廻・骸行進

メカ

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廻・霊視鑑定人「X氏」の話

「ソレに触れるな!」

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かれこれ8年ほど前だったろうか。
私は、ある試みを今すぐにでも実行したくて堪らなかった。

その試みとは、電話による我が師「X氏」によるリアルタイム鑑定だ。

その為に、私の元に届けられた1件の依頼を、敢えて保留してまで
この試みの準備に取り掛かっていた。

・・・当然、依頼者・X氏両名にも了承を得ての試みだった。

依頼者の名前は「竹沢さん(仮名)」。

50代の男性だった。

彼の話では、ある年のお彼岸頃から自宅で怪奇現象が起きているのだという。

「これまで、人にどうこうって事は無いかったんですけどね?
仏壇のお供えを、少し見直した辺りから・・・
昼夜を問わず、物音だ何だと起こるもんで、気味が悪くて。」

電話越しに話を聞くX氏は、暫く沈黙を貫いていた。

こちらから声を掛けても、反応は示さず
沈黙に耐え兼ねた私が、竹沢さんへより細かな事情説明を求める。

「私らが思いつく事といったら、さっきも言いましたがお供え物くらいですかねぇ・・・。」

「というと?・・・お供えをしなくなった・・・とか?」

「あぁ、いえ。その逆でね。
それまでは、お供えって言っても年に一度、この時期に行ってた程度なんです。
それも、お袋が好物だった無花果の実をお供えをするくらいで・・・。」

竹沢さんの話では、彼の母が亡くなって暫くは
その悲しみから立ち直れず、仏壇の前に立つ事すら難しかったという。
しかし、お彼岸には必ずお供えをしていたそうだ。

それから数年が経ち、漸く立ち直り
それまでの生活や、供養の在り方を見直し
再起を図ったという。
それに伴い、お供えも定期的に変える様になり母も喜んでいるだろうと思った矢先
自宅で怪奇現象が起こり始めたという。

私は、通話状態の携帯を机に置いたまま
竹沢さんに説明の続きを促し、自身は仏壇の前へと身を乗り出した。

彼の母に対し、無礼の無いよう挨拶を済ませ
仏壇を覗き込む。

仏壇には、小さな器が2つ。
一つは白米。
一つは、夕飯のおかずを。
そして、小さなグラスに水が備えられていた。

特に変わった様子はない。

『ふ~ん・・・。怪しい場所なんて見当たらないが・・・。』

そう思いつつ、私はお供えに手を伸ばした。

その時だった・・・。

に触れるな!!」

受話器越しに、X氏の怒鳴り声が響く。

反射的に、伸びた腕を引っ込め振り返った。

誤解が無いよう言っておくが・・・ただの通話であってビデオ通話ではない。
それなのに、X氏は私が行おうとした事を言い当てる。

「〇〇君(私の本名)、今・・・お供えの水触ろうとしただろう!莫迦な事はやめないか!」

そこまで怒られるような事なのか?と内心では思ったが・・・。
実はこれには訳があった。

「竹沢さん、もしやそのお部屋には神棚もあるのでは?」

先ほどと打って変わり、穏やかな声で語り掛けるX氏。

「は、はい・・・あります。」

「では、仏壇か神棚。どちらでも構いません。別のお部屋に移してあげてください。
この2つが同じ空間に揃ってしまうと、祀ってもらえる・救ってもらえると
他所から関係の無い者が入ってきてしまいます。
ご自宅で起きていた現象は皆、外から迷い込んだ者達の仕業です。
これさえ、行えば現象は止みます。」

数日後。

竹沢さんからのメールで、現象がピタリと止んだ。と感謝のメールが届いた。









・・・その一方で、私はX氏に滾々と説教を受ける事となった。

・・・他でもない、私の身を守る為に・・・。

「君ね、あそこで水に触れて居たら全部持って帰る事になってたからね?
お彼岸の時期は特に、水の扱いにはシビアにならないと!
文字通りの『呼び水』になる所だったんだぞ!気を付けなさい。」

X氏の話では
仏壇と神棚。そして、水の入ったグラス。
この3点が一堂に会してしまった事で、お供えの水が他所から呼び寄せ
仏壇に祀られる事で留まり、神棚によって救いを求め家中を彷徨う。
という連鎖が起きていたのだという・・・。

これを気に、私はお彼岸など関係なく
調査依頼などでは水について細心の注意を払って行動を心掛けている・・・。
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