【完結】異世界から来た聖女ではありません!

五色ひわ

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終章 未来に向かって【ミシュリーヌ】

第10話 ある村人の話(後)【オーギュスト】

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 再建が進まず困った男たちは、他の領地で聞いた話を思い出したようだ。

『村の再建には、領主からの支援金が出る』

 それが他の領地の常識だったらしい。

「領主の屋敷に行ってみたが、門前払いだったよ。それでも、諦めきれなくて通っていたら、声をかけられたんだ」

 その人物は公爵領内の別の村の出身者だった。男と同じような状況に陥っており、似たような境遇の者たちをまとめていたようだ。男もその人物が作っていたグループに入り、はじめは一緒に領主を説得したり、再建について話し合ったりしていたようだ。他の村の者もさらに加わり、人数はどんどん増えていった。

「でも、上手くいかなかったんだ」

 まずは資金のある者の村からみんなで協力して作り直そうとした。しかし、復興に必要な資材はどこも不足している。ここでも、大きな街が優先されていた。

 オーギュストには耳の痛い話でもある。国の政策をみても王都の復興が優先されて行われているのは事実だ。地方の領主の方針に文句は言えない。

 問題があるとすれば、それまでの間、街に住まわせるという選択をしなかった点だろうか。亡くなったフリルネロ公爵は切れ者だと聞いていたが、非情な一面もあったようだ。 

「そんな状況が続いたから、街の人間に復讐しようなんて言い出す者も増えてきた」

 リーダー格の者たちで必死に止めていたようだ。しかし、それも徐々に限界に近づいていく。そんな緊迫した雰囲気にとどめを刺したのは、お忍びで街に出ていたエレオノーレだったようだ。

「俺は直接会っていないから分からない。でも、村人を街に住まわせないのは当然で、お金や物を強請るのは卑しいと言っていたらしい。後は口にするのも悔しいが、村人を見るのは初めてだったようで……」

「申し訳ない」

 オーギュストはその先を言わせたくなくてエレオノーレの代わりに謝った。この部屋に入ってきたときにソファーに座るのを躊躇っていた姿を思い出したのだ。

『俺なんかが上等なソファーに座って良いのか? 穢れるんだろう?』

 エレオノーレは箱入り娘だったと聞いている。魔獣と戦うような暮らしを言葉でしか知らないのだろう。


 そんなきっかけで、彼らの復興への熱は、公爵領への恨みに変わっていった。しかし、本来ならそれだけで終わっていただろう。彼らが不幸だったのは、ヘクターがその時期に神殿の件で公爵領を訪れていた事だ。

「俺達にも味方になってくれる人がいるって、会った奴らは興奮していたよ」

 男たちはヘクターの助言を受けて、魔獣草による魔獣反乱の計画を立てた。聖女の旅をなぞるというのも、ヘクターからの提案だったらしい。ただ、ヘクターらしき人物に会ったのは数名で、男はその者から話を聞いただけで姿を見たことはなかったようだ。最初の接触以外は手紙でのやり取りをしていたらしい。他の件と同様に、手紙はヘクターの指示で毎回燃やしていたようだ。

「悪いのは公爵家の人間や街をまとめる上の奴らだ。魔獣反乱を起こせば罪のない人々が巻き込まれる。それは分かっていた。反対して抜ける奴らもいた。でも、俺は……後戻りすることが出来なかったんだ」

 後から他の者の話を聞くと、リーダー格の男は復讐なんてやめるべきだと最後まで説得していたらしい。復讐を嫌がった者にはお金を渡して、他領に逃がしていたようだ。復讐を望む仲間を見捨てられなかったというのが本音だろう。

 オーギュストはやるせない気持ちになったが、被害を思い出すと減刑を提案することはできない。


 魔獣草による魔獣の反乱は、命と引き換えに行われてきたようだ。二、三人が一組となり自分の村に近い街を担当してきた。男がオーギュストに話すきっかけになった人物も、すでに魔獣反乱を起こして亡くなっている。

「俺たちは二つの街を担当するはずだった。でも、魔獣草が徐々に入らなくなって、計画を変更せざるおえなかったんだ」

 次に襲われると予想されていた街と、オーギュストたちが滞在するこの街の二か所を担当していたらしい。魔獣草は一回分しかない。そう考えたとき、男たちは迷わず村から一番近いこの街を選んだ。

「あの日は村の連中の命日だったんだ」

 どこか淡々と行われているように見えていた魔獣反乱の中で、今回だけ場所も日付も乱れていたのは、そんな理由があったらしい。

 公爵領からの訴えを魔導師団できちんと把握できていたら……近くに潜伏していた彼らを見つけられていたら……。オーギュストが自分を責めても、いまさら彼らに出来ることは何もない。

「何か望みはあるか?」

 それでも、オーギュストは聞かずにはいられなかった。

「他の奴の話も聞いてやってくれ。俺たちは話しすら、まともに聞いてもらえなかったんだ。それと、俺たちと同じ思いをする者を二度と出さないと約束してほしい」

「話は聞くが……後半の要求は難しいな」

「団長!?」

 後ろで聴取を書き取っていた団員が叫ぶ。それでも、オーギュストは訂正しなかった。

 残念ながら支援にも優先順位がある。村人の支援も行う必要があるが、そうなった場合でも街に引き入れて村人を守った領地が優先される。善良な領主ほど復興に使う資金が不足している。人はいるので、きっかけさえあれば、復興も早い。

「今のこの国には全ての人を救い上げる力はない。それでも、私はできる限りの努力をすると約束しよう」

 オーギュストは詳細を省いて、それだけ伝えた。綺麗事を言わなかったのは、オーギュストなりの誠意だ。

「正直な奴だな」 

 男はそんなふうに言って笑っていた。
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