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第四章 新たな秩序
EP 5
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王の決断と、火薬庫への招待状
【タロウ城・執務室】
窓の外では、まだ牛丼ブームの余韻が残る城下町の灯りが輝いている。
しかし、執務室の空気は張り詰めていた。
太郎はデスクに広げられた地図――エルフの里とシーラン国の位置、そして魔族の拠点である「ワイズ皇国」の位置関係――を睨みつけていた。
(デデリデと言ったか……あの魔族の言葉。『目的は達した』。そして集められた大量の魂……。間違いない、奴らは本気だ)
太郎は静かに呼び鈴を鳴らした。
「マルス。居るか」
音もなく扉が開き、この国の頭脳である宰相マルスが入室した。
「お呼びでしょうか? 太郎様」
「うむ。……単刀直入に言う。魔王復活の兆しは近い」
太郎の声には、いつもの温厚さはなかった。
「先日の襲撃は、ただの前哨戦に過ぎない。復活するのが『魔王ヴァルス』と『魔王グレンデル』であるならば……生半可な火力では傷一つ付けられんぞ」
「……ッ! やはり、そこまで切迫しておりますか」
マルスも表情を硬くする。
「対抗策として、国営兵器工場へ緊急発注だ。『必殺の矢』の増産を命じる。現在の在庫の3倍……いや、10倍だ」
「じゅ、10倍ですか!?」
マルスが目を剥く。
「それだけではない。対・巨大魔獣用として開発中だった、必殺の矢の弾頭を転用した『対城バリスタ弾』と『長距離魔導大砲』……これも実戦配備へ回せ」
「な……ッ!?」
マルスは絶句した。
『必殺の矢』一本でさえ、小規模なクレーターを作る戦略兵器だ。
それを巨大化させたバリスタや大砲など、もはや「兵器」ではない。「天災」を人工的に起こす装置に等しい。
「し、しかし太郎様! 急激な、それもそこまでの規模の増産は、他国を刺激する恐れがあります!」
マルスはハンカチで額の汗を拭いながら諫言した。
「特に、海を隔てたルナアシア大陸の『グランディス王国』などは、我が国の軍事力に過剰なほど警戒心を抱いているとの情報もあります。この動きを知れば、彼らは『太郎国がついに世界征服に乗り出した』と勘違いし、大陸連合軍を組んで攻めてくるやもしれません!」
「……分かっている」
太郎は重々しく頷いた。
「だが、魔王が復活してしまえば、誤解だなんだと言っている場合じゃなくなる。世界が灰になるんだ。……対抗策には、これしか無いのだ」
太郎の瞳に迷いはなかった。
自国を守るため、そして世界を守るためには、多少の摩擦(外交問題)など飲み込む覚悟だ。
「グランディス王国には、僕から直接、親書を出す。事情を説明すれば、分かってくれるはずだ」
「……はぁ。太郎様がそこまで仰るのであれば」
マルスは深く頭を下げた。
「畏まりました。直ちに工場をフル稼働させ、バリスタと大砲の配備を急がせます」
「頼んだぞ、マルス」
マルスが退室した後、太郎はスキル『100円ショップ』で買った高級万年筆を取り出し、羊皮紙に向かった。
「さて……アルフレッド国王宛て、と」
太郎は誠心誠意、嘘偽りなく筆を走らせた。
【拝啓 グランディス国王 アルフレッド陛下】
【突然のお手紙、失礼致します。マンルシア大陸の太郎です。】
【最近、そちらの大陸でも不穏な空気を感じているかと思いますが、実は近々、伝説の魔王が2体ほど復活しそうです。】
【つきましては、それに対抗するため、我が国では大陸を半分くらい吹き飛ばせるかもしれない兵器を大量生産することにしました。】
【ですが、安心して下さい。これはあくまで対魔王用であり、貴国を侵略する意図は毛頭ございません。】
【むしろ、協力して平和を守りましょう。もし魔王がそちらに行ったら、うちの竜王と不死鳥を派遣して焼き払いますので、ご遠慮なく仰ってください。】
【敬具 太郎】
「よし。これで完璧だ」
太郎は満足げに頷き、封蝋をした。
自分の素直な気持ちと、協力体制への提案。これなら相手も安心するだろうと考えたのだ。
しかし、彼は気づいていなかった。
受け取る側――すでに太郎国を「悪の帝国」と勘違いしているアルフレッド国王――が、この手紙をどう読むかを。
『大陸を半分吹き飛ばす兵器』
『竜王と不死鳥を派遣して焼き払う』
それは、友好の親書という名の、「実質的な脅迫状(宣戦布告)」として海を渡ろうとしていた。
「早く届くといいな」
太郎は爽やかに微笑み、早馬に手紙を託した。
