂し、獣のような咆哮と共に飛び出した。
恐怖も冷静さも捨て、ただ殺意のみを剣に乗せる。
「ハァァァァッ!!」
彼女はベヒーモスの懐に潜り込み、その丸太のような右脚を斬りつけた。
ザクッ!
深々と刃が通り、鮮血が噴き出す。
「ブモッ!?」
初めて痛みを感じたベヒーモスが、鬱陶しそうにライザを振り払おうとする。
一方、サリーは血を流して倒れる太郎の元へ這い寄った。
「太郎さん! しっかりして! 死なないで!」
サリーの目から涙が溢れる。
震える手で太郎の胸に触れ、最大出力の回復魔法を注ぎ込む。
「癒やしの光よ! お願い、彼を助けて!!」
温かな光が太郎を包むが、太郎の意識は急速に遠のいていく。
寒い。痛い。音が遠い。
(ど、どうすれば……勝てるんだ……)
薄れゆく視界の端で、怒り狂うライザと、暴れる怪物の姿が見えた。
このままでは、全滅する。
何か、何か手はないか……。
太郎の手から力が抜け、ついに意識が闇へと落ちていった。
幾多の魔獣を退け、数々の罠を潜り抜けた太郎たちは、ついにダンジョンの最下層へと到達した。
そこには、今までとは異質な、重厚で巨大な扉がそびえ立っていた。
「これが、最後の扉……」
扉の隙間から漏れ出るプレッシャーに、ピカリですら『怖い……』と太郎のフードの中に隠れるほどだ。
「行きましょう、太郎さん。私達なら大丈夫です」
サリーが震える太郎の手をギュッと握る。
「あぁ! ここまで来たら引けない!」
太郎は覚悟を決め、巨大な扉を押し開けた。
ボスフロアは、ドーム状の広大な空間だった。
その中央に、小山のような巨体が鎮座していた。
紫色の剛毛、ねじれた二本の巨大な角、そして丸太のような四肢。
「ブモオオオオオオ……」
その怪物がゆっくりと立ち上がると、地響きと共にフロア全体が震えた。
大地を支配する伝説の魔獣、ベヒーモスだ。
「ベヒーモス!? そんな……伝説級の魔物か!?」
ライザが驚愕に目を見開く。ドラゴンと並ぶ、あるいは地上戦においてはそれ以上の脅威とされるSランクモンスター。
「よし! 行くぞ! 先手必勝だ!」
太郎は躊躇わず、最強の一手を選んだ。
相手が伝説だろうと関係ない。これで終わらせる。
弓を構え、漆黒の「必殺の矢」をつがえる。
「喰らえぇぇぇッ!!」
シュッ!!
風切り音と共に放たれた矢は、ベヒーモスの眉間へ向かって一直線に進む。
だが、怪物は逃げも隠れもしなかった。ただ、大きく息を吸い込んだだけだ。
「ブモオオオオオオオオオッッ!!!」
ベヒーモスが凄まじい雄叫びを上げた。
それは単なる声ではない。物理的な破壊力を伴う衝撃波(ソニックブーム)となり、前方へと噴出した。
ドォォォォン!!
「なっ!?」
空中で必殺の矢が衝撃波と衝突し、爆発する前に弾き飛ばされ、壁に激突して無意味な火花を散らした。
「何!? そんな馬鹿な!?」
ドラゴンの風圧をも超える、咆哮による無力化。
呆然とする太郎を尻目に、ベヒーモスが地面を蹴った。
ドズンッ! ドズンッ!
巨大な戦車が突っ込んでくるようなものだ。速い。巨体に似合わず、恐ろしく速い。
「来ます!!」
「地の神よ! 我が盾となれ! 『ロック・シールド』!!」
サリーが咄嗟に前に出て杖を掲げる。
地面から分厚い岩盤が隆起し、幾重もの壁となってベヒーモスの進路を塞いだ。
だが。
ズドォォォォン!!
ベヒーモスは止まらなかった。
岩の壁を紙細工のように粉砕し、その勢いのまま突進を続ける。
「キャァッ!?」
サリーが爆風で吹き飛ばされる。
そして、砕け散った岩の破片――鋭利な礫(つぶて)が、散弾銃のように後方の太郎を襲った。
「ぐぅっ……!!」
ドスッ!
大きな岩片が太郎の脇腹と頭部を直撃した。
太郎の体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。
「ゴフッ……!」
口から大量の鮮血が吐き出された。肋骨が折れ、内臓にダメージがいった感触。視界が赤く染まる。
「た、太郎さん!!」
その光景を見た瞬間、ライザの中で何かが切れた。
「おのれぇぇぇッ!! 私の愛する人をッ!!」
ライザは激昂し、獣のような咆哮と共に飛び出した。
恐怖も冷静さも捨て、ただ殺意のみを剣に乗せる。
「ハァァァァッ!!」
彼女はベヒーモスの懐に潜り込み、その丸太のような右脚を斬りつけた。
ザクッ!
深々と刃が通り、鮮血が噴き出す。
「ブモッ!?」
初めて痛みを感じたベヒーモスが、鬱陶しそうにライザを振り払おうとする。
一方、サリーは血を流して倒れる太郎の元へ這い寄った。
「太郎さん! しっかりして! 死なないで!」
サリーの目から涙が溢れる。
震える手で太郎の胸に触れ、最大出力の回復魔法を注ぎ込む。
「癒やしの光よ! お願い、彼を助けて!!」
温かな光が太郎を包むが、太郎の意識は急速に遠のいていく。
寒い。痛い。音が遠い。
(ど、どうすれば……勝てるんだ……)
薄れゆく視界の端で、怒り狂うライザと、暴れる怪物の姿が見えた。
このままでは、全滅する。
何か、何か手はないか……。
太郎の手から力が抜け、ついに意識が闇へと落ちていった。
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