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第四章 新たな秩序
EP 7
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二つの絶望、そして血塗られたグランディス
【魔族国・ワイズ皇国 デスピア城地下最深部】
瘴気が渦巻く暗黒の空間。
デデリデは、集められた数万の魂が封じられた水晶を、二つの巨大な石棺の上に掲げた。
「今こそ蘇れ! 我が主たちよ! 忌まわしき封印を破り、この世界に絶望をもたらしたまえ!!」
ドクンッ!!
水晶が砕け散り、魂の奔流が石棺へと吸い込まれていく。
地響きと共に石蓋が弾け飛び、二つの圧倒的な殺気が解き放たれた。
「フハハハ……!! 満ちた。力が満ちたぞ!」
先に起き上がったのは、巨躯の剛腕を持つ古の暴虐王、魔王グレンデル。
彼は全身の筋肉を膨張させ、完全復活の喜びを咆哮した。
「グォォォォォッ!! ……己、忌々しい太郎め……!」
続いて現れたのは、漆黒の翼を持つ堕天使のような姿の魔王、魔王ヴァルス。
彼は蘇った瞬間から、憎悪に瞳を燃やしていた。
「奴に殺された恨みは……この胸に深く刻まれているぞ! 今すぐ奴の喉笛を食いちぎってくれる!」
ヴァルスが即座に転移しようとしたその時、グレンデルが低い声で制した。
「待て、ヴァルスよ」
「あ?」
「貴様はいきなり太郎を狙うな。まずは手始めに……海の向こう、グランディス王国を攻めろ」
ヴァルスが眉をひそめた。
「何? 我に指図するつもりか!? 貴様、何様のつもりだ!? 我は先代魔王だぞ!」
「まぁ良いから聞け。短気な奴め」
グレンデルはニヤリと笑った。
「勇者太郎に復讐したいのは分かる。だが、奴は規格外だ。病み上がりの貴様では返り討ちに合うのがオチだぞ? 一方、グランディスには無力な人間達が沢山いる。……魂は美味いぞ? 恐怖に染まった魂は格別だ」
グレンデルは舌なめずりをした。
「まずはそこでたっぷりと『食事』をして、力を蓄えろ。復讐はそれからでも遅くはあるまい?」
「む? ……魂か」
ヴァルスはピタリと止まった。確かに、封印されていた期間が長く、飢えを感じていた。
「そうだな……。貴様では太郎国に攻めても、どうせ負けるだろうしな(と、言いくるめられたフリをしてやるか)。腹ごしらえしてから、万全の状態で勇者太郎をいたぶってやろう」
「フン、威勢の良い奴よ(馬鹿め、貴様を毒見役にするのだ)」
互いに腹を探り合いながらも、利害は一致した。
ヴァルスは翼を広げた。
「では行ってくる。人間どもの悲鳴を肴に、復活の宴といこうか!」
【ルナアシア大陸・グランディス王国 王都】
その日、王都は「対・太郎国連合軍」の結成式典でごった返していた。
広場には兵士たちが整列し、アルフレッド国王が壇上で熱弁を振るっていた。
「見よ! 我等の結束を! 悪の帝国・太郎国の脅しになど屈しない! 我々が先制攻撃を仕掛け、世界を守るのだ!!」
「ウオオオオオオッ!!」
「打倒・太郎国!!」
民衆の熱気が最高潮に達した、その時である。
ゴロゴロゴロ……!!
