骸行進

メカ

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長編特集

ツキマトウ 4 「正体」

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その日の仕事は遅番勤務であり、午前中に時間の出来た私は
「女」の存在を認識した地、つまり「菊池」の職場に赴いていた。

朝の少し早い時間帯であり、誰もいない工場は
前回来た時とは打って変わって「無音」だった。

「うちの会社に何か御用でも?」

声の聞こえない工場に不思議な視線を送っていた所
後ろから、この工場の工場長が声を掛けて来たのだ。
「菊池」の最低限な情報だけ伝え、話を聞く事となった。

「そうですかぁ、菊池君・・・入院を。」

「ロクに挨拶も出来なかった事を悩んでいた様なので、代わりにと思って・・・。」

「なるほど・・・。
僕等も苦渋の決断だったんですよ。
彼、入職した途端にお父様もご入院されたり、色々大変だったようですから。
事ある毎に、証明の書類や診断書などが送られてきてたので
別段、サボりなどではないんだと理解はしていたんですがねぇ。
その事もあって、落ち着いてからでいいから。と話をしていたんですがねぇ・・・。」

「もしかして、自分から辞職を?」

「えぇ、そうなんですよぉ。話し合いは設けていたんですがね。
・・・あぁ、そうだ。
彼、もうすぐ結婚するんだぁ!って仕事にもやる気になっていましたが
準備など大丈夫そうなのですか?」

「・・・え?・・・結婚?」

「おや・・・ご友人に仲人も頼んだと聞いてまして、その方なのかと思っていましたが・・・
余計なお節介でしたかね?」

「あぁ、いえ。そんな事は。
自分も仕事の事ですっかりど忘れを。」

勿論、彼の結婚話など初耳だ。
こんなおめでたい話を今まで黙っている方も珍しいが・・・。

そう思いつつも挨拶を済ませ、私は自身の職場へ向かったのだ。

・・・仕事終わり。
私は、彼に話を聞くべく病院へ向かった。
すると、彼の病室からは話声がした。

暫く待っていると、薄手のロングコートにハンチング帽を深くかぶった女性とすれ違う。
生憎、身長差と帽子のせいで顔までは分からなかったが・・・。

忘れもしない。
その女性とすれ違った一瞬。
全身を走る寒気、跳ねる心臓、止まる呼吸。
まさしく「ゾッとした」という表現が相応しい。
振り返るのも恐ろしい。

私はそのまま、菊池の病室に入った。

「よ、よう。」

「来てくれたのか。外、寒かっただろう。」

「まぁな。それより聞いたぜ!結婚するんだって!?」

「だ、誰から聞いたんだよ!」

「工場長さんが話してくれた~w」

私は彼を茶化す事で無理に明るく振る舞った。
そうでもなければ、今尚扉の向こうから刺さる様に感じる恐怖に
顔が引きつりそうだったからだ。

「じゃあ、さっき入れ違いになったのが・・・。」

「そう、彼女。」

「そうかぁ・・・菊池が結婚かぁ・・・。」

「な、何だよ!良いだろ別にw」

「照れるなよぉ!・・・っと、そろそろ面会時間過ぎるわ。また、来るからな!」

「おう、気を付けて帰れよ。」

彼に見送られながら、戸を開けるとそこには誰もいなかった。
その安堵感のまま、私は帰路に着いたのだ。
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