スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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第五章 月下の宴

EP 8

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王の寝室に響く、救済のラストソング
​【マルシア王国・王城 最上階テラス】
​「遅い……! まだ報告はないのか!」
​マルダ王はワイングラスを片手に、イライラとテラスを歩き回っていた。
計画通りなら、今頃レオンハートの獣人軍が国境を越え、本格的な侵略が始まっているはずだ。そうすれば、自分は「被害者」として世界に訴えることができる。
​「陛下、ご安心を。獣ごときに我々の高度なゲリラ戦術が見抜けるはずも……」
​大臣が言いかけたその時。
​♪~
​夜空から、透き通るような歌声が降ってきた。
​「……ん? なんだ、この歌は」
マルダ王が空を見上げる。
​「女の……歌声? どこから……」
​歌声は次第に大きくなり、それと共に、夜空に**「二つ目の月」**が現れたかのような黄金の光が輝き始めた。
​『大丈夫 また戻ってこれる』
『心配しない 必ず助けるから』
​「ひっ!? な、なんだあれは!!」
​光の正体――全長数百メートルの黄金竜が、音もなくテラスの目の前に降下してきたのだ。
その圧倒的な神気に当てられ、衛兵たちは槍を取り落とし、腰を抜かした。
​バサァァッ……!
​竜が空中で静止すると、その背からスポットライト(デュークの魔力光)を浴びたリーザが、テラスを見下ろして歌い上げた。
​『必ず会えるよ 何度でも』
『雲が光を遮っても その輝きは消えたりしない』
​「う、うわあああ! 魔物だ! 竜だ! 出会え! 出会えぇぇ!」
マルダ王は尻餅をつき、ワインをぶちまけながら悲鳴を上げた。
しかし、駆けつけた近衛兵たちも、リーザの歌声に心を奪われ、誰も動こうとしない。
​「こんばんは、マルダ王」
​竜の背から、太郎がひょいとテラスの手すりに飛び乗った。
続いて、ボロボロのシャツを着たレオが静かに降り立つ。
​「き、貴様らは……!?」
​「僕は太郎国の佐藤太郎。……そしてこっちが、君が『野蛮なケダモノ』と呼んで挑発し続けた、レオンハート国の王様だ」
​太郎がレオを紹介する。
レオはマルダ王を冷ややかに見下ろした。怒りではない。哀れみを含んだ瞳で。
​「ひっ……! こ、殺される……! 金か!? 領土か!? 何でもやる! だから命だけは……!」
​マルダ王はガタガタと震え、レオの足元に縋り付いた。
自らが犯した罪の重さを知っているからこそ、報復の恐怖に支配されているのだ。
​レオはゆっくりと手を上げた。
マルダ王が「殴られる」と思い込み、目を瞑って縮こまる。
​しかし。
レオの手は、マルダ王の震える肩に優しく置かれただけだった。
​「……怯えるな」
​「へ……?」
​「俺たちは、奪いに来たんじゃない。……『道』を教えに来たんだ」
​その言葉に合わせるように、リーザの歌声がサビの最高潮を迎える。
​『だから月は変わらず 信じる者に愛を与え』
『足元を照らすように 等しい自分であるために』
『静かに夜を見守り続ける』
​リーザの歌声が、マルダ王の心に直接響いた。
かつて王位を継いだ日のこと。
「民を守り、国を豊かにしたい」と純粋に願っていた、若き日の自分。
いつからだ。欲に目がくらみ、他者を踏みにじり、自分さえ良ければいいと思うようになったのは。
暗闇の中で迷子になっていたのは、獣人たちではなく、自分自身だったのだ。
​「う……うぅ……」
​マルダ王の目から、大粒の涙が溢れ出した。
恐怖の涙ではない。悔恨と、浄化の涙だった。
​「わ、私は……なんてことを……」
​マルダ王はその場に崩れ落ち、子供のように泣き出した。
​「すまなかった……。本当に、すまなかった……!」
​地面に額を擦り付け、謝罪する王。
レオは何も言わず、ただ静かにその背中を見守っていた。かつて、自分が太郎にそうされたように。
​太郎は満足げに頷き、歌い終えたリーザに向かってサムズアップを送った。
​「お疲れ様、歌姫。最高のステージだったよ」
​「ふぅ……! 緊張しましたわ!」
リーザはマイクを下ろし、安堵のため息をついた。
「でも、気持ちよかったですわ! これでギャラアップ間違いなしですわね!」
​戦場には静寂が戻り、空には本物の月だけが優しく輝いていた。
​後日。
マルシア王国とレオンハート王国の間で、正式な不可侵条約と通商協定が結ばれた。
調印式のテーブルには、高級ワインの代わりに、日本の「缶ビール」と「柿の種」が置かれていたという。
​そして、その歴史的な和解の立役者として、一人の貧乏人魚姫の名が、伝説の歌姫として世界に刻まれることになるのだが――それはまた、別のお話。
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