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ヘタレ、出会いと身バレ
ヘタレ、盗賊バレする。
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町から歩いて数時間。
日が西に傾き始めた折
近場にあった、小さな水車小屋の傍で少し早い夕食を摂った。
完全に日が暮れる前に
この水車小屋で寝泊まりする為の準備をしたい。
地べたに座り、広げた風呂敷には町を出る際に盗ってきた食糧がたっぷりとある。
「さてさて・・・何にするかな。」
豊富な食材を眼前に、調理法を考えつつ火起こしを始める。
十数分後。
小さな焚き火で焼いたベーコンを小さなコッペパンに挟み、ソレを食べる。
・・・相変わらず、味がしない。
味覚がおかしい訳じゃない。
ちゃんと味は分かる。
ただ、盗みを働くようになってから段々と
食事が美味しいと思わなくなっただけだ。
盗賊業には最後まで抵抗があった。
それ故、金品目的の盗みはこれまでだって一度もした事は無い。
だが、訪れた土地で得体の知れない余所者が仕事にあり付ける程
この世界は潤っちゃいない。
生きる為に、必死だった。
気付いたら、食料は盗る事が当たり前になっていた。
なに、今となってはそこら辺の樹から木の実を採るのと同じ感覚だ。
生きる為に、大事な何かを落としてきたんだ・・・。
そんな事を考えながら、ぼんやりと焚き火を見つめていた。
「やっぱり、貴方・・・盗人だったのね。」
不意に後ろから飛ぶ声。
振り返った先にはセンティアが居る。
「え?」
「何を呆けているの?私が此処に居るのがそんなに不思議?」
「な・・・なんで。」
「当然よ。今朝・・・貴方の部屋に行った時、荷物が片付いていたんだもの。
何処かへ行く気なんだって直ぐに分かったわよ。」
「・・・。」
「バレないとでも思った?あとは折を見て馬車で追って来れば簡単な事よ。」
「どうして、俺が盗みを・・・。」
その先の言葉に詰まった。
なんで分かったのか・・・。それを聞いてしまえば自白したも同然だ。
相手は貴族だ。
そんな事をすれば、然るべき場所に連行されかねない。
「それも簡単な事よ。
貴方が見えなくなってから、町の出店がやたら騒いでいたもの。
長丁場を覚悟して多く盗って行ったのがマズかったわね。
お陰で直ぐ、盗みがあったって分かったわよ。」
そこまで聞いて、俺は絶望した。
あぁ、俺もとうとう捕まるのか。と・・・。
「見逃して欲しい?」
「は?」
「見逃して欲しいなら、一つ条件があるわ。」
「何言ってるんだ・・・。」
「貴方・・・あの町を脅かしてる山賊を討伐なさい。それが条件よ。」
「ふざけるなよ。お、俺はもうあの町とは関係・・・」
「なら!・・・仕方ないわね。」
女が軽く手を叩くと、後ろの馬車から町の衛兵3名が降りて来た。
「な・・・に!」
「選びなさい?あの町で、盗人として絞首台に上がるか、山賊を追い払うか。」
「そんなの!き、脅迫じゃないか!!
それに、あの町にはもうすぐ『ストレンジア・ゴースト』が来る!
近場の町からそれらしい男が向かってるって!
