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亡霊の歩み
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私は、反逆者ではない。
謀反を起こす気もない・・・。
王家に仕え、半世紀以上の月日が流れた。
その中で、私は一つの疑問が自身の中で巡った。
このまま国王の掲げる融和路線を貫けば、確かに国は栄えるであろう。
だが、かつての威厳あるアムネリスはどこ吹く風だ。
年々、騎士や兵士の数も目減りしていき、今ではただの自警団のような存在だ。
その昔、アムネリスの騎兵隊といえば、遠く離れた国々でさえ恐れた屈指の戦士たちだ。
それ故に、これまでアムネリスは他国の侵略を許さず、栄えてきた。
豊かな国力の象徴は、大きく分けて三つ。
・国そのものが持つ膨大な財力。
・他国などの交易による人流の多さ。
・侵略を許さぬ武力。
この三つの均衡が取れてこそ、初めて国は豊かと言えよう。
しかし、この半世紀の時の流れは残酷にも
アムネリスを徐々に骨抜きに変えた。
国王に第一子が出来た時
私はひそかに喜んでいた。
その赤子が男の子であるならば、残り少ない天命をもって
屈強な国王候補に育て上げると誓ったものだ。
だが、期待とは往々にして外れるものである。
第一子は女の子であった。
それでも国王アンドラは、その赤子を次の国王に任命すると息巻いた。
その為、まずは市政を学ばせるべきだと期間限定ではある物の里子に出した。
それ自体は、素晴らしいお考えだ。否定する材料は見つからない。
だが、私は諦め切れなかった。
「陛下、ジュナ様が王女になられた時、御傍に信頼に足る者の助けが必要でしょう。」
「その為の傍付騎士ではないか。」
「そういう事ではございません。騎士は政治に疎いもの。同じ目線から政権を見られる者を
御傍に迎え入れた方が・・・。」
「ふむ・・・。確かに、市政こそ学べても王政となれば話が変わる。一理あるな。」
「つきましては、姫にも弟君が必要でしょう。」
「どういう事だ?」
「王政の歴史上、女性が上に立った事例はあっても少ない物です。
女だてらにと馬鹿にされぬよう姫様を支える身内が必要でしょう。」
「・・・じぃの話も尤もだ。だがこればかりは運が物を言う。期待はするなよ?」
「勿論でございます。このマルタン。公私やTPOは弁えているつもりです。」
こうして、さりげないプッシュを続ける事、2年後
第二王子「ジャンセ様」と第三王子「オービス様」が生まれたのだ。
私は心底震えた。
これは神から賜った最後の使命であると。
いずれ、このどちらかの王子が、国を背負って立つのだと
夢枕にすら想像が膨らんだものだ。
しかし、私の目論見は姫様によって
呆気なく終わりを告げる。
王宮へ帰って来た姫様は、とても手に負える様な淑女ではなかった。
快活で利発。
知将マルタンと謳われたこの私が、彼女の暴走機関を制御する事が不可能であった。
大人しめの淑女に育っていたのなら
国の象徴としてのみ祀り上げ、他の実権は弟君に握らせればよいと踏んでいたのに。
そして、私はあの日
行動を起こすことにしたのだ。
姫様が外に出た事を知り
研究用に捕らえられていたヒューマノイドウルフを城外へと解き放った。
事故にでも見せかけられれば其れで良かった。
惜しむらくは
あの傍付騎士・・・否、傍付の忍による妨害があった事だ。
そして、私は次の策に出た。
晩餐会に出席した要人が何者かに襲われたと聞き
これを利用し、再び彼女を亡き者にする計画を練った。
遠方から密輸した魔物たちを放ち、帰路に着く姫様一行を襲わせた。
だが、その馬車は歩みを止める事無く、王宮へと戻って来た。
失敗を確信した私は、仕留め損ねた場合を見越し、伏兵させていた者達を
魔物の口を封じる為に使った。
そして、最後の強硬手段。
姫様を捕え、亡き者にするための王国襲撃。
・・・これも、一人の忠実な犬によって幕を引く・・・。
こんなはずではなかった。
