FPS世界ランク1位の凸スナ、ニートを辞めて異世界でエンジニアになる~工業高校の資格と現代兵器で、健気なドワーフ娘を救い天下を取る~

月神世一

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EP 35

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M3ハーフトラック・ミーツ・マジカルカワイイ
メルセスの工房内は、未知の魔導機器の稼働音で満たされていた。
ミスリルコーティングされたドライバーや、自動で魔力波長を合わせる解析機。それらを目の当たりにしたマイユの瞳は、興奮でギラギラと輝いていた。
「こ~んな素晴らしい工具が有るなら……ただ直すだけじゃ勿体ないですわ! あの英一さんの『アイデア』を採用してみましょうよ!」
「え? 何々? 新しい構造?」
メルセスが興味津々で身を乗り出す。
マイユは振り返り、作業台の隅にいた英一に声をかけた。
「英一さん、あの絵を見せて下さる? 道中で『山道を走るならこれだ』って描いてたやつ!」
「え? ……ああ、『M3ハーフトラック』のスケッチか?」
英一は懐から手帳を取り出した。
そこには、ボールペンで描かれた無骨な軍用車両のラフスケッチがあった。前輪はタイヤ、後輪はキャタピラ(履帯)。第二次世界大戦で活躍した、不整地走破性に優れた輸送車だ。
「これです! 前輪で操舵性を確保しつつ、後ろの無限軌道で泥道も雪道も踏破する……ドワーフ国の険しい山岳地帯には、これしかありませんわ!」
マイユが熱弁を振るう。メルセスはゴーグルを押し上げ、そのスケッチを覗き込んだ。
「あら~……面白いわね。タイヤと履帯のハイブリッド……。これなら接地圧を分散できるし、トルクも逃げないわ」
技術者としての本能が刺激されたのか、メルセスの唇が艶やかに歪んだ。
「でも、この絵のデザイン……可愛くないわね。無骨すぎるわ」
「でしょ~♡ だから、構造だけ採用して、見た目はアタシ達で『最適化』するんです!」
二人の視線が空中で交錯し、バチバチと火花(意気投合)が散った。
「ふふっ……いいわ。もう、徹底的に『可愛がって』あげるわ♡」
「やりましょう! 『ラビット・グランドマスター計画』、始動ですわ!!」
マイユが高らかに宣言した。
「……おい、英一。何が始まるねん」
ラウスが引きつった顔で英一の袖を引く。
英一は遠い目で、これから改造される愛車を見つめた。
「……歴史的瞬間か、黒歴史の誕生か。どっちかだよ」
「「魔改造(オペ)、開始!!」」
掛け声と共に、工房が戦場と化した。
「後部シャーシ切断! 履帯ユニット接続!」
「了解! トルクコンバーター、魔力増幅炉と直結!」
「エンジンはどうする? 一基じゃ重くて動かないわよ?」
「アタシのドワーフエンジンと、貴女のエルフエンジンを直列に繋ぎます! 名付けて『ツイン・マナ・ドライブ』!」
「キャハハ! 最高にクレイジーね!」
火花が散り、魔力が奔流となって吹き荒れる。
英一の提案した「M3ハーフトラック」の優れた足回りが再現されていく一方で、外装には狂気じみた装飾が施されていく。
「装甲材はドワーフ鋼とミスリル銀の合金! これでドラゴンの爪も弾きます!」
「色はピンクとパールホワイトのツートンよ! 戦場でも目立ってナンボよ!」
「主砲はどうする? 普通の大砲じゃ可愛くないわ!」
「形をニンジンにしましょう! 『キャロット・バスター』よ!」
「採用!!」
数時間後。
工房のシャッターがゆっくりと開き、白い蒸気の中から「それ」は現れた。
「完成……!!」
そこに鎮座していたのは、前輪タイヤ・後輪キャタピラの重厚な足回りを持ちながら、全身がピンクで塗装され、ウサギの顔のフロントグリルと、ニンジンの形をした砲塔を持つ、悪夢のように可愛い装甲車だった。
自律制御式魔導装甲車 改『ラビット・グランドマスター』。
「ど、どうかしら英一さん! これが貴方のアイデアの進化形よ!」
オイルまみれの顔で、マイユが満面の笑みを向ける。
「……すげぇ。本当にM3ハーフトラックになってる。しかも5人乗りか」
英一は、キャタピラのゴム部分を指差した。
「でも、このキャタピラの模様……」
「ええ! 肉球スタンプ機能付きよ♡」
メルセスがウィンクする。
「……機能は完璧だ。見た目以外は」
英一は諦めの混じった称賛を送った。
こうして、最強で最カワの足を手に入れた一行は、いよいよ難所・ドワーフ国の山岳地帯へと挑む準備を整えたのだった。
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