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「強弱」
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あの日以降、女子陸上部は混迷を極めた。
部内の精神的支柱とも言える「部長」が、盲腸で入院した。
それと時を同じくして2年の生徒が怪我を負い、学校を休んでいる。
大会に向けたメンバー調整にも時間がかかり、ギリギリまで
人員の選択を、顧問代理の体育教師が行うしかなかった。
皆が一様に暗い顔を見せる中、一人
足取りの軽い者がいる。
そいつは、晴れて大会のレギュラー入りを果たし
待ちきれないとばかりに、ハツラツと練習に励む生徒。
俺の中の疑惑は、これで確定的になった。
「一連の問題は、小暮が起こした呪いのせいだろ。」
「でもどうやって、そんなものを成功させたの?瀬野さんだっけ?
あの人も呪いが成功するなんて眉唾だって・・・。」
「そもそも、呪いだというから難しくなるんだよ。
小暮がやってるのは、単に『生霊を飛ばしているだけ』で『呪い』なんていう
質面倒な儀式でも何でもない。」
事実、生霊を飛ばすだけならば誰にだってできる。
ただ一つだけ分からないのは「念符」という呪術的な儀式を
彼女がどうやって知り得たのか・・・。これだけが分からずに居た。
確かに、このネット社会
それらしい知識は腐るほど出回っている。
そこから都合のいいネタを引っ張ってくる事など、造作もないだろう。
大事なのは
「念符」による「呪いの効果」で「生徒たちに被害が出た」訳ではなく
「小暮」の持つ「嫉妬や怨み」で「生徒たちに生霊が飛んだ」とする方が自然である。
生霊を飛ばすだけであれば、特別な道具など必要ないのだから・・・。
ならば、なぜ「念符」などというものが必要だったのか・・・。
小暮の中には、明確な「悪意」があったに違いない。
「誰か」に対する明確な「悪意」が・・・。
「念符」はそれを「狙い撃ち」するための道具に過ぎない。
だが、何時しかその「悪意」は
目の前に迫る「大会」を機に「誰でもいい」となったに違いない。
そう、レギュラーメンバーにさえ入れれば・・・。
「誰か」を狙ったその怨みは
より「広範囲を視野に入れた」事で「呪具」を媒介する必要がなくなった。
数日間、女子陸上部を観察して分かったのは
「山代」という「絶対的エース」の存在と
その「次点」を常に準る「小暮」という存在だった。
彼女にとっては面白く無かった事だろう。
どれだけ負い迫っても、追い越すことのできない「相手」も。
明らかに贔屓目でエースへ肩入れする「顧問」の存在も。
彼女さえいなければ、持て囃されていたのは自分だ。
その怨みの解消に「念符」などという手法を使った結果
彼女たちは凄惨な目にあった。
だが、小暮の目論見は大きく外れ、代理顧問による「成績順」のメンバー選考などという
不条理が襲ってきた。
純粋な「陸上競技」だけであれば
もはや自分が一番上位に君臨するはずなのに・・・。
怨み方の差はあれど・・・
自身より実力の伴わないメンバーが選ばれていた事は許せなかったに違いない。
だが・・・且つてのライバルほど怨みが深かったわけでもない。
その差が・・・被害者の命運を分けてしまった・・・。
命すら落としたライバルと顧問
命に別条のなかった先輩・同期
あとは・・・「念符」などという知識をどこで手に入れたのか・・・。
それを本人に問い詰めるのみだ。
部内の精神的支柱とも言える「部長」が、盲腸で入院した。
それと時を同じくして2年の生徒が怪我を負い、学校を休んでいる。
大会に向けたメンバー調整にも時間がかかり、ギリギリまで
人員の選択を、顧問代理の体育教師が行うしかなかった。
皆が一様に暗い顔を見せる中、一人
足取りの軽い者がいる。
そいつは、晴れて大会のレギュラー入りを果たし
待ちきれないとばかりに、ハツラツと練習に励む生徒。
俺の中の疑惑は、これで確定的になった。
「一連の問題は、小暮が起こした呪いのせいだろ。」
「でもどうやって、そんなものを成功させたの?瀬野さんだっけ?
あの人も呪いが成功するなんて眉唾だって・・・。」
「そもそも、呪いだというから難しくなるんだよ。
小暮がやってるのは、単に『生霊を飛ばしているだけ』で『呪い』なんていう
質面倒な儀式でも何でもない。」
事実、生霊を飛ばすだけならば誰にだってできる。
ただ一つだけ分からないのは「念符」という呪術的な儀式を
彼女がどうやって知り得たのか・・・。これだけが分からずに居た。
確かに、このネット社会
それらしい知識は腐るほど出回っている。
そこから都合のいいネタを引っ張ってくる事など、造作もないだろう。
大事なのは
「念符」による「呪いの効果」で「生徒たちに被害が出た」訳ではなく
「小暮」の持つ「嫉妬や怨み」で「生徒たちに生霊が飛んだ」とする方が自然である。
生霊を飛ばすだけであれば、特別な道具など必要ないのだから・・・。
ならば、なぜ「念符」などというものが必要だったのか・・・。
小暮の中には、明確な「悪意」があったに違いない。
「誰か」に対する明確な「悪意」が・・・。
「念符」はそれを「狙い撃ち」するための道具に過ぎない。
だが、何時しかその「悪意」は
目の前に迫る「大会」を機に「誰でもいい」となったに違いない。
そう、レギュラーメンバーにさえ入れれば・・・。
「誰か」を狙ったその怨みは
より「広範囲を視野に入れた」事で「呪具」を媒介する必要がなくなった。
数日間、女子陸上部を観察して分かったのは
「山代」という「絶対的エース」の存在と
その「次点」を常に準る「小暮」という存在だった。
彼女にとっては面白く無かった事だろう。
どれだけ負い迫っても、追い越すことのできない「相手」も。
明らかに贔屓目でエースへ肩入れする「顧問」の存在も。
彼女さえいなければ、持て囃されていたのは自分だ。
その怨みの解消に「念符」などという手法を使った結果
彼女たちは凄惨な目にあった。
だが、小暮の目論見は大きく外れ、代理顧問による「成績順」のメンバー選考などという
不条理が襲ってきた。
純粋な「陸上競技」だけであれば
もはや自分が一番上位に君臨するはずなのに・・・。
怨み方の差はあれど・・・
自身より実力の伴わないメンバーが選ばれていた事は許せなかったに違いない。
だが・・・且つてのライバルほど怨みが深かったわけでもない。
その差が・・・被害者の命運を分けてしまった・・・。
命すら落としたライバルと顧問
命に別条のなかった先輩・同期
あとは・・・「念符」などという知識をどこで手に入れたのか・・・。
それを本人に問い詰めるのみだ。
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