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第三章 世界の秩序
EP 31
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悪魔的遊戯、その名は『ハンバーガー』
ある日の午後。
太郎は自室で頭を抱え、禁断症状に震えていた。
(……食べたい。無性に食べたい……!)
彼の脳裏を支配しているのは、豪華なフレンチでも、繊細な懐石料理でもない。
肉汁滴るパティ、とろけるチーズ、そしてたっぷりのケチャップとマスタード。それをふかふかのバンズで挟み込み、コーラで流し込む……。
(ハンバーガー……! あの下世話で、暴力的で、悪魔的な美味さの塊が食べたい!!)
しかし、ここは異世界アナスタシア。
そんなジャンクフードなど存在しない。
それに、もしこの世界に「ファストフード」を広めてしまったら、国民の健康や食文化が崩壊するのではないか?
(……いや、一回だけだ。僕とサクヤだけで、こっそり楽しむだけなら……神様も許してくれるはず!)
欲望に負けた太郎は、忍び足で厨房へと向かった。
厨房では、サクヤが夕食の仕込みをしていた。
「……太郎様? どうされましたか、そんなにコソコソと」
「しっ! 声が大きいよサクヤ」
太郎は左右を確認し、誰もいないことを確かめると、懐から一冊の本を取り出した。
『100円ショップスキル』で出した【ハンバーガーの作り方(基礎編)】だ。
「これを作って欲しいんだ。言っとくが、僕とサクヤの二人だけの秘密だぞ」
「秘密、ですか?」
サクヤが小首を傾げる。
「あぁ。これは『悪魔の食べ物』だからね。他のみんなに知られると、大変なことになる」
「悪魔の……。承知いたしました。料理人として、その未知なる味、再現してみせましょう」
サクヤの目に職人の火が灯った。
調理が始まった。
サクヤの手際は、ジャンクフードを作るにはあまりにも優雅だった。
牛ひき肉に牛脂を混ぜ込み、粗挽きのパティを作る。
鉄板の上に乗せると、ジュワァァァ……という魅惑的な音と共に、香ばしい煙が立ち上る。
「ここに、特製のチーズを……」
肉の熱でチーズがとろりと溶け出す。
バンズ(パン)は表面をカリッと焼き、新鮮なレタス、トマト、ピクルス、そして太郎特製の「オーロラソース」をたっぷりと。
「出来ましたわ」
目の前に置かれたのは、ファストフード店のそれとは一線を画す、「完全再現・極上ハンバーガー」だった。
溢れ出る肉汁が、バンズに染み込んでいる。
「ゴクリ……。おぉ! 流石はサクヤだ!」
「見た目は武骨ですが……香りは強烈ですね」
「よし、実食だ! いただきまーす!」
太郎は大きな口を開け、豪快にかぶりついた。
ガブッ!
口の中に広がる、肉の暴力とソースの酸味、そしてチーズのコク。
ジャンクでありながら、サクヤの技術で昇華された至高の味。
「う、うぅぅん! これだよ! これ! 脳髄に響く旨さだ!」
太郎は感涙した。
サクヤも、上品に一口食べた。
その瞬間、彼女の碧眼が見開かれた。
「……っ!?」
(な、何でしょうこの味は……! 繊細さの欠片もありません。ただひたすらに、脳が『旨い』と叫ぶような……直接的な快楽!)
「美味しいですわ……。しかし太郎様、この美味しさは危険です……。理性が溶けそうですわ」
「だろう!? だから僕達だけの秘密だ。これがバレたら……」
その時だった。
バンッ!!
厨房のドアが蹴破られた。
「何これ!? 何これ!? 凄く良い匂い!!」
残像が見えるほどの猛スピードで飛び込んできたのは、狼王フェリルだ。
「あ、あ、あ、」
太郎が止める間もなかった。
フェリルは太郎の手元に残っていたハンバーガーをひったくり、一口で飲み込んだ。
バクンッ!