薄れ行く意識の中、マルタンはこれまでの人生を振り返り
嘆きながら、息を引き取った。
謀反を起こす気もない・・・。
王家に仕え、半世紀以上の月日が流れた。
その中で、私は一つの疑問が自身の中で巡った。
このまま国王の掲げる融和路線を貫けば、確かに国は栄えるであろう。
だが、かつての威厳あるアムネリスはどこ吹く風だ。
年々、騎士や兵士の数も目減りしていき、今ではただの自警団のような存在だ。
その昔、アムネリスの騎兵隊といえば、遠く離れた国々でさえ恐れた屈指の戦士たちだ。
それ故に、これまでアムネリスは他国の侵略を許さず、栄えてきた。
豊かな国力の象徴は、大きく分けて三つ。
・国そのものが持つ膨大な財力。
・他国などの交易による人流の多さ。
・侵略を許さぬ武力。
この三つの均衡が取れてこそ、初めて国は豊かと言えよう。
しかし、この半世紀の時の流れは残酷にも
アムネリスを徐々に骨抜きに変えた。
国王に第一子が出来た時
私はひそかに喜んでいた。
その赤子が男の子であるならば、残り少ない天命をもって
屈強な国王候補に育て上げると誓ったものだ。
だが、期待とは往々にして外れるものである。
第一子は女の子であった。
それでも国王アンドラは、その赤子を次の国王に任命すると息巻いた。
その為、まずは市政を学ばせるべきだと期間限定ではある物の里子に出した。
それ自体は、素晴らしいお考えだ。否定する材料は見つからない。
だが、私は諦め切れなかった。
「陛下、ジュナ様が王女になられた時、御傍に信頼に足る者の助けが必要でしょう。」
「その為の傍付騎士ではないか。」
「そういう事ではございません。騎士は政治に疎いもの。同じ目線から政権を見られる者を
御傍に迎え入れた方が・・・。」
「ふむ・・・。確かに、市政こそ学べても王政となれば話が変わる。一理あるな。」
「つきましては、姫にも弟君が必要でしょう。」
「どういう事だ?」
「王政の歴史上、女性が上に立った事例はあっても少ない物です。
女だてらにと馬鹿にされぬよう姫様を支える身内が必要でしょう。」
「・・・じぃの話も尤もだ。だがこればかりは運が物を言う。期待はするなよ?」
「勿論でございます。このマルタン。公私やTPOは弁えているつもりです。」
こうして、さりげないプッシュを続ける事、2年後
第二王子「ジャンセ様」と第三王子「オービス様」が生まれたのだ。
私は心底震えた。
これは神から賜った最後の使命であると。
いずれ、このどちらかの王子が、国を背負って立つのだと
夢枕にすら想像が膨らんだものだ。
しかし、私の目論見は姫様によって
呆気なく終わりを告げる。
王宮へ帰って来た姫様は、とても手に負える様な淑女ではなかった。
快活で利発。
知将マルタンと謳われたこの私が、彼女の暴走機関を制御する事が不可能であった。
大人しめの淑女に育っていたのなら
国の象徴としてのみ祀り上げ、他の実権は弟君に握らせればよいと踏んでいたのに。
そして、私はあの日
行動を起こすことにしたのだ。
姫様が外に出た事を知り
研究用に捕らえられていたヒューマノイドウルフを城外へと解き放った。
事故にでも見せかけられれば其れで良かった。
惜しむらくは
あの傍付騎士・・・否、傍付の忍による妨害があった事だ。
そして、私は次の策に出た。
晩餐会に出席した要人が何者かに襲われたと聞き
これを利用し、再び彼女を亡き者にする計画を練った。
遠方から密輸した魔物たちを放ち、帰路に着く姫様一行を襲わせた。
だが、その馬車は歩みを止める事無く、王宮へと戻って来た。
失敗を確信した私は、仕留め損ねた場合を見越し、伏兵させていた者達を
魔物の口を封じる為に使った。
そして、最後の強硬手段。
姫様を捕え、亡き者にするための王国襲撃。
・・・これも、一人の忠実な犬によって幕を引く・・・。
こんなはずではなかった。
薄れ行く意識の中、マルタンはこれまでの人生を振り返り
嘆きながら、息を引き取った。
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