FPS世界ランク1位の凸スナ、ニートを辞めて異世界でエンジニアになる~工業高校の資格と現代兵器で、健気なドワーフ娘を救い天下を取る~

月神世一

文字の大きさ
25 / 53

EP 25

しおりを挟む
招き猫の待つ巨大商社
「ふふっ、完璧な仕上がりね」
工房の作業台に積み上げられた、深紅の『コンバット・スーツ(試作型)』の山。
レッドオーガの革とドワーフ鋼、そして英一の知識(MOLLEシステム)が融合したその装備は、この世界の既存の鎧とは一線を画す、洗練された機能美を放っていた。
「コンバット装備が完成したわね。……我ながら、歴史を変える発明だわ」
マイユが満足げに頷く。
「さて、卸しに行くんだな。やっぱりバントクさんの『ミスリルの牙』か?」
英一が尋ねる。バントクとは剣の取引で良好な関係を築いている。
「あそこは武器屋じゃないのか? 防具も扱うのか?」
「そうね……バントクさんも良い人だけど、今回のこれは規模が違うわ。提携先は多いに越した事はないから……そうね、『ゴルド商会』なんてどうかしら?」
マイユの提案に、荷造りを手伝っていたラウスの手が止まった。
「ゴ、ゴルド商会だと!?」
「ゴルド商会? 有名なのか?」
「有名どころじゃねぇよ! 大陸全土に支店を持つ、バケモノみてぇな巨大商社だぞ!? 王族や貴族御用達で、俺たちみたいな一介の冒険者や職人が気軽に取引できる相手じゃねぇ!」
ラウスが目を白黒させる。
彼にとってゴルド商会は、雲の上の存在であり、入店するだけで緊張するような場所だ。
「はっきり言って、このコンバット装備の革新性と価値を正しく理解し、適正な高値で買い取れる資金力があるのは、あそこ位な物よ」
マイユは真剣な眼差しで言った。
良い物は、良い場所に置くべきだ。それが職人としてのプライドであり、英一の知識に対する敬意でもあった。
「……分かった。マイユに任せるよ。俺はこっちの商売のことは分からないからな」
「英一さん……ありがとう。じゃあ、行きましょう! 道場破りならぬ、商会破りよ!」
三人は荷車に完成したコンバットスーツを積み込み、大通りを進んだ。
やがて目の前に現れたのは、周囲の建物を見下ろすような、白亜の巨大なビルだった。
入り口には屈強な警備兵が立ち、磨き上げられたガラス扉の奥には、高級ホテルのようなロビーが広がっている。
『ゴルド商会 スタラント支店』
「で、デカいな……」
「お、俺、帰っていいか? 腹痛が……」
英一が圧倒され、ラウスが怖気づく中、マイユは堂々と正面玄関へと進んでいく。
「すみません!」
マイユの声がロビーに響く。
受付カウンターには数人の従業員がいたが、それよりも早く、ロビーの奥から一人の少女が音もなく現れた。
小柄な体躯に、艶やかな黒髪。ぴんと立った三毛の猫耳と、チャイナドレス風の衣装から伸びる長い尻尾。
一見すると愛くるしい看板娘のようだが、その所作には一切の隙がない。
「はい、如何いたしましたかニャ?」
少女――ゴルド商会スタラント支店長、ナーコは、鈴を転がすような声で微笑んだ。
(……ほう?)
ナーコの切れ長の瞳が、一瞬だけ鋭く細められる。
彼女のユニークスキル『真贋の魔眼』が、自動的に客を査定する。
先頭のドワーフの少女。若いが、その腕には神業的な鍛冶の痕跡。
後ろの熊獣人の大男。着ている防具……見たことのない構造。素材はレッドオーガだが、加工精度が異常に高い。魔力干渉も最適化されている。
そして、真ん中の人間の男。
身につけている服も、背負っている黒い筒も、この世界の常識から外れている。測定不能(エラー)。だが、内包する「価値」の光が強すぎて目が眩むほどだ。
(こいつは……久しぶりに『特大の金貨』の匂いがするニャ♡)
ナーコの尻尾が、嬉しそうにゆらりと揺れた。
本来なら、予約のない飛び込みの客など門前払いだ。ましてや支店長が直々に対応することなどありえない。
だが、彼女の商売人としての本能が警鐘を鳴らしている。「こいつらを逃すな」と。
「アタシ達は『エイイチ&マイユ工房』の者です。今日は新しい防具の商談に来ました!」
マイユが緊張しつつも名乗りを上げる。
「エイイチ&マイユ工房……ニャるほど」
ナーコは扇子で口元を隠し、営業用の完璧な笑顔を崩さずに言った。
「ようこそお越しくださいました。私は支店長のナーコと申します。……ふふ、素敵な商品をお持ちのようですニャ。奥のVIPルームで、たっぷりお話を聞かせていただけますか?」
「えっ? 支店長!? しかもVIPルーム!?」
ラウスが驚愕して素っ頓狂な声を上げる。
マイユも予想外の待遇に目を丸くしたが、英一だけは冷静にナーコを見ていた。
(……この子、目が笑ってないな。それに頭の上のマーカー……『金色(ゴールド)』?)
英一のUIに表示されたのは、敵でも味方でもない、特別な色。
それは、この少女がただの可愛い猫耳族ではなく、一筋縄ではいかない「怪物」であることを示していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ
ファンタジー
【短いあらすじ】 普通を勘違いした魔界育ちの少女が、王都に旅立ちうっかり無双してしまう話(前世は病院少女なので、本人は「超健康な身体すごい!!」と無邪気に喜んでます) 【まじめなあらすじ】  主人公のフィアナは、前世では一生を病院で過ごした病弱少女であったが……、 「健康な身体って凄い! 神さま、ありがとう!(ドラゴンをワンパンしながら)」  転生して、超健康な身体(最強!)を手に入れてしまう。  魔界で育ったフィアナには、この世界の普通が分からない。  友達を作るため、王都の学園へと旅立つことになるのだが……、 「なるほど! 王都では、ドラゴンを狩るには許可が必要なんですね!」 「「「違う、そうじゃない!!」」」  これは魔界で育った超健康な少女が、うっかり無双してしまうお話である。 ※他サイトにも投稿中 ※旧タイトル 病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

処理中です...