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四章 平和を願って【ミシュリーヌ】
第17話 公爵子息【オーギュスト】
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オーギュストが転移した先では、話題の公爵子息が伸びていた。オーギュストの使役獣が得意気に公爵子息の上に立っている。
「何があったんだ?」
オーギュストが呆気に取られていると、背中にドンッと誰かがぶつかってきた。正確には、直前にその者の魔力を感じ取ってぶつかるように抱きつかれることを許したというべきだろうか。ミシュリーヌがオーギュストに抱きついたまま、ゆっくりと顔を出して公爵子息の様子を伺っている。
「ミシュリーヌ、怪我はないか?」
「わたくしは大丈夫です。死んだりしていないですよね」
オーギュストも確認したが、残念ながら息はしている。ミシュリーヌもすぐに分かったようで、緊張を解くように息を吐いた。
「回復してやる必要はないよ。それで、何があったんだ?」
「すみません。僕が絡まれまして……」
ガタガタと震えながら頭を下げたのは、クリストフの護衛だ。クリストフは平然とケーキを食べているので、護衛に非はないのだろう。
「マリエル、説明してくれ」
「申し訳ありません。本人が対応すると思い静観してしまいました」
マリエルの説明によると、四人で談笑しているところに公爵子息がやってきてクリストフに絡んだらしい。『一緒にいる女を紹介しろ』とか『女とチャラチャラするな』とか言いがかりをつけてきたようだ。マリエルには悪いが、ミシュリーヌの姿を消しておいて正解だった。
クリストフにとっては最近の日常のようで無視していたが、庇うために前に出た護衛が腕を掴まれそうになったらしい。
「彼より団長の使役獣のほうが反応が早かったため、このようなことになりました」
「公爵子息が相手では出遅れても仕方ないな」
背中に抱きつくミシュリーヌも力強く頷いている。クリストフの護衛がホッとしたように、もう一度頭を下げた。
「いって~」
声の方に視線を向けると、公爵子息が目を覚ましていた。オーギュストが促すと、ミシュリーヌがサッと背中に隠れる。ミシュリーヌの姿は魔法で隠したままなので公爵子息からは見えていないが念の為だ。
護衛の二人が戦闘態勢に入っているが、後ろに下がるように指示をする。使役獣は公爵子息から離れて、ミシュリーヌのそばにピッタリと寄り添うように並んだ。公爵子息をミシュリーヌの敵と判断しているはずなので護衛のためだろう。うまく作動しているようで安心する。
「こんなことをして、ただで済むと思うなよ! 俺を誰だと思っている!」
「誰だ? 覚えていないな。私の妻の休息を邪魔した者の名を教えてくれ」
「オ、オ、オ……」
公爵子息は座り込んだまま、器用に後退った。オーギュストは先程まで彼がいた場所を炎で燃やす。公爵子息が震え上がったが、使役獣の放った魔法の痕跡を消しただけだ。
「大丈夫か?」
オーギュストがどうしようかと迷っていると、ローランが部下を連れて駆けつけた。
「すまない。威力が弱すぎたみたいだ」
「骨は無事だが、きちんと折れているみたいだぞ」
「聖女暴行未遂の現行犯ですよ。どうします?」
クリストフがのんびりとした口調でローランに尋ねる。罪が重くなっている気がするが、オーギュストは黙っていた。クリストフは最初からこれを狙ってケーキを食べたいなどと言い出したに違いない。
オーギュストは、背中のミシュリーヌをローランから見えにくい位置に移動させてから隠蔽魔法を解く。『聖女』がこの場にいなければ、クリストフの主張が通らない。ローランの立場を考えれば、ミシュリーヌが隠蔽魔法で見えていなかったことは知らない方が良い。
「ミシュリーヌ妃に危害を加えようとしたのか!?」
「ミシュリーヌ妃と一緒にお茶を飲んでいた『友人』が被害者です」
「友人……」
クリストフの言葉に護衛が驚いたように呟く。ローランはそれを見て、ホッと息を吐き出した。何となく状況が詠めたのだろう。
「オーギュスト、うちの者が迷惑をかけた。騎士団で引き取っても構わないか?」
「ああ。二度とミシュリーヌと魔導師団に絡まないと約束するならな」
オーギュストが睨みつけると、公爵子息がコクンコクンと二度頷く。
「『神官』も追加でお願いします」
クリストフが追加した要望にも素直に頷いた。公爵子息の取り巻きも近くにいるが、青い顔で固まっている。この様子なら、彼らは捕まえなくても問題を起こすことはないだろう。
「謹慎処分が妥当だな。オーギュスト、一般用の護送車を一つ貸してくれ」
「ああ」
貴賓用の護送車もあるが、要望通りに一般用の馬車を取り出す。公爵子息は腰が抜けてしまっているようで、騎士団員に抱えられるようにして護送車に入っていった。