世界が(主に勘違いで)一つになろうとする、混沌の外交戦が始まろうとしていた。
【タロウ城・執務室】
窓の外では、まだ牛丼ブームの余韻が残る城下町の灯りが輝いている。
しかし、執務室の空気は張り詰めていた。
太郎はデスクに広げられた地図――エルフの里とシーラン国の位置、そして魔族の拠点である「ワイズ皇国」の位置関係――を睨みつけていた。
(デデリデと言ったか……あの魔族の言葉。『目的は達した』。そして集められた大量の魂……。間違いない、奴らは本気だ)
太郎は静かに呼び鈴を鳴らした。
「マルス。居るか」
音もなく扉が開き、この国の頭脳である宰相マルスが入室した。
「お呼びでしょうか? 太郎様」
「うむ。……単刀直入に言う。魔王復活の兆しは近い」
太郎の声には、いつもの温厚さはなかった。
「先日の襲撃は、ただの前哨戦に過ぎない。復活するのが『魔王ヴァルス』と『魔王グレンデル』であるならば……生半可な火力では傷一つ付けられんぞ」
「……ッ! やはり、そこまで切迫しておりますか」
マルスも表情を硬くする。
「対抗策として、国営兵器工場へ緊急発注だ。『必殺の矢』の増産を命じる。現在の在庫の3倍……いや、10倍だ」
「じゅ、10倍ですか!?」
マルスが目を剥く。
「それだけではない。対・巨大魔獣用として開発中だった、必殺の矢の弾頭を転用した『対城バリスタ弾』と『長距離魔導大砲』……これも実戦配備へ回せ」
「な……ッ!?」
マルスは絶句した。
『必殺の矢』一本でさえ、小規模なクレーターを作る戦略兵器だ。
それを巨大化させたバリスタや大砲など、もはや「兵器」ではない。「天災」を人工的に起こす装置に等しい。
「し、しかし太郎様! 急激な、それもそこまでの規模の増産は、他国を刺激する恐れがあります!」
マルスはハンカチで額の汗を拭いながら諫言した。
「特に、海を隔てたルナアシア大陸の『グランディス王国』などは、我が国の軍事力に過剰なほど警戒心を抱いているとの情報もあります。この動きを知れば、彼らは『太郎国がついに世界征服に乗り出した』と勘違いし、大陸連合軍を組んで攻めてくるやもしれません!」
「……分かっている」
太郎は重々しく頷いた。
「だが、魔王が復活してしまえば、誤解だなんだと言っている場合じゃなくなる。世界が灰になるんだ。……対抗策には、これしか無いのだ」
太郎の瞳に迷いはなかった。
自国を守るため、そして世界を守るためには、多少の摩擦(外交問題)など飲み込む覚悟だ。
「グランディス王国には、僕から直接、親書を出す。事情を説明すれば、分かってくれるはずだ」
「……はぁ。太郎様がそこまで仰るのであれば」
マルスは深く頭を下げた。
「畏まりました。直ちに工場をフル稼働させ、バリスタと大砲の配備を急がせます」
「頼んだぞ、マルス」
マルスが退室した後、太郎はスキル『100円ショップ』で買った高級万年筆を取り出し、羊皮紙に向かった。
「さて……アルフレッド国王宛て、と」
太郎は誠心誠意、嘘偽りなく筆を走らせた。
【拝啓 グランディス国王 アルフレッド陛下】
【突然のお手紙、失礼致します。マンルシア大陸の太郎です。】
【最近、そちらの大陸でも不穏な空気を感じているかと思いますが、実は近々、伝説の魔王が2体ほど復活しそうです。】
【つきましては、それに対抗するため、我が国では大陸を半分くらい吹き飛ばせるかもしれない兵器を大量生産することにしました。】
【ですが、安心して下さい。これはあくまで対魔王用であり、貴国を侵略する意図は毛頭ございません。】
【むしろ、協力して平和を守りましょう。もし魔王がそちらに行ったら、うちの竜王と不死鳥を派遣して焼き払いますので、ご遠慮なく仰ってください。】
【敬具 太郎】
「よし。これで完璧だ」
太郎は満足げに頷き、封蝋をした。
自分の素直な気持ちと、協力体制への提案。これなら相手も安心するだろうと考えたのだ。
しかし、彼は気づいていなかった。
受け取る側――すでに太郎国を「悪の帝国」と勘違いしているアルフレッド国王――が、この手紙をどう読むかを。
『大陸を半分吹き飛ばす兵器』
『竜王と不死鳥を派遣して焼き払う』
それは、友好の親書という名の、「実質的な脅迫状(宣戦布告)」として海を渡ろうとしていた。
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太郎は爽やかに微笑み、早馬に手紙を託した。
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