【完結】婚約者が竜騎士候補に混ざってる

五色ひわ

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番外編Ⅱ:婚約者が青龍であることを隠してる

24.竜人の考え

 クリスティーナが身体を離すと、ブルクハルトは青龍の姿のままゴロンと芝生に寝転ぶ。クリスティーナは青龍のもふもふしたお腹に寄りかかるように座った。

【そういえば、治癒魔法教室は上手くいったのか? エッカルトがかなり気にしてたぞ】

「どうかしら? お茶会をしてる時間のほうが長かったのよね」

 アデリーナとの約束も昨日やっと実現した。クリスティーナが辺境伯領にいるのも、実はそのためだ。アデリーナが紹介してくれた竜人のつがいの女性も合わせて五人に治癒魔法を教えたのだが……

「魔法契約は問題なく終わったわ。ただ、治癒魔法を習う条件が厳しすぎて練習ができないのよ」

 治癒魔法の鍛錬は傷を治して経験を積むしかない。一般的には冒険者紹介所で本職が治療しないような軽い怪我を無料で治療するところから始める。

【エッカルトは、他の男に触れさせないなら大丈夫だって言ってたぞ】

「女性の冒険者なんて、ほとんどいないわよ」

【まぁな】

 そもそも魔力の量が多くなかったので、経験を積んでも治癒魔法師と呼べるまでにはなれない。それでも、番の女性たちは夫のために、少しでも治癒魔法が使えるようになりたいと言ったので教えることにしたのだ。

 治療は難しくても、痛みを和らげるくらいの治癒魔法は使えるようになる。クリスティーナもブルクハルトに使ったが、眠れるだけで回復は違ってくるだろう。

 しかし、健気な妻を前に、竜人たちは他の男に触れるくらいなら、怪我で苦しむ方がマシだと口を揃えて言ったのだ。

「竜人さんが大きな怪我をすることも少ないし、ゆっくり覚えていけば良いのかも」

【そうだな。俺は出会う前だったから耐えられたけど、気持ちは分かる】

 治癒魔法は経験を積めば、傷口に手をかざすだけで治療が可能だ。触れるのは最初の頃だけで、それも直接ではなく衛生面に考慮して専用の手袋を使う。その説明もしたが、反応は変わらなかった。

「竜人さんの番への態度って特殊よね。ハルトで知っているつもりになっていたけど、数倍は過保護だったわ」

【俺だって負けてないぞ。ティーナが嫌がるから我慢しているだけだ】

「そんなことで張り合わなくても良いわよ」

【俺がどれだけティーナを大切に想っているか覚えとけってことだ】

 ブルクハルトは言いながら起き上がる。クリスティーナは急に背中の支えがなくなってよろめいた。後ろに転がる前に大きな手に引き寄せられて、脚の上に座らされる。

 クリスティーナが見上げると、ブルクハルトは何故か満足そうな顔をした。クリスティーナが嫌がらずに鱗に覆われた脚の上に座っているからだろうか。青龍の脚はひんやりとしていて心地よい。

「私の我がままを通しちゃったけど、もしかして、今でも私が竜騎士団にいるのは嫌なの?」

 クリスティーナだって、ブルクハルトの意向は聞き入れたい。『できるだけ』というのが申し訳ないが譲れないこともある。

【そうでもないよ。今の状況が俺たちには良いのかもな。竜騎士団に入っていれば周りの奴らが気にかけてくれるし、ティーナが目を離した隙に何かやらかしていないか心配しなくて済む】

「私がいつも突拍子もない事をしてるみたいに言わないでよ」

【自覚ないのかよ】

 クリスティーナは怒りつつも、頬が緩むのを抑えられなかった。ブルクハルトも現在の状況に不満がないと分かって嬉しい。クリスティーナがそんなことを考えいると、ブルクハルトが人間の姿に戻ってしまった。

「何で戻ったの? 今日は約束を忘れてたお詫びも兼ねているのよ。青龍のままでいてよ」

「久しぶりに時間が取れたのに、ティーナの希望だけが通るなんてずるいだろう? 俺だって約束を忘れるくらい忙しく働いてたんだぞ」

「忘れてたのに威張らないでよ。ちょっと、えっ!?」

 グラリと揺れたと思ったら、クリスティーナはいつの間にかブルクハルトの右腕の上に座っていた。安定しない状態に、クリスティーナは慌ててブルクハルトの首につかまる。

 クリスティーナは、ブルクハルトが立ち上がったのも、抱き上げられたのにも、まったく気づかなかった。ブルクハルトは身体強化魔法を使って移動したのだろう。

「ちょっと、こんなことで本気出さないでよ。動きが読めなくてびっくりしたでしょ」

「気づかれて反撃されたら危ないからな」
 
「だからって……」

 クリスティーナは気づいたら抵抗しただろうか。文句を言いながらも拒否できなかったように思うが、言わないでおく。

 ブルクハルトは、静かになったクリスティーナを不思議そうに見ていたが、すぐに空いている左手にバスケットを持って歩き出す。

「前に言ってたじゃないか。こんなふうに、抱き上げて欲しかったんだろう?」

「お姫様抱っこの話なら、全然違うからね」

「そうか? 同じようなものだろう」

 自信満々に言われてクリスティーナは納得しかけるが、思い直して首を振る。今の状況は、恋人同士というより子供の頃の伯爵との思い出に近い。ブルクハルトに言ったら否定せずに笑われた。やはり、クリスティーナの感覚は間違っていないようだ。

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