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長編特集

雪国の怪 その2 「嫌味な野郎」

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X氏は、数日後にも件の踏切に訪れていた。
あの時、見たもの・感じたものを改めて整理するためだったという。

その日、朝早くに彼は踏切へと向かったそうだ。
周囲が太陽光で白んでいく中
彼は踏切の前で、缶コーヒーを片手に周囲を探っていた。

暫くして、彼は自宅へ戻り出勤した。

だが・・・普段、共に仕事をしていた禰宜が来ていなかったというのだ。
その日の内に、その禰宜は遺体となって発見されたらしい。

先日の事だ、X氏が踏切に行き、その後高熱を出している間
寺の住職と禰宜を合わせた職員4人で踏切に行ったそうだ。

その日は、住職らもお祓いに向けた下見程度で帰ったそうだ。

住職の話では、その日以降から既に彼の様子は可笑しかったという。
普段、はきはきと物を言う人物だったそうだが
翌日、青白い顔をし出勤。しばらくした後に体調不良を訴え早退した。

しかし、その翌々日にはケロっと何事もなかったかのような顔で出勤してきたという。
その様子を気にした住職が容態を聞くと

「気分はいいですよ、まるで憑き物が落ちたみたいですよ。」

と、けらけら冗談まで言う始末だったという。

だが・・・その日以降
彼は出勤していなかったのだという。

死因については、浴槽で亡くなっていた事を鑑みて
急性の「何か」ではないか?との事だったそうだ。

「何か」と明確に分かっていない事に、X氏は不思議に思ったそうだが
亡くなってすぐの事も有る。
まだ調べが及んでいないだけだろうと、言い聞かせていた。

それから数日後、その地元では大雪が降った。
だが、青森県民にしてみれば「雪」そのものは珍しくもないイベントである。

その日も、X氏は踏切で一人、あの日の事を考えていたそうだ。

思えば、あの時
踏切の対岸に、一列で並んでいた「彼等」の顔ははっきり覚えていない。
というか、最初に目が合った一人を除いて、他の者の顔を見ていないのだ。
しかし、「彼等」が何人居たかははっきり覚えている。

「4人・・・だったな。」

本来であれば、もっと多くの思念が渦巻いて居ても可笑しくはない。

仮にこういった場所では、多すぎる思念が集合体となり
一つの形を作り出す事がある。
であるならば、「4人」という中途半端な数が説明が付かない。
集合体であるのなら、なぜ「一人にならないのか」
それが、X氏の中で堂々巡りだったという。

踏切の対岸を、ぼーっと眺めていた時だ。
また、「ヤツ」が居る。
気味の悪い薄ら笑いを浮べる男・・・。
はっきりと表情が分かる。

見た眼から年齢は50代そこそこか。
スーツ姿に、黒いカバン。
細いフレームの眼鏡をかけ、スポーツ刈りの様な短い髪。
目尻は厭らしく垂れ、口角だけがキュッと上がっている。

その顔は、まるで少し上からこちら側を見下しているかのような顔だったという。

「嫌味な野郎だ・・・。」
X氏は、今でもその霊の事をそう揶揄する。

だが、後日
この男の存在が、X氏の調べで分かる事となるのだ・・・。
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