夕食後、騎士団から軽食とお酒が配られる。ローランが気を使ったのか、『オーギュストとローランからの差し入れ』と説明がされていた。公爵子息の拘束が伝わっているのか、到着した時より隊の空気が軽い。この様子ならローランの目の下のクマもそのうち消えることだろう。
「何があったんだ?」
オーギュストが呆気に取られていると、背中にドンッと誰かがぶつかってきた。正確には、直前にその者の魔力を感じ取ってぶつかるように抱きつかれることを許したというべきだろうか。ミシュリーヌがオーギュストに抱きついたまま、ゆっくりと顔を出して公爵子息の様子を伺っている。
「ミシュリーヌ、怪我はないか?」
「わたくしは大丈夫です。死んだりしていないですよね」
オーギュストも確認したが、残念ながら息はしている。ミシュリーヌもすぐに分かったようで、緊張を解くように息を吐いた。
「回復してやる必要はないよ。それで、何があったんだ?」
「すみません。僕が絡まれまして……」
ガタガタと震えながら頭を下げたのは、クリストフの護衛だ。クリストフは平然とケーキを食べているので、護衛に非はないのだろう。
「マリエル、説明してくれ」
「申し訳ありません。本人が対応すると思い静観してしまいました」
マリエルの説明によると、四人で談笑しているところに公爵子息がやってきてクリストフに絡んだらしい。『一緒にいる女を紹介しろ』とか『女とチャラチャラするな』とか言いがかりをつけてきたようだ。マリエルには悪いが、ミシュリーヌの姿を消しておいて正解だった。
クリストフにとっては最近の日常のようで無視していたが、庇うために前に出た護衛が腕を掴まれそうになったらしい。
「彼より団長の使役獣のほうが反応が早かったため、このようなことになりました」
「公爵子息が相手では出遅れても仕方ないな」
背中に抱きつくミシュリーヌも力強く頷いている。クリストフの護衛がホッとしたように、もう一度頭を下げた。
「いって~」
声の方に視線を向けると、公爵子息が目を覚ましていた。オーギュストが促すと、ミシュリーヌがサッと背中に隠れる。ミシュリーヌの姿は魔法で隠したままなので公爵子息からは見えていないが念の為だ。
護衛の二人が戦闘態勢に入っているが、後ろに下がるように指示をする。使役獣は公爵子息から離れて、ミシュリーヌのそばにピッタリと寄り添うように並んだ。公爵子息をミシュリーヌの敵と判断しているはずなので護衛のためだろう。うまく作動しているようで安心する。
「こんなことをして、ただで済むと思うなよ! 俺を誰だと思っている!」
「誰だ? 覚えていないな。私の妻の休息を邪魔した者の名を教えてくれ」
「オ、オ、オ……」
公爵子息は座り込んだまま、器用に後退った。オーギュストは先程まで彼がいた場所を炎で燃やす。公爵子息が震え上がったが、使役獣の放った魔法の痕跡を消しただけだ。
「大丈夫か?」
オーギュストがどうしようかと迷っていると、ローランが部下を連れて駆けつけた。
「すまない。威力が弱すぎたみたいだ」
「骨は無事だが、きちんと折れているみたいだぞ」
「聖女暴行未遂の現行犯ですよ。どうします?」
クリストフがのんびりとした口調でローランに尋ねる。罪が重くなっている気がするが、オーギュストは黙っていた。クリストフは最初からこれを狙ってケーキを食べたいなどと言い出したに違いない。
オーギュストは、背中のミシュリーヌをローランから見えにくい位置に移動させてから隠蔽魔法を解く。『聖女』がこの場にいなければ、クリストフの主張が通らない。ローランの立場を考えれば、ミシュリーヌが隠蔽魔法で見えていなかったことは知らない方が良い。
「ミシュリーヌ妃に危害を加えようとしたのか!?」
「ミシュリーヌ妃と一緒にお茶を飲んでいた『友人』が被害者です」
「友人……」
クリストフの言葉に護衛が驚いたように呟く。ローランはそれを見て、ホッと息を吐き出した。何となく状況が詠めたのだろう。
「オーギュスト、うちの者が迷惑をかけた。騎士団で引き取っても構わないか?」
「ああ。二度とミシュリーヌと魔導師団に絡まないと約束するならな」
オーギュストが睨みつけると、公爵子息がコクンコクンと二度頷く。
「『神官』も追加でお願いします」
クリストフが追加した要望にも素直に頷いた。公爵子息の取り巻きも近くにいるが、青い顔で固まっている。この様子なら、彼らは捕まえなくても問題を起こすことはないだろう。
「謹慎処分が妥当だな。オーギュスト、一般用の護送車を一つ貸してくれ」
「ああ」
貴賓用の護送車もあるが、要望通りに一般用の馬車を取り出す。公爵子息は腰が抜けてしまっているようで、騎士団員に抱えられるようにして護送車に入っていった。
夕食後、騎士団から軽食とお酒が配られる。ローランが気を使ったのか、『オーギュストとローランからの差し入れ』と説明がされていた。公爵子息の拘束が伝わっているのか、到着した時より隊の空気が軽い。この様子ならローランの目の下のクマもそのうち消えることだろう。
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