FPS世界ランク1位の凸スナ、ニートを辞めて異世界でエンジニアになる~工業高校の資格と現代兵器で、健気なドワーフ娘を救い天下を取る~

月神世一

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EP 24

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赤鬼の革と、マイユ印のコンバット・スーツ
翌朝。
英一、マイユ、ラウスの三人は、清々しい顔で工房の作業エリアに立っていた。
作業台の上には、昨日命がけで手に入れた『レッドオーガの皮』と、工房秘蔵の『ドワーフ鋼』が所狭しと並べられている。
「えっと~、レッドオーガの素材も手に入れたし、ドワーフ鋼もある……。最高の条件が整いましたわ!」
マイユは真紅の革を撫でながら、うっとりとした表情を浮かべた。
レッドオーガの皮は、鋼鉄並みの強度を持ちながら、ゴムのような柔軟性を併せ持つ最高級素材だ。
「あぁ、そうだね。これなら、俺の防弾チョッキ以上の性能が出せるかもしれない」
英一も設計図(羊皮紙にボールペンで書いたもの)を見ながら頷く。
視界に映るマイユとラウスのマーカーは、鮮やかな『青色』。
背中を預けられる仲間がいる安心感が、英一の思考をよりクリエイティブにさせていた。
「じゃあ、世界初の『マイユ印(ブランド)・コンバット装備』作るわよ~!」
マイユがエプロンの紐をキリッと締め直し、ハンマーを高らかに掲げた。
「お、おう! 気合が入ってるな。……で、俺は何をすればいい?」
ラウスが困ったように頭をかいた。
元戦士で力自慢の彼だが、繊細な魔導具作成や鍛冶のスキルはない。手持ち無沙汰になりかけていた。
「ラウスさんには重要な任務があります!」
「重要な任務……?」
「ええ。出来上がったコンバットスーツの『品質チェック』ね。実際に着て動いてもらって、生の冒険者目線での感想が欲しいの!」
マイユがビシッと指差す。
「なるほど、テスターってわけか。俺の体なら少々締め付けがきつくても大丈夫だ。分かったぜ!」
ラウスは自分の大胸筋をドンと叩いて引き受けた。
作業が始まった。
工房に、魔導炉の轟音と、金槌の音が響き渡る。
「まずは『プレート』の作成だ。ドワーフ鋼に黒曜石の粉末を混ぜて、セラミックのような硬度を持たせる」
英一の指示に従い、マイユが魔力を込めてインゴットを叩く。
火花が散るたびに、不純物が抜け、漆黒の輝きを放つプレートが形成されていく。
「次は生地の縫製ね! レッドオーガの革を何層にも重ねて……」
マイユはミシンのような魔導縫製機を操り、分厚い革を縫い合わせていく。
英一が提案したのは、現代の軍用装備の基本である『MOLLE(モール)システム』の導入だ。
革の表面に、一定間隔で帯(ウェビング)を縫い付けることで、ポーチやナイフホルダーを自由な位置に取り付けられるようにする。
「すごい……この『帯』をつけるだけで、装備の拡張性が無限になりますわ! 剣士なら予備の剣を、魔法使いならポーションを、好きな場所に付けられるなんて!」
「だろ? これが『モジュラーシステム』だ」
英一の現代知識と、マイユのドワーフ技術が化学反応を起こしていく。
「英一さん、ここの留め具はどうします?」
「そこは『クイックリリース(緊急解除)』機能を付けたい。水に落ちたり怪我をした時に、紐一本で装備がパージできるように」
「了解! マジックテープの代わりに、吸着魔法を付与した革を使います!」
二人の会話は専門用語と魔導用語が飛び交い、横で見ているラウスにはチンプンカンプンだったが、凄いものが出来上がりつつあることだけは理解できた。
数時間後。
「……できた」
「完成……ですわ!」
作業台の上に、一着の鎧――いや、『コンバットスーツ』が鎮座していた。
ベースはレッドオーガの革による深紅のベスト。胸部と背部には漆黒のドワーフ鋼プレートが挿入されている。
表面には無数の帯が縫い付けられ、機能美に溢れていた。
従来の重厚な金属鎧とは一線を画す、軽快かつ強靭な「戦術装備」だ。
「さぁラウスさん! 出番ですよ!」
「おう、待ってました!」
ラウスが上着を脱ぎ、試作品に袖を通す。
熊耳族の巨体にもフィットするように、サイドのベルトでサイズ調整が可能だ。
「……こいつは」
ラウスが目を見開いた。
「軽い……! まるで普通の服を着てるみたいだ。なのに、急所はガッチリ守られてる安心感がある」
ラウスはシャドーボクシングのように拳を突き出し、体を捻った。
金属鎧特有のガチャガチャという音もしない。関節の動きも阻害されない。
「どうですか? 動きにくい所は?」
「全くねぇ! これなら、森の中でも音を立てずに動けるし、全力で斧を振っても疲れないぞ!」
ラウスの興奮した声に、英一とマイユは顔を見合わせてハイタッチをした。
「よし、第一段階クリアだな!」
「ええ! でもラウスさん、まだ終わりじゃありませんよ?」
マイユがニッコリと、しかし職人のドSな笑顔を浮かべた。
「次は『防御力テスト』です。……英一さん、お願いします」
「え、俺?」
「はい。そのシグ? で、ラウスさんを撃ってみてください」
「はぁ!?」
「なっ!?」
英一とラウスが同時に声を上げた。
「じょ、冗談だろマイユ!? 実弾だぞ!?」
「大丈夫です! 理論上は防げます! それに、実戦で使い物にならなきゃ意味がありませんもの!」
「い、いや、俺は信じてるけどよぉ!?」
ラウスが脂汗を流して後ずさる。
英一は苦笑しながら、SIG P226を構えた。
「……信じろ、ラウス。マイユの腕と、俺たちの設計を」
「え、撃つの!? ほんとに!?」
新生エイイチ&マイユ工房の品質管理は、命がけの厳しさだった。
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