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EP 44
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納品完了と、招き猫の次なる標的
季節は移ろい、工房の稼働から一ヶ月が経った。
マナマが集めた長屋の熟練作業員たちの手際と、地下「第二工場」での精密加工、そしてラウスによる鬼の品質チェックを経て、ついに最初のロットが完成した。
ゴルド商会、特別搬入口。
そこに積み上げられたのは、深紅の輝きを放つ『コンバット・スーツ(量産型)』、きっかり100着である。
「……ほう」
ナーコは白い手袋をはめた手で、無作為に選んだ一着を手に取った。
縫い目のピッチ、プレートの接合部、魔力伝導率。
彼女のユニークスキル『真贋の魔眼』が、その品質を冷徹にスキャンしていく。
(ムラがない。試作品と同等……いや、工程が洗練された分、耐久性は向上しているニャ)
ナーコは一着、また一着と確認し、やがて満足げに頷いた。
「うんうん、素晴らしい。全て規格通りの品ですわ。これなら、王宮騎士団にも胸を張って納品できます」
「よ、良かった……」
マイユが心の底から安堵のため息をつく。
不合格なら作り直し、最悪は契約解除の悪夢に怯えていた日々が報われた瞬間だ。
「では、初回納品分100着。契約通り『金貨8,000枚』のお支払いです。お確かめ下さいニャ」
ナーコが指を鳴らすと、部下がズシリと重い革袋をマイユに手渡した。
金貨8,000枚。日本円にして約8,000万円相当の重量感だ。
「ありがとうございます。(……だから、8,000枚もその場で確かめようが有りません事よ!)」
マイユは内心で悲鳴を上げつつも、表面上は冷静な商人を演じ、袋の口を少し開けて中身を確認する「素振り」を見せた。
「……ええ、確かに」
そして、そのまま魔法ポーチへと収納する。
ナーコはそんなマイユの演技に気づいているのかいないのか、ニコニコと微笑んでいる。
「この件は良しとして……」
ナーコが扇子をパチンと閉じた。
その音が、商談の「第二ラウンド」開始のゴングのように響いた。
「マミユ様。……新たなビジネスの話をしませんか?」
「え? 何でしょう?」
マイユは首を傾げた。
コンバット装備の増産か? それとも関連グッズの販売か?
「マミユ様達が今日、ここまで乗っていらした『車』……」
ナーコが窓の外を指差した。
そこには、駐車されているピンク色の悪魔『ラビット・グランドマスター』が鎮座している。
「あれを、『量産』してみませんか?」
「……は?」
マイユの思考が停止した。
「グランドマスターを、ねぇ……」
同行していたメルセスが、面白そうに目を細める。
「え、えっと……あの車を、ですか?」
「ええ。アレを見た時、私は衝撃を受けましたニャ」
ナーコは立ち上がり、熱弁を振るい始めた。
「悪路をものともしない『無限軌道(キャタピラ)』と、高速移動を可能にする『タイヤ』のハイブリッド。それに五人が搭乗できる居住性と積載能力……。あれは革命です」
ナーコの目は「金」の色に輝いていた。
「軍事用としては勿論ですが、私は『物流』に注目しています。ドワーフ国の山道や、未舗装の街道が多いこの大陸で、あれほど安定して荷物を運べる手段はありません。あれを量産すれば、物流の概念が変わりますわ」
「そ、それはそうかもしれませんが……」
マイユは冷や汗を流した。
(コンバット装備の1,000着生産で手一杯なのに、その上、あんな複雑な魔導車両を量産しろと!? 死ぬわよ!?)
