骸行進

メカ

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幼馴染の女性「飯島(仮名)」の話

楽しかったはずなのに。 終

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ダム入り口。
方々から滝のように水が流れ落ちていく様子を後目に
片手に持った線香に火を灯す。
か細い光だけが、今自分に用意された唯一の灯りだ。

とは言え、まだ完全に暗闇となった訳ではない。
薄暗さを感じつつも、周囲の状況はしっかりと分かる。

だが・・・ソレが余計に怖いのだ。

分かるだろうか?
流した視線の先、ダムの手すり部分から這い上がって来そうなモノを見るかも知れない。
ダムの橋の真ん中で、ふと後ろから声がする。
当然、振り返った所で誰もいない。
だが、私には分かるのだ。
ソレが、どこから聞こえているのか。

風で流れて来る土の様な湿り気のある水臭さと線香の煙の臭いが混じり
言葉にしにくい恐怖を煽る。

「急ごう。」

返事など帰って来る訳もないのに、思った事を口にしなければ
パニックを起こしそうだ。

あちらこちらから聞こえて来る恨み辛みの声
そして、鼓膜付近から聞こえる自分の鼓動。
今にも吐きそうな中、足を動かさねばならない。

普通に歩けば5分程度で最奥の管理棟まで着く所
気付けば、10分以上も掛けて歩いてきた。
X氏の指示の通り、木札をダムへと投げ入れる。
その直後、木札がポチャンと水の中に沈む。

「・・・よし。後は帰るだけ・・・。」

だが、この時
私は一つの異常な現象に気付いていなかった。

踵を返し、足早に去ろうと足を前に出す。
手元の線香も半分近くは残っている。

「余裕だ・・・。」

子供がお使いでも終えた帰り道の様に
不思議と足は軽かった。
何なら鼻歌でも歌える余裕すらあった。

その余裕も、次の一瞬で打ち砕ける。

橋の中ほどまで進んだ辺りで、私の歩は止まった。

気のせいだ。
見間違いだろう。
その言葉と同時に、全身の毛が逆立っていく。

橋の先、50mほどの所に人影が見えた気がした。
一人だけではない。
・・・二人分の影を。

日は完全に落ち、残光が消えゆく中
何かの見間違いであってほしかった。

手元に握る小さな灯りを、目一杯前に宛がって先の様子を伺う。
しかし、その手に握られた物は懐中電灯ではない
当然、数十メートル先を照らす事など不可能だ。

恐る恐る現場へ近寄ると、そこに立っていたのは「飯島」だった。

「・・・え!飯島!?」

何度か呼び掛けるも、彼女は手すりからダムの中を覗く様に下を向いたままだった。

痺れを切らし、肩を軽く揺するも変わらない。

そんな飯島の奥に、もう一人の影を見る。

・・・古森さんだ。

「良かった、古森さんも居たんですね!・・・え・・・。」

彼女に近付くも、異変に気付き足が止まる。

彼女は頭のてっぺんから足先まで・・・ずぶ濡れだったのだ。

「あ・・・これは・・・。」

思わず声が出た。
すると彼女は、手すりに足をかけ始めたのだ。
同時に嫌な予感がする。

慌てて、後ろに居る飯島に目をやると
飯島も同じように手すりを乗り出そうとしていたのだ。

「おい!待て待て!」

直ぐに後ろから羽交い絞めにし、手すりから引き離すと
飯島は糸が切れたようにぐったりとした。

「古森さんは・・・。」

視線を手すりに戻した時、そこに彼女の姿はなかった。
・・・直後に大きな入水音がした事は言うまでもない。

・・・数日後

飯島は失踪を遂げた日から何も口にしていなかったようで
栄養失調の為入院となった。

飯島が退院する頃には彼女も元の覇気を取り戻し、元気に過ごしている。

唯一つ
彼女は、失踪前後の事を覚えていない。
・・・あの後、古森さんはダムでは発見されず、未だ行方不明のままである。

ダムでの出来事は、飯島には話さず
私は墓場まで持って行くつもりだ・・・。
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