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ダブルパンチ
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職場の険悪な空気に耐える事、一年半。
ある日の帰り、俺は電車内で息苦しさを覚えた。
気のせいかと思い、帰路を急ぐが
電車の乗り換えの為、歩き出すと背中に違和感を覚えた。
それと同時に、大量の脂汗が額から流れてきた。
「おい、お兄ちゃん。大丈夫か?」
道行くサラリーマンの中年が心配の声を掛けるが
返事が出来ない。
それどころか、息が出来ない。
息を吸うと、背中から鈍器で殴られたような痛みが走る。
息を吐くと、胸に釘が刺さっているかの如き鋭い痛み。
その場に留まり数分。
呼吸が落ち着き、心配してくれた方へお礼をし帰路へ・・・。
その日は家に帰っても、息苦しさが続いた。
翌日、休暇をとり病院へ。
下された診断は「気胸」だった。
肺に穴が空く病気だ。
重度の場合、呼吸困難に陥り死に至る事も有る。
だが、幸いな事に俺は軽症の段階であった。
診断が下された後、俺は二週間の自宅療養になった。
二週間が過ぎ、職場復帰。
ナースからは心配の声が上がる一方。
「いない間、シフトの入れ替えとか大変だったんだからキビキビ働いて。」
上司の嫌味が飛ぶ。
だが、その数日後。
「気胸」再発。
今回は、入院・手術となった。
しかも、その入院は一ヶ月にも及んだ。
再発に手術。
流石の上司も体調を気遣う声を上げた。
だが、数日もしない内に元通りだ。
「まだ、そんな事も出来てないの!?あれだけ時間があったのに?」
「す、すみません。」
「テキトーな事やって汗かいて、頑張ってますアピールされても困るんだよね。」
術後、俺の体は本来であればリハビリが必要だった。
肺を弄ってしまった訳だ、少しの事で息苦しくなってしまう。
気胸が治ったとはいえ、手術による著しい体力の低下は、上司の導火線に火をつけるには十分だ。
だが、人手も少ない職場だ。呑気にリハビリとも言って居られなかった。
小言を言われる中
額には大量の汗をかき、息は上がっている。
だが、上司はそれすらも気に入らない様子で苦言を呈する。
俺は、咽の手前まで
「術後による体力低下、肺機能の低下」を上司に説きたかった。
だが、無知というものは恐ろしい物で
上司の愚痴はそこから5分は続く事になる。
仕事をしながらネチネチと、すれ違いざま等
上司の愚痴が止まる事は無かった。
そして、あの日・・・。
俺が退職を決意した日、上司からはとんでもなくデリカシーのない一言を浴びる事となる。
「飯田君さぁ、この職場きてもう一年だよねぇ。任された仕事もろくにできない訳ぇ?」
今回怒られている事にも、立派な理由がある。
廃棄ゴミの回収作業中、俺はナースから血液検体を検査室へ下ろす様、お願いされた。
行きたくもない検査の専門学校へ行っていたから分かる事だが
こういった検体は、時間が経つと結果に影響が出かねない。
故に、優先して処理してしまわねばならないのだ。
そして、検体を検査室に下ろす事、凡そ5分以内の出来事だった。
が、その5分の網に引っかかり、途中で中断していたゴミ回収の一部が上司の目に入ったのだ。
「検体提出をナースに頼まれまして・・・。」
「そんなの、ゴミと一緒に行けばいいでしょ。融通が利かないんだから。」
確かに、その言い分は正しい。
だがそれは、ゴミの回収に時間がかからなければ。の話だ。
不幸にも、俺がゴミ回収を始めた直後にナースに呼び止められた。
これからいくつも病室を回り、果てはステーションの医療廃棄物まで回収しなければならず
サクっと終わるものでもない。
そう考えた俺は、検体劣化を避ける為にそちらを優先したわけだ。
「相変わらず、グズだよねぇ。」
「・・・。」
「もうこうなったら、病気だったってのも疑わしいもんだわ。」
「!」
「仕事が嫌でサボってたんじゃないの?」
「そんな・・・。」
「そもそも、気胸なんて若い子がなるモンでしょ。成人してまでなる?普通。」
「・・・。」
流石に、そうまでいわれる筋合いはない。
自分の手が遅い分については、反省もするが
プライベートを侮辱される謂れはない。
