FPS世界ランク1位の凸スナ、ニートを辞めて異世界でエンジニアになる~工業高校の資格と現代兵器で、健気なドワーフ娘を救い天下を取る~

月神世一

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EP 33

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森の魔工師と、動かないウサギ
スタラントを出発して二日目。
北の山脈が目前に迫り、ドワーフ国の入口である関所まであと少しという地点で、それは起こった。
プスン……シュゥゥゥ……。
快調に飛ばしていた魔導馬車『ドリーム・ラビット』が、悲しげな音を立てて停止した。
ボンネットの隙間から、白い蒸気が立ち上っている。
「……止まったな」
「故障か?」
英一がキーを回すが、魔導エンジンはうんともすんとも言わない。
三人は車を降り、マミユが慌ててエンジンルームを開けた。
「あちゃー……。魔力伝達パイプが焼き切れてるわ」
マミユが煤けた顔で振り返った。
「やっぱり試作段階で長距離を、しかもあのスピードで飛ばしすぎたのがまずかったわね。冷却が追いつかなかったみたい」
「マジかよ。ドワーフ国はあと少しだぜ? 歩いていくには荷物が多すぎるぞ」
ラウスが荷台に積まれた大量のコンバットスーツの試作品と、自分たちの野営道具を見て溜息をついた。
ここから先は上り坂だ。
「う~ん……。直すには部品が必要だし、ここでは無理ね。……押して行きましょう」
「押すのかよ!?」
「仕方ないだろ、ラウス。置いていくわけにもいかない」
英一は袖をまくり、車の後部に手をかけた。
幸い、車体は軽量化されている。男二人とドワーフ一人なら動かせるはずだ。
「せーのっ、よいしょ!」
ズズズ……。
鉄の塊がゆっくりと動き出す。
「お、重てぇ……!」
「文句言わない! ラウスさんの筋肉は何のためにあるんですの!」
「戦闘用だよ!」
汗だくになりながら坂道を進む三人。
その時だった。
「あら? あらあら……?」
不意に、道脇の林から鈴を転がすような、しかしどこか粘り気のある声が聞こえた。
木の陰から姿を現したのは、長い耳を持つ美しい女性だった。
種族はエルフ。しかし、森の妖精というイメージとは程遠い。
作業用のツナギを着込み、首にはスパナのような工具をぶら下げ、目には奇妙な形のゴーグルを付けている。
「ちょっと、店じゃ見ない形ね。このサスペンションの構造……それにこのタイヤの素材……興味深いわぁ」
彼女は三人を無視して、いきなりドリーム・ラビットの車体をペタペタと触り始めた。
「な、何でしょうか? 人の車を勝手に……」
マミユが警戒して声を上げる。
ドワーフとエルフは、歴史的にあまり仲が良くない。それに、技術を盗まれるのを何より恐れている今、同業者の気配はバッドニュースだ。
「あら失礼。夢中になっちゃって」
女性は顔を上げ、ねっとりとした微笑みを浮かべた。
「私はメルセス。この近くで『魔工師(まこうし)』をやっているわ」
「魔工師……?」
「ええ。……貴方達、お困りのようね。その魔導馬車、パイプがいっちゃってる音してたもの」
メルセスはポンポンとボンネットを叩いた。
「この娘(ラビット号)、私の工房で見てあげるわ。ここからすぐ近くよ」
「え? 良いのか?」
ラウスが目を輝かせる。渡りに船だ。
だが、マミユは渋い顔をした。
「(ちょっとラウスさん! エルフの魔工師なんて一番信用できないわよ! それに技術を見られたら……)」
「(でもマミユ、このままじゃ関所にも着けないぞ。それに、彼女はもう構造に気づいてるっぽい)」
英一が小声で囁く。
メルセスはそんな二人のやり取りを見て、クスクスと笑った。
「遠慮しないで。困っている時はお互い様よ。……それに」
メルセスは華奢に見える腕で、ドリーム・ラビットのバンパーをガシッと掴んだ。
「私も押してあげるわね。よいしょっ!」
グンッ!
車体が軽々と前に進んだ。
彼女の細腕のどこにそんな力が? いや、腕に装着された腕輪が淡く光っている。身体強化の魔導具だ。
「は、早っ!?」
「さぁ、行くわよ~♪」
「……何だこの子」
英一は呆気にとられた。
親切なのか、好奇心なのか、それともただの機械オタクなのか。
「ありがとうなんだか、お節介なんだか……」
マミユはブツブツ言いながらも、押し手が増えたことに感謝せざるを得なかった。
こうして、英一たち一行は、故障したラビット号を押しながら、謎のエルフ・メルセスの工房へと導かれていった。
そこが、新たな技術革新(とトラブル)の震源地になるとも知らずに。
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