突如、晴天だった空が、どす黒い赤色に染まった。
太陽が隠れ、不気味な紅い雲が王都全体を覆い尽くす。
「な、なんだ!? 敵襲か!?」
「太郎国の新兵器か!?」
アルフレッドが空を見上げる。
そこには、漆黒の翼を広げた魔王ヴァルスが、神のごとく浮遊していた。
「フフフ……。活きが良いな、餌ども」
ヴァルスは自らの腕を爪で切り裂いた。
滴り落ちた魔王の血は、魔力によって霧散し、紅い雨となって降り注いだ。
「『魔血の豪雨(ブラッド・レイン)』」
「あ、雨……? 赤い……血か?」
「うわっ、服についた!」
広場にいた兵士や市民たちが、降ってきた赤い雨を浴びる。
次の瞬間。
「ぐ、ぐあああああああッ!?」
「あ、熱い! 体が、体がぁぁぁ!!」
悲鳴が上がった。
雨を浴びた人々の皮膚がボコボコと泡立ち、筋肉が異常に膨張し、目は赤く充血し、口からは牙が生え始めた。
「グルルルルッ……!!」
彼らはもはや人間ではなかった。
破壊衝動のみに支配された、『魔獣(ミュータント)』へと変貌したのだ。
「ひ、ひいいッ!? 兵士がバケモノに!?」
「やめろ! 俺だ! 貴様の隊長だぞ! ギャアアアア!!」
魔獣と化した兵士が、隣の同僚の喉元に食らいつく。
噛まれた者もまた、魔毒に侵され、数秒で魔獣へと変わる。
ネズミ算式に増殖する怪物たち。
「キャアアアア!!」
「助けてくれぇぇぇ!!」
逃げ惑う市民。それを笑いながら引き裂くかつての隣人。
美しい王都は、瞬く間に阿鼻叫喚の地獄へと変わった。
「さぁ、泣け、叫べ、絶望しろ! そして我に魂を捧げよ!!」
上空でヴァルスが高笑いし、立ち昇る魂を深呼吸するように吸い込んでいく。
「力が……力が戻ってくるぞ!!」
【王宮・テラス】
アルフレッド国王は、テラスからその惨劇を呆然と見下ろしていた。
「そ、そんな……」
目の前で、自慢の騎士団が同士討ちを始め、国民が喰らい合っている。
そして空には、手紙にあった「魔王」らしき存在。
アルフレッドの脳裏に、太郎からの手紙の一文が蘇った。
『大陸を半分くらい吹き飛ばせるかもしれない兵器』
『魔王が復活しそうです』
彼の思考は、恐怖によって完全に歪められた。
「やりやがった……!! あの悪魔め!!」
アルフレッドは手すりを掴み、血を吐くように叫んだ。
「これが貴様の言う『兵器』か! 太郎王ぉぉぉッ!! 魔王すら生物兵器として使い、我が国を実験台にしたのかぁぁぁ!!」
「陛下! お逃げください! ここも危険です!」
大臣が叫ぶが、すでに王宮の門も魔獣化した近衛兵によって破られていた。
「嘘つきめ……『侵略する意図はない』だと……? これが……これが貴様のやり方かぁぁぁッ!!」
グランディス王国は、太郎への誤解と憎悪を抱いたまま、本物の魔王によって壊滅しようとしていた。
救いの手(太郎国のバリスタと大砲)は、まだ届かない。
【魔族国・ワイズ皇国 デスピア城地下最深部】
瘴気が渦巻く暗黒の空間。
デデリデは、集められた数万の魂が封じられた水晶を、二つの巨大な石棺の上に掲げた。
「今こそ蘇れ! 我が主たちよ! 忌まわしき封印を破り、この世界に絶望をもたらしたまえ!!」
ドクンッ!!
水晶が砕け散り、魂の奔流が石棺へと吸い込まれていく。
地響きと共に石蓋が弾け飛び、二つの圧倒的な殺気が解き放たれた。
「フハハハ……!! 満ちた。力が満ちたぞ!」
先に起き上がったのは、巨躯の剛腕を持つ古の暴虐王、魔王グレンデル。
彼は全身の筋肉を膨張させ、完全復活の喜びを咆哮した。
「グォォォォォッ!! ……己、忌々しい太郎め……!」
続いて現れたのは、漆黒の翼を持つ堕天使のような姿の魔王、魔王ヴァルス。
彼は蘇った瞬間から、憎悪に瞳を燃やしていた。
「奴に殺された恨みは……この胸に深く刻まれているぞ! 今すぐ奴の喉笛を食いちぎってくれる!」
ヴァルスが即座に転移しようとしたその時、グレンデルが低い声で制した。
「待て、ヴァルスよ」
「あ?」
「貴様はいきなり太郎を狙うな。まずは手始めに……海の向こう、グランディス王国を攻めろ」
ヴァルスが眉をひそめた。
「何? 我に指図するつもりか!? 貴様、何様のつもりだ!? 我は先代魔王だぞ!」
「まぁ良いから聞け。短気な奴め」
グレンデルはニヤリと笑った。
「勇者太郎に復讐したいのは分かる。だが、奴は規格外だ。病み上がりの貴様では返り討ちに合うのがオチだぞ? 一方、グランディスには無力な人間達が沢山いる。……魂は美味いぞ? 恐怖に染まった魂は格別だ」
グレンデルは舌なめずりをした。
「まずはそこでたっぷりと『食事』をして、力を蓄えろ。復讐はそれからでも遅くはあるまい?」
「む? ……魂か」
ヴァルスはピタリと止まった。確かに、封印されていた期間が長く、飢えを感じていた。
「そうだな……。貴様では太郎国に攻めても、どうせ負けるだろうしな(と、言いくるめられたフリをしてやるか)。腹ごしらえしてから、万全の状態で勇者太郎をいたぶってやろう」
「フン、威勢の良い奴よ(馬鹿め、貴様を毒見役にするのだ)」
互いに腹を探り合いながらも、利害は一致した。
ヴァルスは翼を広げた。
「では行ってくる。人間どもの悲鳴を肴に、復活の宴といこうか!」
【ルナアシア大陸・グランディス王国 王都】
その日、王都は「対・太郎国連合軍」の結成式典でごった返していた。
広場には兵士たちが整列し、アルフレッド国王が壇上で熱弁を振るっていた。
「見よ! 我等の結束を! 悪の帝国・太郎国の脅しになど屈しない! 我々が先制攻撃を仕掛け、世界を守るのだ!!」
「ウオオオオオオッ!!」
「打倒・太郎国!!」
民衆の熱気が最高潮に達した、その時である。
ゴロゴロゴロ……!!