俺は愚痴を受けたその足で、看護婦長の元へ行き、退職の意を伝えたのだ。
こうして、俺の初めての職場は二年の歳月を経て退職となった・・・。
ある日の帰り、俺は電車内で息苦しさを覚えた。
気のせいかと思い、帰路を急ぐが
電車の乗り換えの為、歩き出すと背中に違和感を覚えた。
それと同時に、大量の脂汗が額から流れてきた。
「おい、お兄ちゃん。大丈夫か?」
道行くサラリーマンの中年が心配の声を掛けるが
返事が出来ない。
それどころか、息が出来ない。
息を吸うと、背中から鈍器で殴られたような痛みが走る。
息を吐くと、胸に釘が刺さっているかの如き鋭い痛み。
その場に留まり数分。
呼吸が落ち着き、心配してくれた方へお礼をし帰路へ・・・。
その日は家に帰っても、息苦しさが続いた。
翌日、休暇をとり病院へ。
下された診断は「気胸」だった。
肺に穴が空く病気だ。
重度の場合、呼吸困難に陥り死に至る事も有る。
だが、幸いな事に俺は軽症の段階であった。
診断が下された後、俺は二週間の自宅療養になった。
二週間が過ぎ、職場復帰。
ナースからは心配の声が上がる一方。
「いない間、シフトの入れ替えとか大変だったんだからキビキビ働いて。」
上司の嫌味が飛ぶ。
だが、その数日後。
「気胸」再発。
今回は、入院・手術となった。
しかも、その入院は一ヶ月にも及んだ。
再発に手術。
流石の上司も体調を気遣う声を上げた。
だが、数日もしない内に元通りだ。
「まだ、そんな事も出来てないの!?あれだけ時間があったのに?」
「す、すみません。」
「テキトーな事やって汗かいて、頑張ってますアピールされても困るんだよね。」
術後、俺の体は本来であればリハビリが必要だった。
肺を弄ってしまった訳だ、少しの事で息苦しくなってしまう。
気胸が治ったとはいえ、手術による著しい体力の低下は、上司の導火線に火をつけるには十分だ。
だが、人手も少ない職場だ。呑気にリハビリとも言って居られなかった。
小言を言われる中
額には大量の汗をかき、息は上がっている。
だが、上司はそれすらも気に入らない様子で苦言を呈する。
俺は、咽の手前まで
「術後による体力低下、肺機能の低下」を上司に説きたかった。
だが、無知というものは恐ろしい物で
上司の愚痴はそこから5分は続く事になる。
仕事をしながらネチネチと、すれ違いざま等
上司の愚痴が止まる事は無かった。
そして、あの日・・・。
俺が退職を決意した日、上司からはとんでもなくデリカシーのない一言を浴びる事となる。
「飯田君さぁ、この職場きてもう一年だよねぇ。任された仕事もろくにできない訳ぇ?」
今回怒られている事にも、立派な理由がある。
廃棄ゴミの回収作業中、俺はナースから血液検体を検査室へ下ろす様、お願いされた。
行きたくもない検査の専門学校へ行っていたから分かる事だが
こういった検体は、時間が経つと結果に影響が出かねない。
故に、優先して処理してしまわねばならないのだ。
そして、検体を検査室に下ろす事、凡そ5分以内の出来事だった。
が、その5分の網に引っかかり、途中で中断していたゴミ回収の一部が上司の目に入ったのだ。
「検体提出をナースに頼まれまして・・・。」
「そんなの、ゴミと一緒に行けばいいでしょ。融通が利かないんだから。」
確かに、その言い分は正しい。
だがそれは、ゴミの回収に時間がかからなければ。の話だ。
不幸にも、俺がゴミ回収を始めた直後にナースに呼び止められた。
これからいくつも病室を回り、果てはステーションの医療廃棄物まで回収しなければならず
サクっと終わるものでもない。
そう考えた俺は、検体劣化を避ける為にそちらを優先したわけだ。
「相変わらず、グズだよねぇ。」
「・・・。」
「もうこうなったら、病気だったってのも疑わしいもんだわ。」
「!」
「仕事が嫌でサボってたんじゃないの?」
「そんな・・・。」
「そもそも、気胸なんて若い子がなるモンでしょ。成人してまでなる?普通。」
「・・・。」
流石に、そうまでいわれる筋合いはない。
自分の手が遅い分については、反省もするが
プライベートを侮辱される謂れはない。
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