FPS世界ランク1位の凸スナ、ニートを辞めて異世界でエンジニアになる~工業高校の資格と現代兵器で、健気なドワーフ娘を救い天下を取る~

月神世一

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EP 32

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爆走ドリーム・ラビットと、愛妻おにぎり
スタラントの街外れ。
整備を終え、燃料(魔石)を満タンにした魔導馬車『ドリーム・ラビット』の運転席で、英一がハンドルを握る。
助手席には、地図とコンパスを持ったマイユが座り、進行方向を確認していた。
「よろしい。では、行きますか」
「じゃあ、行くぞ」
英一がキーを回し、魔導エンジンが低く唸りを上げた、その時だった。
「待ってくれよ~ッ!!」
後方から、ドタドタという地響きのような足音と共に、大荷物を背負ったラウスが猛ダッシュで駆けてきた。
「あっ、ラウス」
英一がブレーキを踏む。ラウスは息を切らせながら、車の縁に手をかけた。
「はぁ、はぁ……置いてかないでくれよぉ! 俺も行くって!」
「ラウスさん? 長屋の作業員集めはどうなったんですの?」
マイユが驚いて尋ねると、ラウスはニカっと笑って親指を立てた。
「母ちゃんに話したらよ、『男がちまちま人集めなんてしてんじゃないよ! 斡旋はアタシがやっとくから、あんたは英一さん達のボディガードをしてきな!』って追い出されちまったんだよ」
「ふふ、マナマさんらしいわね。頼もしい限りだわ」
「おう! ってことで、荷物持ち兼護衛として同行させてもらうぜ!」
ラウスが荷台に乗り込むと、車体がグガッと沈み込んだ。
「よし、全員揃ったな。……では、出発!」
「おう!」
英一はアクセルを深く踏み込んだ。
ドォォォォォン!!
魔導馬車は砂煙を巻き上げ、スタラントの街道を北へ向けてロケットのように加速した。
街道に出ると、そこは英一の独壇場だった。
舗装されていない道だが、ドリーム・ラビットのサスペンションと英一のハンドル捌きがあれば関係ない。
「いけぇ~! いけぇ~! 気分爽快ですわぁぁぁ!!」
風を切り裂くスピードに、マイユが窓から身を乗り出して叫ぶ。
普段は工房に籠もっている反動か、彼女はスピードが出ると性格が変わるようだ。
「おいおい、飛ばしすぎじゃねぇか!? 舌噛むぞ!」
荷台のラウスは手すりにしがみつきながら叫んでいるが、英一は口元を緩めたままギアを上げた。
「大丈夫だ、この車は安定してる。それに、日が暮れる前に山脈の麓まで行きたい」
しばらく爆走を続け、日が中天に差しかかった頃。
広大な平原を一直線に走る車内で、ラウスがゴソゴソと荷物を探り始めた。
「腹減らねぇか? ……母ちゃんがよ、握り飯を作ってきてくれたんだ。ほら」
ラウスが取り出したのは、竹の皮に包まれた巨大な握り飯だった。
海苔の代わりに塩漬けの葉が巻かれており、素朴だが食欲をそそる香りが漂う。
「あら、ありがとうラウスさん。……はい、英一さん」
マイユは一つ受け取ると、運転中の英一の口元へと差し出した。
「ん、悪いな」
英一はハンドルを握ったまま、大きな一口を齧り取った。
「……旨いな」
口の中に広がる、強めの塩気と米の甘み。そして中心からは、香ばしく焼かれた魚のほぐし身が出てきた。
「これ、塩が効いてて最高だ。中は……川魚の切り身か? 脂が乗ってて旨い」
「だろ~? 母ちゃんの飯は最高なんだ。俺ぁ、これがあるから頑張れるんだよ」
ラウスが自分の分の握り飯を頬張りながら、誇らしげに鼻を鳴らす。
高級な料理ではない。だが、食べる人の活力を一番に考えた、愛情の味がした。
「あら、ご馳走様です。ラウスさん、愛されてますわね」
マイユがクスクスと笑いながら、自分も小さく齧り付いた。
「ちゃ、茶化すなよ~! 照れるじゃねぇか」
赤くなる大男を見て、車内には和やかな笑いが満ちた。
先ほどまでの商談や契約の緊張感が嘘のように、今はただのピクニックのような穏やかな時間が流れる。
「さて、腹ごしらえも済んだし……もうひとっ走り行くか」
英一は飲み物を流し込むと、再びアクセルに力を込めた。
目指すは北の山脈。職人と鋼の国。
『エイイチ&マイユ工房』の新たな挑戦を乗せて、魔導馬車は荒野を疾走していった。
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