一瞬の静寂。
フェリルの尻尾が、かつてない速度で回転を始めた。
「……!!!」
「お、美味しいいいぃぃぃぃぃッ!!!」
フェリルの絶叫が城中に響き渡った。
「なにこれご主人! 肉とパンと野菜が口の中で喧嘩してるのに仲良しだよ! 意味わかんないけど最高だよ!」
「あぁぁ……終わった……」
太郎が顔を覆う。
フェリルの絶叫を聞きつけ、当然のごとく他のメンバーも集結した。
「何々? 新しい料理ですの?」
フレアが顔を出す。
「太郎様、またサクヤさんと抜け駆けですか?」
サリーがジト目で見る。
「くんくん……この香ばしい匂い、ただ事ではありませんわね」
ライザが喉を鳴らす。
そして、最も厄介な男も現れた。
「ほう……。主よ、我を差し置いて『肉祭り』とは良い度胸だ」
デュークが仁王立ちしていた。
「主達だけでズルいぞ? その手に持っている不思議なパンを寄越せ」
数分後。
そこは戦場と化した。
「サクヤ! おかわりだ! チーズ増し増しで!」(フェリル)
「はいはい、ただいま」
「私はトマト抜きでお願いしますわ! 肉をダブルで!」(ライザ)
「まぁ、なんて下品な食べ方……でも止まりませんわ! ソース多めで!」(フレア)
「このピクルスという酸っぱい野菜、癖になりますね」(サリー)
「うむ! ビールだ! この脂っこさにはラガービールを持ってこい!」(デューク)
サクヤは千手観音のような手さばきで、次々とパティを焼き続ける。
厨房は煙と熱気、そして「旨い!」という歓声に包まれた。
太郎が懸念していた「ハンバーガーのダム」は、呆気なく決壊したのだ。
太郎は、みんなが夢中でジャンクフードを頬張る姿を見ながら、自分の分のハンバーガー(二個目)をかじった。
「悪魔的だもんな……」
口の周りをケチャップだらけにして幸せそうに笑う最強種たちを見て、太郎は呟いた。
「ま、明日からみんなでダイエットすればいっか」
こうして、太郎国に新たな食文化「ハンバーガー」が爆誕した。
後にドワーフたちが「ポテトフライ」の開発に成功し、カロリーのインフレが加速するのは、もう少し先の話である。
ある日の午後。
太郎は自室で頭を抱え、禁断症状に震えていた。
(……食べたい。無性に食べたい……!)
彼の脳裏を支配しているのは、豪華なフレンチでも、繊細な懐石料理でもない。
肉汁滴るパティ、とろけるチーズ、そしてたっぷりのケチャップとマスタード。それをふかふかのバンズで挟み込み、コーラで流し込む……。
(ハンバーガー……! あの下世話で、暴力的で、悪魔的な美味さの塊が食べたい!!)
しかし、ここは異世界アナスタシア。
そんなジャンクフードなど存在しない。
それに、もしこの世界に「ファストフード」を広めてしまったら、国民の健康や食文化が崩壊するのではないか?
(……いや、一回だけだ。僕とサクヤだけで、こっそり楽しむだけなら……神様も許してくれるはず!)
欲望に負けた太郎は、忍び足で厨房へと向かった。
厨房では、サクヤが夕食の仕込みをしていた。
「……太郎様? どうされましたか、そんなにコソコソと」
「しっ! 声が大きいよサクヤ」
太郎は左右を確認し、誰もいないことを確かめると、懐から一冊の本を取り出した。
『100円ショップスキル』で出した【ハンバーガーの作り方(基礎編)】だ。
「これを作って欲しいんだ。言っとくが、僕とサクヤの二人だけの秘密だぞ」
「秘密、ですか?」
サクヤが小首を傾げる。
「あぁ。これは『悪魔の食べ物』だからね。他のみんなに知られると、大変なことになる」
「悪魔の……。承知いたしました。料理人として、その未知なる味、再現してみせましょう」
サクヤの目に職人の火が灯った。
調理が始まった。
サクヤの手際は、ジャンクフードを作るにはあまりにも優雅だった。
牛ひき肉に牛脂を混ぜ込み、粗挽きのパティを作る。
鉄板の上に乗せると、ジュワァァァ……という魅惑的な音と共に、香ばしい煙が立ち上る。
「ここに、特製のチーズを……」
肉の熱でチーズがとろりと溶け出す。
バンズ(パン)は表面をカリッと焼き、新鮮なレタス、トマト、ピクルス、そして太郎特製の「オーロラソース」をたっぷりと。
「出来ましたわ」
目の前に置かれたのは、ファストフード店のそれとは一線を画す、「完全再現・極上ハンバーガー」だった。
溢れ出る肉汁が、バンズに染み込んでいる。
「ゴクリ……。おぉ! 流石はサクヤだ!」
「見た目は武骨ですが……香りは強烈ですね」
「よし、実食だ! いただきまーす!」
太郎は大きな口を開け、豪快にかぶりついた。
ガブッ!
