廻・骸行進

メカ

文字の大きさ
2 / 98
筆者メカの収集話・体験談

散歩で。

しおりを挟む
この話は、私がまだ20代前半だった頃。
精神的に参っていた時期・・・自宅に引き篭もって生活をしていた時の話。

精神的に参っていたとはいえ、朝早く仕事の為出掛けていく家族を
罪悪感を持って送り出した後
ある行為を行うのが日課となっていた。

それは、時間を決めて「散歩」に出掛ける事。

酷い時は、家族が出掛けて直ぐに家を出て、家族の帰宅まで帰らない。
という様な事もあった。

やっと見つけたバイトも、サボっては「散歩」に出掛ける。
何てことが当たり前になっていた。

・・・そんなある日の事だった。

自宅から数キロ離れた公園で、コンビニで買った昼食を摂るのが日課となっていた私。
そんな中、公園の対岸にあるベンチで一人の女性が目に入る。
年齢的にも自分と然程変わらなかったと思う。

その日を境に、よく目にするようになった女性。

何日か経った時の事だ。

私が良く使っていたベンチの方に、女性が座っているのだ。

最初は警戒して、隣のベンチで昼食を摂っていたのだが暫く時間を置いた後
意を決して声を掛けた。

「あの・・・。最近、よく見かける方ですよね?この辺の人なんですか?」

「・・・貴方はどうなんですか?」

女性は、少し驚いた様にこちらを向き、聞き返してきた。

その言葉を聞き、いきなり不躾だったと後悔もした。

それから、女性とベンチであっては下らない話をする・・・のが日課になった。

互いに名前も知らない。住んでいる場所も分からない。
でも、其れで良いと思っていた。

こちらの事情や悩みを、顔色一つ変えず真剣に聞く女性は
一種、救いだったかもしれない。

親兄弟にすら言えない葛藤を。
否定も肯定もする事なく、ただ黙って聞く・・・そんな人が
当時の私をどれだけ救っていた事か・・・。

当然、私も相手の話を黙って聞いている。

彼女は「を探している」のだという。

「数日前、人と会った時に失くしてしまったんです。だから、ずっと。」

連日探しに来ていたのだとしたら、余程大事な物なのだろう。
その時、私は普段言えない愚痴を聞いて貰っている恩返しにと
喉元まで「手伝いますよ。」の一言が出かけていた。

だが・・・なぜだろうか。
その一言を切り出せなかったのだ。
背筋に走る悪寒が、それを許さなかったから・・・。

彼女はとても寂しそうな顔をして、地面を見つめているというのに。
その時、言葉を絞り出す事を躊躇った。

それ以降、私はその公園で昼食を摂らなくなった。

多少、時間はかかるがもう少し離れた場所にある河川敷で昼食を摂るようにした。




だって
彼女が探しているモノは見つかりっこない。
「自分を殺した相手」を探しているのだから・・・。

後に調べて分かった事だ。
その公園では、その昔
若い女性が何者かに刺殺され遺棄された。という悲しい過去があった・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド

まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。 事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。 一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。 その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。 そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。 ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。 そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。 第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。 表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。

霊和怪異譚 野花と野薔薇

野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。 静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。 『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。 一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。 語られる怪談はただの物語ではない。 それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。 やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。 日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。 あなたも一席、語りを聞いてみませんか? 完結いたしました。 タイトル変更しました。 旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる ※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。 エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。 表紙イラストは生成AI

【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】 ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。 八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。 === エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中 【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】 【怖さレベル】 ★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度 ★★☆ ふつうに怖い話 ★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話 ※8/2 Kindleにて電子書籍化しました 『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/1/17:『えれべーたー』の章を追加。2026/1/24の朝8時頃より公開開始予定。 2026/1/16:『せきゆすとーぶ』の章を追加。2026/1/23の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/15:『しばふ』の章を追加。2026/1/22の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/14:『でんしれんじ』の章を追加。2026/1/21の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/13:『こえ』の章を追加。2026/1/20の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/12:『あけてはいけない』の章を追加。2026/1/19の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/11:『みきさー』の章を追加。2026/1/18の朝4時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

【完結】百怪

アンミン
ホラー
【PV数100万突破】 第9回ネット小説大賞、一次選考通過、 第11回ネット小説大賞、一次選考通過、 マンガBANG×エイベックス・ピクチャーズ 第一回WEB小説大賞一次選考通過作品です。 百物語系のお話。 怖くない話の短編がメインです。

幻・骸行進

メカ
ホラー
「骸行進」シリーズ・・・第四弾。 四・・・4・・・死・・・。 鬱陶しい位に長く・・・我ら「骸行進ファミリーズ」による 恐ろしい体験談。 この先、何処まで続くかは不明だが、最後まで御憑き合い願いたい・・・。

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

処理中です...