骸行進

メカ

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タクシードライバー 「藤原さん(仮名)」の話

相乗り

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トラックやタクシー、運送系で良く聞く話。
乗って来た乗客が、目的地に着くといつの間にか消えた。とか
指定された場所に着いたら、そこは墓地だった。

なんて話は最早、使い古された常套句のような話だ。

今回、藤原さんが経験した話は
これもまた「あるあるだよね」という話だそうだ。

その日、時刻は午後八時を過ぎていた。
たまたま通った道で、二人組の男女を乗せたそうだ。

「お客さん、行先はどちらに?」

「新橋まで。」

男が応えた。

見た目はどちらも20代くらいだろうか。
男の方はタクシーに乗るなり、携帯を弄り
女の方は、窓から外を見ている。

「喧嘩中か?」

何となくそんな冷たい空気を察したという。

とはいえ、一緒に居る所を見るに
そこまで大きな揉め事ではなかった様だ。

「運転士さん。」

ふと男が言う。

「はい?どうしました?」

「さっきから、ジロジロ見ないで欲しいんですけど。」

「・・・あ。失礼しました。」

「まぁでも、後ろの車が気になってるって時もあるんでしょ?最近、煽りとか多いし。」

「そういう時もありますねぇ・・・。先日も、それっぽいのが後ろに付いた事がありましたね。」

「そういう時、どうしてるんです?」

「無難なのは、道を変える事ですかね。勿論、お客さんには説明した上で。」

「へぇ・・・。先を譲るとかダメなの?」

「もし、前を取られて急ブレーキでもされたら怖いじゃないですか。」

「・・・確かに。」

その後も暫く、何てことない会話が続いた。

だが・・・。

新橋が近付くに連れ、藤原さんは妙な焦燥感を持ったという。

男とは少しばかり馴染む事が出来た。
それ故に、女の方が先ほどからずっと変わらぬ態度なのが気になりだした。
このまま、冷めた空気のまま二人を下ろして良い物か?
何かできないだろうか・・・。
藤原さんの、ちょっとした親切心がその原因だった。

「でも、お兄さん。学生の頃とか結構モテたんじゃない?」

「そんな事ないっすよ。結構、陰キャだったし。」

「そりゃ勿体ない、爽やかイケメンなのに。」

「垢ぬけたのだって最近っすよ。」

「彼女さんの影響かな?」

「・・・まぁ、そんな所っすかね。」

この反応、彼女である事は間違いない様だ。
ならば尚の頃、未だツンケンしている女の方をどうにかしなければ。

「嬉しい事言ってくれるよねぇ?お嬢さん。」

・・・良かれと思っての一言だった。

「・・・え。」

男の顔が凍り付いた。

「ん?隣の娘が彼女さんでしょう?」

「・・・止めてくれ!」

「お客さん?」

「早く!止めろ!!」

言われるがまま、路肩に車を止めると
男は一人分の金を置いて逃げる様に出て行った。

「あれ、お客さん!彼女さんの分は!?」

男は振り返る事無く、全力で走って逃げた。

「いやぁ~困ったなぁ・・・お嬢さんもこんなの困るよねぇ?」

そう言いつつ顔を上げた後部座席には、誰も載っていなかったそうだ。
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