FPS世界ランク1位の凸スナ、ニートを辞めて異世界でエンジニアになる~工業高校の資格と現代兵器で、健気なドワーフ娘を救い天下を取る~

月神世一

文字の大きさ
38 / 53

EP 38

しおりを挟む
芋スナ卒業、ピンクの戦車と突撃スナイパー
​ガルドフの店から車を走らせること数十分。郊外の小高い丘の上に、問題の第3倉庫が見えてきた。
石造りの頑丈な建物だが、入り口の扉は破壊され、周囲には赤黒い体毛と燃えるような瞳を持つ魔犬『ガルム』の群れが徘徊している。その数、ざっと見ても30匹以上。
​英一は丘の上に『ラビット・グランドマスター』を停車させ、静かにM24スナイパーライフルを取り出した。
​「さぁ、英一さんの出番ですわ」
​マイユがゴクリと唾を飲む。
隣には、興味津々で目を輝かせているエルフの魔工師、メルセスがいる。
​(メルセスさんが居るけど……仕方ないか。この状況で隠し通せるわけがないし、彼女なら技術の重みを理解してくれるはず)
​マイユは腹を括った。
​「じゃあ、俺が狙撃で数を減らす。……混乱に乗じて突っ込むぞ」
「了解だ! 後は任せな!」
​ラウスが車体後部のハッチを開け、屋根の上に設置された旋回砲塔『キャロット・バスター(ニンジン砲)』の座席に乗り込んだ。
​「じゃあ、お願い! 英一さん!」
​英一は地面に伏せ、バイポッド(二脚)を展開して銃を構えた。
冷たい金属の感触。慣れ親しんだスコープの視界。
​「な、何それ……?」
​メルセスが声を震わせた。
彼女の魔眼をもってしても、その黒く長い筒からは、一切の魔力が感じられない。
​「魔砲じゃ……ないわね? 魔石はどこ? どうやって魔力を充填するの?」
「メルセスさん、落ち着いて。質問は後で受け付けますから! 今は見ていて!」
​マイユがメルセスを制する。
英一は周囲の雑音をシャットアウトし、呼吸を整えた。
スコープの中心に、倉庫の入り口で見張りをしている、一際大きなボス格のガルムを捉える。
​距離400メートル。風、ほぼ無し。
​「……チェックメイト」
​英一が引き金を引いた。
​――ドンッ!!
​乾いた破裂音が丘に響いた。
魔砲のような轟音も、派手な閃光もない。
だが、次の瞬間。
​「ギャンッ!?」
​スコープの向こうで、ボスガルムの頭部がザクロのように弾け飛んだ。
​「えっ……!?」
​メルセスが息を呑む。
着弾の瞬間、魔力の爆発はなかった。純粋な運動エネルギーだけの破壊。それが何を意味するのか、技術屋の彼女には理解できてしまった。
​「グルルルッ!?」「ワンッ!?」
​突然、リーダーが音もなく(彼らにとっては)死んだことに、残されたガルム達はパニックに陥った。右往左往し、見えない敵を探して吠え立てる。
​それを見た英一は、スッと立ち上がった。
​「チッ……。やっぱり『芋スナ(芋虫スナイパー)』はつまらないぜ」
​FPSプレイヤーの血が騒ぐ。安全圏から一方的に撃つだけでは、物足りない。
​「えっ? 英一さん!?」
​英一はライフルを抱え、丘を駆け下り始めた。
走りながらスコープを覗き、移動する標的を次々と捉えていく。
​ドンッ! ガンッ! ドンッ!
​一発撃つごとに、確実に一匹のガルムが沈黙する。神業のようなクイック・スコープ。
​「全く! あの人はいつもこうなんだから! ……行くわよラウスさん!」
​マイユは呆れつつも、愛車のエンジンを吹かした。
​ドォォォォォン!!
​ピンク色の悪魔が、土煙を上げて急発進する。
​「オラオラオラァッ!! 野菜の時間だぜぇッ!!」
​砲塔のラウスが叫び、トリガーを引く。
​ズドォォォォン!!
​巨大なニンジンの砲口から、ピンク色の魔力弾が発射された。
着弾と同時に爆発し、密集していたガルムの群れをまとめて吹き飛ばす。
​「ちょっ、何よこれ!? 面白そうじゃないの~!」
​そのカオスな光景に、メルセスの技術屋魂(という名の破壊衝動)が火を噴いた。
​「私もやるわよ~!」
​彼女は懐から、真鍮と水晶でできた無骨な『携帯魔砲』を取り出した。
​「喰らいなさい! メルセス式・魔力ブラスターッ!!」
​ヒュドォォォン!!
​青白い極太のレーザーが放たれ、一直線にガルムを焼き払っていく。
​狙撃銃を持った突撃兵、ニンジンを撃ちまくるピンクの装甲車、そしてレーザーをぶっ放すエルフ。
地獄の番犬ガルムたちにとって、それは悪夢のような蹂躙劇の始まりだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ
ファンタジー
【短いあらすじ】 普通を勘違いした魔界育ちの少女が、王都に旅立ちうっかり無双してしまう話(前世は病院少女なので、本人は「超健康な身体すごい!!」と無邪気に喜んでます) 【まじめなあらすじ】  主人公のフィアナは、前世では一生を病院で過ごした病弱少女であったが……、 「健康な身体って凄い! 神さま、ありがとう!(ドラゴンをワンパンしながら)」  転生して、超健康な身体(最強!)を手に入れてしまう。  魔界で育ったフィアナには、この世界の普通が分からない。  友達を作るため、王都の学園へと旅立つことになるのだが……、 「なるほど! 王都では、ドラゴンを狩るには許可が必要なんですね!」 「「「違う、そうじゃない!!」」」  これは魔界で育った超健康な少女が、うっかり無双してしまうお話である。 ※他サイトにも投稿中 ※旧タイトル 病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...