皆、そいつに討伐を任せるんだって躍起になってたじゃないか!」
「その男が本当に!・・・何とかっていう男なら・・・ね。」
「な・・・。」
女の眼差しは怪しく光っている。
この女は何かを知っている。
恐らく、今あの村に向かっているという男が
少なくとも『ストレンジア・ゴースト』ではない。
という絶対的な自信を持っている。
今朝とは違う、刺すような圧。
・・・これだから貴族は嫌なんだ。
平民をゴミでも見る様な目線で見下す様な・・・。
サーカス団に居た頃からそうだ。
俺達が必死に覚えた芸も、町民や村民は心から喜んで笑顔を向ける。
だが、貴族だけが違う。
何処か冷めた視線で、まるで珍しい動物でも見に来たかのように。
細く、冷ややかに嘲笑う。
俺は貴族が嫌いだ。
子供の頃からそうだ。
貴族なんてクソ食らえだ。
・・・俺は・・・貴族が嫌いだ。
日が西に傾き始めた折
近場にあった、小さな水車小屋の傍で少し早い夕食を摂った。
完全に日が暮れる前に
この水車小屋で寝泊まりする為の準備をしたい。
地べたに座り、広げた風呂敷には町を出る際に盗ってきた食糧がたっぷりとある。
「さてさて・・・何にするかな。」
豊富な食材を眼前に、調理法を考えつつ火起こしを始める。
十数分後。
小さな焚き火で焼いたベーコンを小さなコッペパンに挟み、ソレを食べる。
・・・相変わらず、味がしない。
味覚がおかしい訳じゃない。
ちゃんと味は分かる。
ただ、盗みを働くようになってから段々と
食事が美味しいと思わなくなっただけだ。
盗賊業には最後まで抵抗があった。
それ故、金品目的の盗みはこれまでだって一度もした事は無い。
だが、訪れた土地で得体の知れない余所者が仕事にあり付ける程
この世界は潤っちゃいない。
生きる為に、必死だった。
気付いたら、食料は盗る事が当たり前になっていた。
なに、今となってはそこら辺の樹から木の実を採るのと同じ感覚だ。
生きる為に、大事な何かを落としてきたんだ・・・。
そんな事を考えながら、ぼんやりと焚き火を見つめていた。
「やっぱり、貴方・・・盗人だったのね。」
不意に後ろから飛ぶ声。
振り返った先にはセンティアが居る。
「え?」
「何を呆けているの?私が此処に居るのがそんなに不思議?」
「な・・・なんで。」
「当然よ。今朝・・・貴方の部屋に行った時、荷物が片付いていたんだもの。
何処かへ行く気なんだって直ぐに分かったわよ。」
「・・・。」
「バレないとでも思った?あとは折を見て馬車で追って来れば簡単な事よ。」
「どうして、俺が盗みを・・・。」
その先の言葉に詰まった。
なんで分かったのか・・・。それを聞いてしまえば自白したも同然だ。
相手は貴族だ。
そんな事をすれば、然るべき場所に連行されかねない。
「それも簡単な事よ。
貴方が見えなくなってから、町の出店がやたら騒いでいたもの。
長丁場を覚悟して多く盗って行ったのがマズかったわね。
お陰で直ぐ、盗みがあったって分かったわよ。」
そこまで聞いて、俺は絶望した。
あぁ、俺もとうとう捕まるのか。と・・・。
「見逃して欲しい?」
「は?」
「見逃して欲しいなら、一つ条件があるわ。」
「何言ってるんだ・・・。」
「貴方・・・あの町を脅かしてる山賊を討伐なさい。それが条件よ。」
「ふざけるなよ。お、俺はもうあの町とは関係・・・」
「なら!・・・仕方ないわね。」
女が軽く手を叩くと、後ろの馬車から町の衛兵3名が降りて来た。
「な・・・に!」
「選びなさい?あの町で、盗人として絞首台に上がるか、山賊を追い払うか。」
「そんなの!き、脅迫じゃないか!!
それに、あの町にはもうすぐ『ストレンジア・ゴースト』が来る!
近場の町からそれらしい男が向かってるって!
皆、そいつに討伐を任せるんだって躍起になってたじゃないか!」
「その男が本当に!・・・何とかっていう男なら・・・ね。」
「な・・・。」
女の眼差しは怪しく光っている。
この女は何かを知っている。
恐らく、今あの村に向かっているという男が
少なくとも『ストレンジア・ゴースト』ではない。
という絶対的な自信を持っている。
今朝とは違う、刺すような圧。
・・・これだから貴族は嫌なんだ。
平民をゴミでも見る様な目線で見下す様な・・・。
サーカス団に居た頃からそうだ。
俺達が必死に覚えた芸も、町民や村民は心から喜んで笑顔を向ける。
だが、貴族だけが違う。
何処か冷めた視線で、まるで珍しい動物でも見に来たかのように。
細く、冷ややかに嘲笑う。
俺は貴族が嫌いだ。
子供の頃からそうだ。
貴族なんてクソ食らえだ。
・・・俺は・・・貴族が嫌いだ。
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