口の中に広がる、肉の暴力とソースの酸味、そしてチーズのコク。
ジャンクでありながら、サクヤの技術で昇華された至高の味。
「う、うぅぅん! これだよ! これ! 脳髄に響く旨さだ!」
太郎は感涙した。
サクヤも、上品に一口食べた。
その瞬間、彼女の碧眼が見開かれた。
「……っ!?」
(な、何でしょうこの味は……! 繊細さの欠片もありません。ただひたすらに、脳が『旨い』と叫ぶような……直接的な快楽!)
「美味しいですわ……。しかし太郎様、この美味しさは危険です……。理性が溶けそうですわ」
「だろう!? だから僕達だけの秘密だ。これがバレたら……」
その時だった。
バンッ!!
厨房のドアが蹴破られた。
「何これ!? 何これ!? 凄く良い匂い!!」
残像が見えるほどの猛スピードで飛び込んできたのは、狼王フェリルだ。
「あ、あ、あ、」
太郎が止める間もなかった。
フェリルは太郎の手元に残っていたハンバーガーをひったくり、一口で飲み込んだ。
バクンッ!
一瞬の静寂。
フェリルの尻尾が、かつてない速度で回転を始めた。
「……!!!」
「お、美味しいいいぃぃぃぃぃッ!!!」
フェリルの絶叫が城中に響き渡った。
「なにこれご主人! 肉とパンと野菜が口の中で喧嘩してるのに仲良しだよ! 意味わかんないけど最高だよ!」
「あぁぁ……終わった……」
太郎が顔を覆う。
フェリルの絶叫を聞きつけ、当然のごとく他のメンバーも集結した。
「何々? 新しい料理ですの?」
フレアが顔を出す。
「太郎様、またサクヤさんと抜け駆けですか?」
サリーがジト目で見る。
「くんくん……この香ばしい匂い、ただ事ではありませんわね」
ライザが喉を鳴らす。
そして、最も厄介な男も現れた。
「ほう……。主よ、我を差し置いて『肉祭り』とは良い度胸だ」
デュークが仁王立ちしていた。
「主達だけでズルいぞ? その手に持っている不思議なパンを寄越せ」
数分後。
そこは戦場と化した。
「サクヤ! おかわりだ! チーズ増し増しで!」(フェリル)
「はいはい、ただいま」
「私はトマト抜きでお願いしますわ! 肉をダブルで!」(ライザ)
「まぁ、なんて下品な食べ方……でも止まりませんわ! ソース多めで!」(フレア)
「このピクルスという酸っぱい野菜、癖になりますね」(サリー)
「うむ! ビールだ! この脂っこさにはラガービールを持ってこい!」(デューク)
サクヤは千手観音のような手さばきで、次々とパティを焼き続ける。
厨房は煙と熱気、そして「旨い!」という歓声に包まれた。
太郎が懸念していた「ハンバーガーのダム」は、呆気なく決壊したのだ。
太郎は、みんなが夢中でジャンクフードを頬張る姿を見ながら、自分の分のハンバーガー(二個目)をかじった。
「悪魔的だもんな……」
口の周りをケチャップだらけにして幸せそうに笑う最強種たちを見て、太郎は呟いた。
「ま、明日からみんなでダイエットすればいっか」
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