「もちろん、単価はコンバットスーツの比ではありません。一台につき金貨2,000枚……いや、軍用カスタムなら3,000枚でも買い手がつくでしょう」
「さ、3,000枚……ッ!?」
一台で3,000万円。
マイユの脳内で再びソロバンが弾ける。
しかし、物理的な生産ラインが足りない。
「メルセス様もいらっしゃることですし、技術的な提携(コラボ)商品として売り出せば、エルフとドワーフ、両国の市場を独占できますわよ?」
ナーコが悪魔の囁きをする。
メルセスは英一から貰ったSIG P226をいじりながら、ニヤリと笑った。
「私は構わないわよ? あの子の兄弟が増えるのは楽しいし。……ねぇ、英一?」
「え、俺に振るなよ……」
英一は天井を仰いだ。
コンバットスーツ工場に続いて、次は自動車工場(兼戦車工場)の建設か。
ナーコというパトロンを得たことで、エイイチ&マイユ工房は、もう止まることを許されない「暴走機関車」になってしまったようだ。
「ど、どうします……? マミユ様?」
ナーコが上目遣いで、しかし逃がさない目つきで迫る。
マイユは引きつった笑顔で、答えを探した。
小さな工房の主が、大陸の産業王への階段を、強制的に登らされようとしていた。
季節は移ろい、工房の稼働から一ヶ月が経った。
マナマが集めた長屋の熟練作業員たちの手際と、地下「第二工場」での精密加工、そしてラウスによる鬼の品質チェックを経て、ついに最初のロットが完成した。
ゴルド商会、特別搬入口。
そこに積み上げられたのは、深紅の輝きを放つ『コンバット・スーツ(量産型)』、きっかり100着である。
「……ほう」
ナーコは白い手袋をはめた手で、無作為に選んだ一着を手に取った。
縫い目のピッチ、プレートの接合部、魔力伝導率。
彼女のユニークスキル『真贋の魔眼』が、その品質を冷徹にスキャンしていく。
(ムラがない。試作品と同等……いや、工程が洗練された分、耐久性は向上しているニャ)
ナーコは一着、また一着と確認し、やがて満足げに頷いた。
「うんうん、素晴らしい。全て規格通りの品ですわ。これなら、王宮騎士団にも胸を張って納品できます」
「よ、良かった……」
マイユが心の底から安堵のため息をつく。
不合格なら作り直し、最悪は契約解除の悪夢に怯えていた日々が報われた瞬間だ。
「では、初回納品分100着。契約通り『金貨8,000枚』のお支払いです。お確かめ下さいニャ」
ナーコが指を鳴らすと、部下がズシリと重い革袋をマイユに手渡した。
金貨8,000枚。日本円にして約8,000万円相当の重量感だ。
「ありがとうございます。(……だから、8,000枚もその場で確かめようが有りません事よ!)」
マイユは内心で悲鳴を上げつつも、表面上は冷静な商人を演じ、袋の口を少し開けて中身を確認する「素振り」を見せた。
「……ええ、確かに」
そして、そのまま魔法ポーチへと収納する。
ナーコはそんなマイユの演技に気づいているのかいないのか、ニコニコと微笑んでいる。
「この件は良しとして……」
ナーコが扇子をパチンと閉じた。
その音が、商談の「第二ラウンド」開始のゴングのように響いた。
「マミユ様。……新たなビジネスの話をしませんか?」
「え? 何でしょう?」
マイユは首を傾げた。
コンバット装備の増産か? それとも関連グッズの販売か?
「マミユ様達が今日、ここまで乗っていらした『車』……」
ナーコが窓の外を指差した。
そこには、駐車されているピンク色の悪魔『ラビット・グランドマスター』が鎮座している。
「あれを、『量産』してみませんか?」
「……は?」
マイユの思考が停止した。
「グランドマスターを、ねぇ……」
同行していたメルセスが、面白そうに目を細める。
「え、えっと……あの車を、ですか?」
「ええ。アレを見た時、私は衝撃を受けましたニャ」
ナーコは立ち上がり、熱弁を振るい始めた。
「悪路をものともしない『無限軌道(キャタピラ)』と、高速移動を可能にする『タイヤ』のハイブリッド。それに五人が搭乗できる居住性と積載能力……。あれは革命です」
ナーコの目は「金」の色に輝いていた。
「軍事用としては勿論ですが、私は『物流』に注目しています。ドワーフ国の山道や、未舗装の街道が多いこの大陸で、あれほど安定して荷物を運べる手段はありません。あれを量産すれば、物流の概念が変わりますわ」
「そ、それはそうかもしれませんが……」
マイユは冷や汗を流した。
(コンバット装備の1,000着生産で手一杯なのに、その上、あんな複雑な魔導車両を量産しろと!? 死ぬわよ!?)
「もちろん、単価はコンバットスーツの比ではありません。一台につき金貨2,000枚……いや、軍用カスタムなら3,000枚でも買い手がつくでしょう」
「さ、3,000枚……ッ!?」
一台で3,000万円。
マイユの脳内で再びソロバンが弾ける。
しかし、物理的な生産ラインが足りない。
「メルセス様もいらっしゃることですし、技術的な提携(コラボ)商品として売り出せば、エルフとドワーフ、両国の市場を独占できますわよ?」
ナーコが悪魔の囁きをする。
メルセスは英一から貰ったSIG P226をいじりながら、ニヤリと笑った。
「私は構わないわよ? あの子の兄弟が増えるのは楽しいし。……ねぇ、英一?」
「え、俺に振るなよ……」
英一は天井を仰いだ。
コンバットスーツ工場に続いて、次は自動車工場(兼戦車工場)の建設か。
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