突如、晴天だった空が、どす黒い赤色に染まった。
太陽が隠れ、不気味な紅い雲が王都全体を覆い尽くす。
「な、なんだ!? 敵襲か!?」
「太郎国の新兵器か!?」
アルフレッドが空を見上げる。
そこには、漆黒の翼を広げた魔王ヴァルスが、神のごとく浮遊していた。
「フフフ……。活きが良いな、餌ども」
ヴァルスは自らの腕を爪で切り裂いた。
滴り落ちた魔王の血は、魔力によって霧散し、紅い雨となって降り注いだ。
「『魔血の豪雨(ブラッド・レイン)』」
「あ、雨……? 赤い……血か?」
「うわっ、服についた!」
広場にいた兵士や市民たちが、降ってきた赤い雨を浴びる。
次の瞬間。
「ぐ、ぐあああああああッ!?」
「あ、熱い! 体が、体がぁぁぁ!!」
悲鳴が上がった。
雨を浴びた人々の皮膚がボコボコと泡立ち、筋肉が異常に膨張し、目は赤く充血し、口からは牙が生え始めた。
「グルルルルッ……!!」
彼らはもはや人間ではなかった。
破壊衝動のみに支配された、『魔獣(ミュータント)』へと変貌したのだ。
「ひ、ひいいッ!? 兵士がバケモノに!?」
「やめろ! 俺だ! 貴様の隊長だぞ! ギャアアアア!!」
魔獣と化した兵士が、隣の同僚の喉元に食らいつく。
噛まれた者もまた、魔毒に侵され、数秒で魔獣へと変わる。
ネズミ算式に増殖する怪物たち。
「キャアアアア!!」
「助けてくれぇぇぇ!!」
逃げ惑う市民。それを笑いながら引き裂くかつての隣人。
美しい王都は、瞬く間に阿鼻叫喚の地獄へと変わった。
「さぁ、泣け、叫べ、絶望しろ! そして我に魂を捧げよ!!」
上空でヴァルスが高笑いし、立ち昇る魂を深呼吸するように吸い込んでいく。
「力が……力が戻ってくるぞ!!」
【王宮・テラス】
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「そ、そんな……」
目の前で、自慢の騎士団が同士討ちを始め、国民が喰らい合っている。
そして空には、手紙にあった「魔王」らしき存在。
アルフレッドの脳裏に、太郎からの手紙の一文が蘇った。
『大陸を半分くらい吹き飛ばせるかもしれない兵器』
『魔王が復活しそうです』
彼の思考は、恐怖によって完全に歪められた。
「やりやがった……!! あの悪魔め!!」
アルフレッドは手すりを掴み、血を吐くように叫んだ。
「これが貴様の言う『兵器』か! 太郎王ぉぉぉッ!! 魔王すら生物兵器として使い、我が国を実験台にしたのかぁぁぁ!!」
「陛下! お逃げください! ここも危険です!」
大臣が叫ぶが、すでに王宮の門も魔獣化した近衛兵によって破られていた。
「嘘つきめ……『侵略する意図はない』だと……? これが……これが貴様のやり方かぁぁぁッ!!」
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